募集要項を読解。 JAXAが宇宙飛行士募集!『どんな人が宇宙飛行士になれる?』13年ぶりの募集要項を読み解く。
今回の募集が話題を呼んでいるのは13年ぶりということもあるけれど、応募できる人の制限が以前よりも圧倒的に緩和されたから。宇宙を楽しむコミュニティ「そらビ」の講義で募集要項を読解した。
何を準備したら宇宙飛行士への道が拓く?
JAXAが2021年度の宇宙飛行士募集を開始した。13年ぶりというタイミングであるだけでなく、募集内容や、今後5年おきに募集されるという点も注目を集めている。とはいえ、11月に発表された募集要項を実際に読んでみても、「何をどうしたらいいの?」と新たな疑問が生じるばかり。宇宙を楽しむコミュニティ「そらビ」に設けられている「宇宙飛行士部」では要項の読み解き会が開催され、ハナコラボ宇宙部を代表してなっとう娘こと鈴木真由子さんが参加してきた。
宇宙飛行士部の顧問である内山崇さんは、過去に宇宙飛行士選抜のファイナリストになった人物だ。これまでの試験内容はあまり明かされていないだけに、内山さんのようなファイナリストのみが試験の内容を語れることになる。宇宙飛行士を目指す部員たちは内山さんの言葉一つ一つに耳を傾けた。「思っていたよりたくさんの情報が公開されたな、という印象です」と内山さん。たとえばこれまでは筆記試験といっても出題範囲が全くわからない中で挑まなくてはならなかったが、今回はある程度テーマが限定されている。「対策ができることで、挑戦しやすくなったのでは」(内山さん)
さらに大事なのは、どんな宇宙飛行士になりたいかを思い描いておくことだという。これは、試験を通して使われるエントリーシートに大きく関わってくること。「日常生活から、自分が宇宙飛行士だったら何を選択するか考えてみるといいですよ」という内山さんに、「具体的にはどうしたら?」と鈴木さんが質問。「宇宙飛行士は自伝などを出していますから、読んでみるとヒントがあると思います」と教えてくれた。
宇宙飛行士募集要項、ここがポイント。
POINT.1【月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面が活動の場に。】
2019年、国際宇宙探査に日本が参画することが決定。今回の募集で期待される人材は、宇宙飛行士になれば、国際宇宙ステーションや日本実験棟「きぼう」だけでなく、月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面での活動も予想される。
POINT.2【宇宙船が進化し、身長などの制限が緩和。】
これまで158㎝以上としていた身長制限が149.5~190.5㎝に広がり、女性でもチャレンジしやすくなった。視力の制限も矯正視力1.0以上という以外には細かな決まりはなく、前回までよりも少し緩やかになっている。
POINT.3【大学卒や理系でなくてもOK。学歴が不問に。】
応募できるのは2022年3月末の時点で実務経験(社会人経験)が3年以上あること。これまで理系に制限されていたが、学歴や実務の内容は問われない。修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とカウントされる。
POINT.4【エントリーシートは最終試験まで使用。熟考するように!】
「選抜試験はプロセスもチェックされます」と内山さん。エントリーシートに書いた内容と、その後の面接などでの発言に食い違いがあるとマイナスポイントに。自分が宇宙飛行士になった未来までよく想像して書こう。
POINT.5【第0次選抜が登場。入り口が広い分、筆記試験が狭き門に。】
最初の試験は英語試験。それを突破した人だけが筆記試験に臨めるが、ここまでが第0次選抜とされる。筆記試験の内容も「国家公務員採用試験レベルの人文科学、社会科学分野の広範な素養と知識を問う」と公開された。
POINT.6【新たに小論文が追加された。社会に目を向けて。】
宇宙飛行士は、自分自身の考えが表に出ることはなく、あくまで“人類の代表”というポジション。あらゆる立場に立って考えられることが重要だという。時事問題や社会問題を常に意識して見ておくことが求められている。
POINT.7【重視されるのは次世代に貢献する表現力や発信力。】
「今回求められているのは野口聡一宇宙飛行士のような人物なのでは」と内山さん。ミッション参加によって得たことを世界中の人に共有する表現力と発信力があることが評価対象になるという。エントリーシートにも発揮しよう。
Navigator…内山 崇(うちやま・たかし)
JAXA勤務。第5期宇宙飛行士選抜では10名のファイナリストに残った。現在は、新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)開発に携わる。