普通に着ないギャップに惚れる。 スタイリスト木村真紀による「ソロソロ、イイモノ。」Theme #5/初秋のブルーシャツ
似合うものは決まってきたし、あふれるほど欲しいわけじゃない。心地がいい、具合がいい、気分がいい、品がいい。いろんな意味でバランスの「イイモノ」に、少しの特別を添えて。
久しぶりに会った学生時代の同級生や休日に会った同僚にドキッとしたことはありませんか?あれ、〇〇くん、こんなに格好良かった?と。表現に年代を感じますが(笑)、それはいわゆるギャップ萌えというやつで、制服でしか記憶にない彼、スーツやオンの時の服装でしか記憶にない彼がユニフォーム的な服装から解き放たれ、普段の彼が垣間見えた瞬間。しかもその着こなしが素敵な場合は、ちょっとキュンとしちゃいますよね。
そんなギャップ萌え、実は普段から自分自身でも楽しめるんです。なんとなく着がちなベーシックアイテムの代表格であるシャツは、一枚で着たり、ジャケットに合わせてインで着るのが王道ですが、初秋のシーズンには羽織りとして大活躍してくれる優れもの。色は合わせやすく、着回しがきくブルー系がおすすめで、"羽織る"を優先したシャツって意外と持ってなかった、という人のワードローブにぜひプラスしてほしいのが、普通になりすぎない生地に風合いがある無地や、派手になりすぎないストライプ柄です。どちらもボタンを全部あけて羽織ると普通にまとまってしまいそうですが、ここはカメレオン級に変化してくれるシャツの腕の見せ所。中でも袖とボタンがポイントで、袖はボタンを留めたままアップしてインナーをのぞかせたり、袖のボタンをあけて抜け感を楽しんだり、ロールアップすればカジュアルにも着こなせます。ボタンは一番上だけを留めて襟を強調することでほどよいかっちり感を演出したり、3番目だけ留めて少し肩を抜いて着たり、下の2つだけを留めればカシュクールのようにも楽しめます。
気分や予定、インナーやボトムスに合わせてさまざまに広がる羽織りシャツの可能性。同じシーズンにヘビロテしてもよし、何年もかけて愛用してもよし。見落としていたシャツの羽織り的ポテンシャルに改めて惚れ直してみてください。
立体感と豊かな生地の表情を楽しむ無地ブルー。
上質さとクラシカルながらミニマルなシルエットに定評がある〈オーラリー〉。今季の注目はシルクのような光沢を持つフィンクスコットンで作ったシャンブレーシャツ。ヨコ糸にブルーを、タテ糸にホワイトの糸をそれぞれ使用することで、無地ながら奥行きのある綺麗な色味に。襟を立てたり、袖をアップしてしっかりとした生地の立体感を楽しんでほしい。
シャツメーカーの遊び心を満喫できるブルーストライプ。
1939年創業の〈バグッタ〉は長年ラグジュアリーブランドのシャツも手掛けてきたイタリア発老舗シャツメーカー。今季新しいデザインとしてラインナップした“アンドロメダ”という名のストライプシャツは、胸下に切り替えデザインを取り入れることでクラシックなイメージを刷新。ゆるめのシルエットながら端正な雰囲気なのはこだわりの質感ゆえ。