花井悠希の朝パン日誌 旅行気分が味わえる!〈VIRON 渋谷店〉のパリ風モーニング|花井悠希の朝パン日誌
「朝9時、渋谷集合!」そう聞くと、朝が苦手な私は前日の夜から少しの緊張感が漂うのですが、一つ単語がプラスされるだけで、気分は180度変わります。それは「朝9時に渋谷のVIRON集合」という合言葉。緊張はどこへやら。何を着て出かけようかなあ…旅に行く気分で前のめりのわくわくが始まります。
真っ赤な外観から旅は始まる
真っ赤な外観から階段をのぼり、フランスのエッセンスがあちこちに感じられる店内は、朝9時の渋谷着を乗り越えた、眠気をふっ飛ばす高揚感を与えてくれます。「ヴィロンの朝食」セットをオーダーし、あとは今か今かと“あの”儀式を待つといたしましょう。
来ました!〈VIRON〉の朝といったら、ジャムのオールスター感謝祭(←言ってみたかった)。食べ切れる量という概念より、こちらのわくわくを最高潮に盛り上げることに重きを置いてくれているであろう、瓶に入った色とりどりのジャムが何本もトレイに並ぶ様は圧巻。「お好きなだけどうぞ」という、何にも縛られず伸び伸びと己の欲を解放させられる気持ちよさよ。
そして、畳み掛けるようにやってきたのは、カゴいっぱいに入ったヴィエノワズリーたち。もうね、きらっきらです。マンガで描かれるようなキラキラした光がパンから放たれているような神々しさ。朝日をも味方につけています。その中から好きなものを選ぶと、テーブルの上のカゴに入れてくれます。お察しの通り、高揚のメモリはあっという間に測定不能なほど振り切りました(危険)。
近づくだけでとんでもなく香ばしい香り。それは一口頬張っても、噛み始めても、喉を滑り落ちるその瞬間までも絶えず放たれます。単調にならない、何種類かの穀物が入っているからこそ出来上がる複雑な香りは「香ばしい」の一言で片付けるにはもったいないほど。穀物一つ一つが様々な顔を出しながら作り上げて、しっかりした質感の生地に応えるかの如く噛み締めるほどに香りは加速していきます。音楽用語でいえば「クレッシェンド」。だんだん大きく、だんだん強く。
〈VIRON〉と言ったら外せないこちら。バッキバキです。一口食べただけでバッキバキにムッキムキに鍛えたマッチョさんが思い浮かぶのは私だけじゃないはず(どうかな)。でもこのバキバキ感こそ「レトロドール」の特徴かと。本場パリのバゲットはこんな感じなんだろうなって思わせてくれる小麦の豊かな味わいと、切れ味鋭いクラストのエッジはこの子の強烈なアンデンティティだと思います。日本の柔らかいパンに馴染みのあるうちの両親に買っていったら、言葉通り“歯が立たなかった”こともありましたね(みなさま気をつけて)。どんなものと合わせても負けないので、たくさんのジャムやプラリネ、はちみつを楽しむのに最高でした。
こちらはサックサクです。シャリシャリが際立った表面の砂糖がけや焼かれてパリパリになっているアーモンドがさらに生地のサクサクムードを高めます。内側に閉じ込められたラム酒の効いたアーモンドクリームのほくっとした口当たり、そこから柔らかにほどけていく口溶け。あれ?これはまさにガレット・デ・ロワでは!?