まだ見ぬパン屋さんへ。 次の話題はドーナツだ。中目黒〈I’m donut?〉&目黒〈bagel standard〉へ。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」を掲載。 人気に応えて増ページ、今回からパワーアップしたこの連載。リニューアル第一回は、話題店が相次ぎオープンしてますます注目のエリア「中目黒」。今年オープンの最新店舗を紹介!
“生”食感ドーナツ、中目黒に大行列出来!〈I'm donut?〉
昨年開店の〈アマムダコタン〉で表参道に大行列を出現させた平子良太シェフが、早くもオープンさせた1軒目はドーナツ店。
「おいしいドーナツができたんで店を出しました」
あまりにも新食感すぎて「僕ってドーナツなの?」ってドーナツが自問自答している...という愉快なストーリー。あの平子さんが仕掛けているだけに、どれだけ新食感? と期待値も高く、中目黒駅前に長蛇の列ができている。
平子さんが「生ドーナツ」と呼ぶ自信作、店名と同じ名をつけた「アイムドーナツ?」。歯切れはぱつーんと一気。千切れたが最後とろーんと正体不明となり、あっというまにクリームに化け、蒸発する。いうなれば固形と液体の中間物体、あるいは揚げクリーム。温度管理に細心の注意を払う。高加水の生地を高温の油で一気に揚げる。油っぽさがないのは、常温では固形のショートニングを揚げ油として使うから。パンの常識にとらわれないさまざまなアイデアの積み重ねが〝生〞食感を生みだしたのだ。
「ドーナツは普通のパンよりもっと むずかしいです」
開店後も試作を重ね、もっともっ とおいしくすることに余念がない。もちろん、クリームだけでなく、 レモンピールなどすべてを手作りするスタイルは、〈アマムダコタン〉 のみならず、最初の店〈パスタ食堂 ヒラコンシェ〉から一貫。料理を愛し、パンを愛し、インテリアや服を愛し、ときには店の壁も自分で塗る。 徹頭徹尾ものづくりを愛する姿勢は変わることがない。
〈I'm donut?〉(アイム ドーナツ)
「生ドーナツ」と呼ぶ、新食感が大人気。テイクアウトのみだが、隣の〈スターバックスコーヒー〉に持ち込み可能。全8種類。
■東京都目黒区上目黒1-22-10
■10:00〜20:00 不定休
NYで食べたあの味が。 心に残るベーグル〈bagel standard〉。
今年1月、山手通り沿いに移転。〝スタンダード〞なベーグルに行列が。ぐにーっと沈む。沈みきったところで、ほわっと裂け目が生まれ、ぱつんと心地よくちぎれる。弾力は十分。それでいて、歯切れよく、サンドにしても食べやすい食感こそ、NYのスタンダードだ。
国分誠司さんは3代目オーナー。先代の時代に同店で修業、製法を完全習得した。私が食べても、以前と変わらない。いや、さらにやさしめの食感になったように思える。国分さんは、ガーデンデザイナーとの二 足の草鞋(わらじ)を履く。昼は花を植え、夜はベーグルを作る。
「庭づくりをしているとお花の声が聞こえる気がするんです。たとえば、水をあげると、だんだん植物の声が聞こえてきます。植え替えると、樹木がよろこぶのがわかる。ベーグルも似ています」
発酵も、毎日酵母と対話するように、手間と時間をかける。仕事の合間、毎日食べるのに、それでも「おいしい」と思えるというのは〝スタンダード〞だからなのだろう。
「ユダヤの人が昔から食べてきた大切なもの。だから、ベーグルはベーグルじゃなきゃいけない。ずっと作りつづけたいと思います」
〈bagel standard〉(ベーグルスタンダード)
NYにあるような、普通のベーグルを再現。オーガニックなど材料にもこだわり。山手通りに面した窓口から販売。
■東京都目黒区目黒3-8-6
■03-5938-0764
■11:00〜17:00 月火休
Navigator…池田浩明(いけだ・ひろあき)
「パンラボ」を主宰しながら、ブレッドギークとして、日本全国のパン屋さんを巡り情報を発信する。いち早く国産小麦にも注目し、日本のパンの未来をみつめる。
■パンラボblog:panlabo.jugem.jp