自分に優しく、人に優しく。 SDGsのニュールール「ゆっくり、自分をいたわる」

LEARN 2022.07.12

自分を大切に思えたとき、人は誰かに優しくできる。その循環が心地よい社会へとつながります。SDGsのニュールール、まずは“セルフケア”から始めましょう。人は自分を大切に思えたとき、はじめて誰かに優しくできる。その循環が、みんなが心地よい社会へのチェンジへとつながっていきます。

SELF CARE/ゆっくり、自分をいたわる。

毎日会社や家で、常に何かに追い立てられ、まともに呼吸をするのを忘れるほど疲弊している私たち。体が固まって感覚も鈍り、他人に優しくする精神的な余裕すら失われている。まずは心も体も緩めて感覚を呼び起こし、自分の主体性を取り戻すことで、この状況から抜け出したい。体へのユニークな視点から論考を深める二人の識者、18世紀医学史・文学研究者の小川公代さんと、インタビュアー、ライターの尹 雄大さんにセルフケアのヒントを伺いました。

1. 今こそ頭も体も緊張を解き『レイドバック(怠惰)』に寝転ぶ。

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私は以前から怠惰に憧れていて、オスカー・ワイルドの『嘘の衰退』など怠惰文学を流行らせようと、よくツイッターで紹介していました。私たちは、近代が煽ってきた、「勤勉であらねばならない」という観念に追い立てられ、怠惰を肯定的に捉える素地がありません。それは資本主義社会にとって都合がいいこと。でももうそんな社会に適さず、もっと怠惰になっていいのではないでしょうか。現在はまだ、交感神経(=闘争・やる気)が優位で働いている人間が評価されがちですが、これからは緩めて生きている人の価値も作っていかなければいけません。イギリスでは考えてばかりいる頭でっかちの人より、レイドバック(副交感神経=癒し)な人の方が評価が高いんです。私は自著で横臥者(おうがしゃ)と表現しましたが、全身を緩めて横になってこそ気づくことがあります。体の大切さもその一つ。ときに怠惰になって寝転んでみるのも大事。(小川さん)

2. 今、縛られている社会は限定的。まずは『自分が主体』であると知る。

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4年ほど前から一般の人を対象にインタビューセッションを行っています。そこで感じるのは、自分に対して「〜しなくてはいけない」という命令や警告、一方的な伝達の言葉しか持っていない人が多いこと。こうでなければと思っている時点で、できないと感覚や感情が訴えているのに、社会から逸脱してしまうからと自己否定する。これは自分に対するネグレクトです。そういう人は学校や職場や家庭という個人的な関係性の中で、相手の要求に適う自分に作り変える努力をしますが、その狭い社会での常識は別の場所であれば異なるもの。なぜこんなに駄目なのかと嘆きや怒りを溜め込む前に、相手に合わせすぎず、自分が主体であることを思い出す。まずやってみて相手の反応を見るとか、自分にとって快適なことを相手に示す。生きたいように生きてみる。それで問題があってもあまり気に病まない。私たちは社会のために生きているわけではないのだから。(尹さん)

3. 思いついたら『目を閉じて』、視覚以外の感覚を覚醒させる。

僕たちは文字情報や映像など、理解することのほとんどを肉眼で捉えて行っています。何か起こったときに求められるエビデンスも、ここに書いてあるからとか、映像で映っているからと、ビジュアル重視です。でも人間の理解の仕方は2種類あり、それは目で確認する方法とそうではない方法。目を閉じなければわからないこともたくさんあるはずです。つまり、何となくそう感じたからという目に見えない感覚や感情を疎かにしています。例えば暗闇に入ったときに人は手を前に伸ばして危険を察知しようとします。これは原始的な知性の働かせ方で、手が前足だった頃の名残でしょう。赤ん坊はやたらと物を触ろうとしますが、あれもたぶん触覚からの理解だと思われます。人の理解は体験して、感じて、何かを思って考える、という順序で進むはずなのですが、今はそれが逆転しています。だからときには目を閉じて、視覚以外の感覚を呼び起こしてみてほしい。(尹さん)

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