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花井悠希の朝パン日誌 vol.15 甘い甘いパンをあなたに…〈CITY BAKERY〉と〈レザネフォール〉
冬の最後の大きなイベントといえばバレンタインデー。グッと寒さが増すに連れ、飲み物もおやつもついつい甘い物を欲してしまうのに、街を歩けば右も左もチョコレート。
いやはや街は危険すぎる…。(←誰)だけれども、寒いとカロリーは消費するらしいから食べても平気♪と、ついつい高を括ってしまうのもこの季節の大きな特徴ですね(私だけ?)。
ニューヨーカーの朝食?…〈CITY BAKERY〉の「はちみつとくるみのルゲラー」と「バブカ」
ニューヨーク発のベーカリー<CITY BAKERY>。看板商品のプレッツェルクロワッサンも美味しいのですが、お店に足を運ぶ度ずらりと出迎えてくれるアメリカらしい大らかで甘そうなパン達を見るのも楽しいお店。
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こちらは「はちみつとくるみのルゲラー」。かたつむりと瓜二つのルックスをしたこの子は、のっそりのっそり今にも動き出しそう。
目を離しカフェオレなんぞ啜った隙に、お皿から逃亡を図っちゃうんじゃないかと警戒してしまうほど、愛くるしいカタツムリフォルムは目でも楽しませてくれます。そんな彼が重たそうに背負う殻。溢れるほどぎゅうぎゅうにフルーツやナッツが詰まっています。
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切ってみると現れる綺麗な三角形。アプリコットの紅茶煮とレーズンがねちっとした湿度高い果実の質感を、オートミールとクルミがガリっと強い歯ざわりを、シナモンが味わいに奥行きを、とその情報量の多さは小さな三角形に全て収まっているのが不思議なくらいです。
1つ1つが際立っていて、全てが足し算!前に前に出てくる蜂蜜とドライフルーツが絡み合う逞しい甘みも真ん中でどっしりと主張し、ドン感がすごい。
そことはまた別世界を作り上げる外側。マスカルポーネが練りこまれているパイはサラサラと心許ない程センシティブ。風に吹かれればどこまでも舞っていきそうな軽さです。上に装飾された砂糖はシャリリと味を煌めかせています。
このパイのきめ細やかさと、真ん中の核の重量感は別世界でありつつ、お互いの足りない部分を補い合っているような信頼関係も感じ、手の平に乗っかる甘いかたつむりちゃんに愛おしさすら生まれてしまいました。
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こちらは「バブカ」。惜しみないこの贅沢なチョコレートの織りを見よ!
生地とチョコレートの割合が半分半分じゃないかというほどの圧倒的チョコ感。口内に入れば、なめらかに滑りだし、チョコレートの波をたてます。
見た目からしてさぞ甘いだろうと心して口に運んだのに、こちらのチョコレートはカカオの苦味がしっかり活きていて、甘さよりもカカオの濃厚さが優っているから、実に大人顔です。うむ、人は見かけによりません。(←パンです。)
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と、油断していると、クランブルがカリカリしている外壁にキャラメルが塗られているのを発見!ペンキのように自由にペタペタと塗られているキャラメルソース、そこを食べれば甘さもはっきりと。
そのソースがトロリンと口内に溶け出せば、キャラメルのこっくりした甘さにチョコレートのほろ苦さが絡んで、それはそれは甘美なデュエットが始まります。そうなればほら、あとはもう身を委ねるだけ。甘えちゃいましょう。
ショーケースの外の宝物・・・〈Les Années Folles(レザネフォール)〉の「アップルパイ」
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甘いパンということで、もう1つは代官山のパティスリー<レザネフォール>さんより。まずこちらは「アップルパイ」!
アップルパイと聞くと自然と想像してしまう味。そのスタンダードをこちら、一口で鮮やかに変えていきます。
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ざっくりざくざく、霜柱のような音をたてるパイ。バターの風味が豊かで思わずニンマリしてしまいます。
ザクザクを通り抜けたら、現れたのは飴色のりんご。タルトタタンのりんごのようにクタクタに、苦味を出すまで煮られたりんごは、形を保っているのが不思議なくらいトロトロ。ビターなキャラメル味をじゅんじゅん吸い込んでいるりんごは、一口でうっとりする世界を見せてくれます。
そしてりんごの下には、クレームダマンド、ビスキュイショコラが順番待ちしています。
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絶対的センター:アップルがいようとも、食べる箇所によってチョコレートのほろ苦さが前に出たり、アーモンド生地のまろやかさが優位にたったり、といろんな表情を見せてくれて、これまでのアップルパイ観を覆されること間違いなしです。
工夫が凝らされたパティスリーならではのアップルパイ、ぜひ朝パンに迎えてみてくださいね。
パン屋さんにもチョコレート味が溢れる2月。ワクワクしますね。寒さはカロリー消費するから平気平気!!(また言うか!)甘い朝パンを味方につけて、つらい冬の朝を乗り切りましょう♪