未来の移動手段を考える。 究極のエコカー「燃料電池自動車」の魅力って?水素を利用して走る未来の車。

LEARN 2021.11.17

将来、車を持ちたいと思ったときのために、水素を利用して走る「燃料電池自動車」の魅力について探っていきたい。CO2をはじめとする有害物質を走行時に排出しない「究極のエコカー」の魅力とは?

Q1.「そもそもなんで「水素」なの?」

無題 (5)

A.地球でもっとも豊富な資源。エネルギー利用時のCO2ゼロ。

水素は地球上でもっとも豊富な元素。その多くは水として存在。下水などの廃棄物、化学工場の副産物などからも得ることができるため枯渇の心配がなく、これをエネルギーとして利用する際にCO2を排出しないという点が、現在注目されている最大のポイント。作った水素を貯める、運ぶ、利用するといった加工にも対応しやすく、世界中でカーボンニュートラルが求められる今、様々な分野にも応用できる可能性を秘めている。しかも水素の自然発火温度は572度とガソリンの300度よりもはるかに火がつきにくく、万一タンクから漏れても空気より軽いため、すぐに大気中に拡散するため発火しにくい。事故などの面からみても適切な資源といえるのだ。

Q2.「燃料電池自動車ってどうやって動いてるの?」

無題 (6)

A.水素と酸素を反応させて生まれた電気で走行する。

水素を利用した車には「水素エンジン自動車」と「燃料電池自動車」の2種があり、現在、市販されているのは「燃料電池自動車」のタイプ。この車は、タンクに蓄えられた水素と空気中の酸素を反応させることで発電し、その電気によってモーターを回し走るシステム。走行時にはCO2を含む有害大気汚染物質を一切出さず、発生するのは水だけで、とてもクリーン。全国各地に設置された水素ステーションで充填でき、一度の充填で走行できる距離は約850km。ちなみに1㎏の水素充填にかかる費用は1,100円程度。例えばトヨタの「MIRAI」の水素タンク容量は141lで約5.6㎏分の水素が貯蔵可能。5㎏ほどの水素を充填して5,000円前後くらいのイメージだ。

Q3.「電気自動車と燃料電池自動車の違いは?」

無題 (7)

A.電気自動車は電気を充電。燃料電池車は水素を充填。

エコカーとしての認知度が高い電気自動車。こちらも燃料電池自動車も、地球環境に優しい点は変わらない。ただ電気自動車は充電した電気でモーターを回して走行するのに対し、燃料電池自動車はタンクに充填した水素と酸素を反応させて生じた電気でモーターを回して走行する点が違う。どちらも災害などの緊急時には車そのものを非常用電源として活用できる。ただし電気自動車は走行電力を蓄えるバッテリーを増やせば増やすほど充電にも時間がかかる。バッテリー容量や充電環境によって変わるが、自宅でフル充電するのに半日以上の時間がかかることも。一方、燃料電池自動車は充填には水素ステーションに行く必要があるけれど、約3分でチャージが完了する。

Q4.「燃料電池自動車が普及することで、地球にどんなメリットが?逆に、燃料電池自動車にデメリットはないの?」

無題 (8)

A.不便・高価などの問題も、普及と共に解消される?

燃料電池自動車最大のメリットといえば、もちろんCO2排出量を削減できること。また車以外のモビリティをはじめ、様々な場に燃料電池を応用したシステムが広がれば、カーボンニュートラルな地球環境の実現にも大きく貢献できるはず。ただこの話も現時点ではまだ道半ば。例えば、肝心の水素ステーションは現在全国で147カ所(2021年6月時点)。自分の行動範囲内にステーションがないとちょっと不便かも。ただ2030年までには全国に1,000カ所の設置を目標としているので、この問題は解消される可能性も。また、今のところ燃料電池自動車はガソリン車と比較すると高価なのは事実。だが国策としてCO2削減が叫ばれる昨今、税制面の優遇などがあるかもしれない。

Q5.「水素に種類があるってどういうこと?」

無題 (9)

A.製造方法と環境負荷を色で表した水素の区分け。

最近ではCO2排出の観点から水素の製造方法と環境負荷に関する状態を色で表現した区分けが注目されている。化石燃料で生成し、CO2が排出される「グレー水素」。化石燃料を使いつつも生成の過程で発生したCO2を回収・貯蓄した「ブルー水素」。再生可能エネルギーを使いCO2を一切発生させない「グリーン水素」。ほかにも化石燃料の中でも石炭から生成する「ブラウン水素」や、原子力発電で作った「イエロー水素」などがあるが、世界で作られる水素の約95%がグレー水素といわれている。ちなみに燃料電池自動車用の水素ステーションでも一部には100%グリーン水素を供給するところも。地球環境のために今後はグリーン水素をメインに使うことが望ましい。

Q6.「いつ頃普及する予定なの?本当に普及するの?」

無題 (10)

A.水素社会への動きは、確実に前進している!

燃料電池自動車の普及時期を明言できる人は誰もいないけれど、この車が今後飛躍することは間違いないと専門家も予測している。その理由のひとつは、水素は貯めて運べること。例えば、大量の電気は原則貯めることができないが、水素は貯蔵が可能。必要な時に取り出して、電気にすることができる。また、水素は液状化して運搬する方法もある。水素はマイナス253℃にすると液体となり、体積が気体の800分1になるので、より多くの量を運べる。そんな利点に注目して、2020年12月には「水素バリューチェーン推進協議会」が誕生。モビリティやエネルギーだけでなく、日本を代表する170もの企業が参画。様々な企業や自治体が現実的な普及に取り組み始めている。

Q7.「燃料電池自動車を軸としたモビリティの未来とは?」

無題 (11)

A.車に限らず船舶も騒音のないモビリティの未来が現実に。

燃料電池自動車は短時間で水素の充填ができて、長距離の走行が可能。しかもモーターで動くので静かという特徴がある。この特性を生かし、現在ではドクターカーやキッチンカーなどへの活用も現実的なものになりつつある。さらに今後モビリティの騒音問題はなくなる可能性も高い。ちなみに燃料電池自動車の核となるのは、水素と酸素を反応させて電気を起こす燃料電池(FC)システム。このFCシステムは自動車に限らず、フォークリフトやバス、トラック、船舶など幅広いモビリティへの展開も想定されている。地球環境に優しくて、静かで快適。燃料電池自動車も電気自動車も両方が機能したモビリティの未来は、きれいな空気と静けさの中にあるかもしれない。

(Hanako1202号掲載/illustration : Maori Sakai text : Kimiko Yamada)

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