花井悠希の朝パン日誌 新天地は絶好のパンチャンス!埼玉県吉川のテイクアウト専門店〈sakatuji〉
初めて訪れる街。そこには思いがけないパンチャンスが待っているかも?お目当てのパン屋さんを目的地にして出掛けるのと同じくらい好きなのが、仕事などで訪れることになったノーマークのエリアでパンを探すこと。未開拓の場所で一から手探り(という名のスマホ)で見つけていくのが楽しいのです。運よく地元の方からヒントをもらえたら、もう宝の山はすぐそこに。
最近、お決まりになりつつある「朝まで待てませんでした」シリーズ(勝手にシリーズ化)。帰ってすぐいただきました。
え、もちのもちやん(意味不明)。ベーグルと書いてあったので、もちっと食感が来ることは予想していましたが、それを上回るもちっとさが現れると人はあっさりと言葉を手放すのですね(言い逃れ)。どれほどのものかというと、グーっと歯が沈んでいく重さを感じるほどのもちっとさ。やはり擬音は避けられません。リベイクしてみると表面はカリッとパリッと蘇るので、内側のもちーっとさとのコントラストが鮮やかです。そこに想像していなかった事態が重なります。脂でダクダクなソーセージの襲来です。それをぎゅんぎゅんにベーグル生地が吸い上げるのだからさぁ大変(大喜び)!こちらのベーグルには、この少し後ろめたさを感じるくらい肉汁たっぷりのソーセージがぴったり。隠していた己の欲深さが掘り当てられたような気持ちです。
6段にギアを入れた自転車のペダルを漕ぐみたいにどっしりした重さを乗り越えた先にある、ポカリかと思うほどぐんぐんとカラダに染み渡るソーセージの旨み、脂身。恵みのシャワーだ(重症)。
明らかにこの子は情報過多(褒めてます)!ラムレーズンにキャラメルチョコという魅惑の小爆弾です。生地からはアールグレイの香りがむんむん。リベイクした表面はパリパリ。そこからグッと私をホールドし掴んでしまうもちーっとした生地の重み。ベーグルらしい重みでも息苦しくなるような密度の圧がないのが不思議です。重みはあるけど、組織一つ一つが柔らかさに包まれているからなのかも?
想像以上にレーズンがたわわでプチプチと弾けまくり、ラムの芳醇な香りを放出させまくり!キャラメル味のホワイトチョコレートクリームもラムに染まっています。ゆっくりともったいぶって手招きするような妖艶さのある、コク深く罪深いミルキーな甘さは、ラムとアールグレイで香り高く華やぐ中でも際立つひと匙の妙薬のよう。
想像以上にトロトロでほっぺが緩みます。これは確かに“クリームパン”とは言えません。“プリンクリームパン”です(←だからその名前)。クリーム部分からちゃんと私たちの知っているプリンの味がするんです。カスタードクリームとプリンの違いは何なのだろう?使っている材料はほぼ一緒だよね?と、つい思考が寄り道しそうになりますが、いかんいかん。戻りましょう。
プリンクリームをぐるりと包むブリオッシュ生地は柔らかくしゅんと溶ける口溶け。断面の写真を撮ろうとナイフを入れてみると、そばから溢れ出て、せき止めていないとこぼれ落ちそうになるほどトロトロのクリームが押し寄せます。そして、あれ?プリンといえばのカラメルのコクも感じる気がする?そこにカラメルの姿、形は見えてはいないのに。そっか、カスタードとプリンの味の違いはここかと納得したのでした(それがどうした)。
ふかふかとした歯切れの良い生地に、じゅんじゅわーとバターが滲み出る(どこかで聞いたことのあるセリフ)。底はバターでジュクジュクカリカリだし、空洞になっているバターが包まれていたであろうゾーンは目視で確認せずともバターがたわわなのが味覚と香りだけでも伝わってきます。
生地のほんのりした甘さによって、表面にトッピングされたドイツ産の岩塩とバターの塩味をくっきりと浮き上がらせ、目が詰まっていても柔らかな食感なのも相まって、これは何個もおかわりしたくなるやつですね。
あぁ、愛おしいよ。ふかふかでやわやわです。繊細で細やかな組織で構成されるこの子は、まずはふかふかな心地を楽しみ、柔らか且つ滑らかな口当たりに包まれれば心は緩むばかり。そこをじわじわと満たしていく甘み。有塩バターをどんと載せても、塩気と上手く共存するおひさまみたいな温もりのある甘みがやってきます。気づけばお口いっぱいにひろがって身も心もほっこりと穏やかな気持ちになります。
そして驚くなかれ。この子、牛乳もバターも使われていないんです。代わりにオリーブオイルと豆乳クリームが使われているそう。カラダにも優しいだなんて、とことん私を甘やかしてくれますね(自意識過剰)。そのままではなく、トーストしていただきましたが、耳まで柔らかく生食パンらしいきめ細かい質感を楽しめて、押し付けない甘さがどんなモードの自分にも寄り添ってくれそうです。
4月は新天地でのスタートや、新しい場所に赴くことも多い季節。緊張の瞬間も多い時期だからこそ、その後のお楽しみとしてひっそりとパンチャンスを用意しておくのおすすめです。パンをきっかけに会話がうまれたり、一緒に行ってみたり、思わぬ形でパンが距離を縮めてくれるかも?