娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 【日本酒】今までにない最高温度の熱燗に挑戦!「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」~『伊藤家の晩酌』第二十八夜3本目~
弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、寒い季節に飲みたくなる燗酒にぴったりな日本酒をご紹介。第二十八夜の3本目は、熱燗にしておいしささらに増す、京都のお酒。
今宵3本目は、70度まで熱くする“ふつふつ燗”で!「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」。
娘・ひいな(以下、ひいな)「3本目の燗酒は『玉川』です」
父・徹也(以下、テツヤ)「『玉川』?初めて聞いた」
ひいな「京都のお酒なんだけどね」
テツヤ「ラベル、いいね。かわいい。俺、好きなやつ」
ひいな「今の杜氏さんになってからかな、ここ10何年かでラベルチェンジもしたの」
テツヤ「柚木沙弥郎さんっぽさもあるっていうか、すごいかわいい」
ひいな「山廃純米無濾過生原酒です」
テツヤ「うわ〜。濃そうだね」
ひいな「飲む前にお酒の情報を。これは試験的に造ってるシリーズらしくて、これは雄町を使って山廃純米を造ってみたら好評で、毎年1タンクしか造ってないんだって」
テツヤ「普段は雄町じゃないの?」
ひいな「うん。いろんなお米を使ってるみたい。この蔵は割とアルコール度数が高いものを造ることで有名なんだけど、これも19度〜20度もある」
テツヤ「うわ、ほんとだ!高い!」
ひいな「日本酒のアルコール度数って22度未満だから相当高いよね」
テツヤ「俺が知ってる日本酒のなかで一番高いよ!」
ひいな「私もそうかも。同じ蔵が出してる『Ice Breaker(アイスブレーカー)』っていうお酒があるんだけど、それはロックにして飲むことをおすすめしてる日本酒なの」
テツヤ「わぁ、そういう日本酒もあるんだね、おもしろね」
ひいな「そういうユニークな発想で酒造りをしてるのが、杜氏のフィリップ・ハーパーさんっていう方で、イギリス出身でオックスフォード大を出てるんだって」
テツヤ「へぇ。ロックで飲むってウイスキーから着想したのかな」
ひいな「ね。HPを見たら『玉川』の特徴を紹介する7つの項目があって、⑦燗の一般論と玉川のお薦めがおもしろかったから紹介するね。一般的なとびきり燗は55度だけど、『玉川』をおいしく飲む温度帯の最低ラインが55度なんだって」
テツヤ「最低が?」
ひいな「そう。つまり55度以上に熱くしていいっていうこと」
テツヤ「そりゃすごいな。アルコール度数が高いから温度を高くしてもアルコールが抜けないってことなのかな?」
ひいな「うん。へたらないし、ガンガン燗にしたほうがおいしい」
テツヤ「そりゃ頼もしいね」
ひいな「燗酒の温度に正解はないから、いろんな温度帯で遊んでいただきたいって書いてあって」
テツヤ「いいね、いいね。公式にお墨付きをいただいたわけだ」
ひいな「ね。いろいろ試してみないとね!」
テツヤ「今度は何度くらいにしてみるの?」
ひいな「がんがん飛ばそうと思ってる(笑)」
テツヤ「飛ばしちゃうんだ(笑)」
ひいな「温度を上げるっていう意味ね(笑)」
テツヤ「スペックだけ聞いてると強そうだもんな。雄町で山廃で無濾過生原酒で度数も高くて」
ひいな「2020BYだから少し寝かしてある」
テツヤ「少し熟成もしてるんだね。うわぁ、高そうなお酒じゃない?」
ひいな「1,705円」
テツヤ「お?そんなに高くないね。これはどうやってお燗にするの?」
ひいな「またやかんにちろりスタイルで」
テツヤ「いいね、いいね。温めよう!」
ひいな「正直、常温だと『玉川』は苦手なんだけど熱燗にしたらすごい好きなんだよね」
テツヤ「おぉ!もう開けただけで匂いにクセがあるぞ」
ひいな「まずは常温でいただきます!」
ひいな&テツヤ「乾杯!」
ひいな「どう?」
テツヤ「うわぁ濃いね〜これはクセあるねぇ」
ひいな「紹興酒みたいだよね」
テツヤ「そうそう。日本酒じゃないね。これは燗に期待しちゃうなぁ」
ひいな「さっき紹介した『玉川』の特徴の1つ目には『変化が面白い玉川』書いてあって『時間軸や温度の違いによる味の変化は日本酒の最大の魅力』って書いてあって、極端な熱燗もOKって言ってます!」
テツヤ「そりゃいいね。やっちゃおう!どこまで上げる?」
ひいな「あちちち。いま70度かな」
テツヤ「そんなに?アルコール飛んじゃわないか心配だけど」
ひいな「大丈夫、大丈夫。飲んでみよう」
テツヤ&ひいな「いただきます!」
テツヤ「うわ〜おいしくなった!」
ひいな「おいし〜!」
テツヤ「クセがなくなったのかな?」
ひいな「クセが心地よくなる、っていう感じかな」
テツヤ「常温の時にあったえぐみみたいなのが消えたね。酸とコクがましてめちゃおいしくなった」
ひいな「あぁ、本当においしい〜」
テツヤ「こりゃいい酒なんじゃない?熱くしたほうが絶対おいしいよ。ボディがしっかりしてるからこんなに温度上げてもおいしいんだな」
ひいな「酸もしっかり残ってるしね」
テツヤ「熱燗を意識して造っただけあるね。最低温度が55度なんだもんな」
ひいな「そうそう」
テツヤ「これは町の集会所で飲むやかん酒っていうよりは、薪ストーブの前でちびちび飲みたい感じだな(笑)」
ひいな「わかる(笑)」
テツヤ「いやぁ、それにしても化けたね〜!燗にした時の酒の味を想像して酒を造るってすごいよなぁ。でもさ、意外とわからないままなのかもしれないよね。あとからタイトルつけるみたいなさ」
ひいな「確かに」
テツヤ「意外とこんなのができちゃったっていう感じかもなって。このひいなのお燗の実験も功を奏してるっていうか、日本酒の可能性を広げてるよね」
ひいな「ありがとうございます」
テツヤ「日本酒を70度にするなんて初めてだよ!」