暮らしに彩りを添える、ものづくりの最新形。 【京都】若手作家たちの“工房兼ショップ”に注目。常に進化を続ける、ものづくりの現場へ。
伝統から新潮流が生まれる京都の工芸。工房とショップを同じ場所に構え、マイペースで創作する若手作家に注目を。制作の現場を間近に見られれば、作品への理解も愛着もさらに湧きそう。
【鍛金】無機質に見える金属に、手の温かみを感じる作品。〈Ren(レン)〉/浄土寺
中根さんは美術工芸高校で彫刻を学んだ後、結婚指輪の制作に従事。2014年京都に工房を構え、指輪やオブジェ、カトラリーを制作。「鍛金は手を動かした分だけ形になるのが魅力」という。不定期で企画展を開催。次は9/18~26予定。
〈Ren(レン)〉
■京都府京都市左京区浄土寺下南田町36
■11:00~19:00不定休
※HPにて要確認
【うちわ】京うちわの基本を大切に、遊び心のあるデザインを提案。〈蜂屋うちわ職店〉/鹿ケ谷
哲学の道に近い路地奥の一軒家が工房兼店舗。老舗〈阿以波〉で京うちわの基本を学び、2019年に独立。京都の黒谷和紙や故郷・山形の月山和紙から、着物の古裂(こぎれ)やインドの草木染、パキスタンの木版などを使ったうちわがそろう。紙や布を持ち込んでセミオーダーも可能。
〈蜂屋うちわ職店〉
■京都府京都市左京区鹿ケ谷法然院西町40
■080-6020-8859
■10:00~17:00 月~金休
【清水焼】ふたつの窯の融合から、独自の焼き物が生まれる。〈蘇嶐窯(そりゅうがま)〉/清水五条
高貴なイメージの京都青磁と、生活雑器として愛される小石原焼の飛鉋(とびかんな)の技法を融合させた日常使いの器が人気。新作の縄文シリーズは息子が作った火焔(かえん)土器をきっかけに、妻・まどかさんが縄文土器の魅力にはまって誕生。オブジェやカップ、盃などがそろう。
〈蘇嶐窯(そりゅうがま)〉
■京都府京都市東山区清水4-170-22
■075-561-8004
■10:00~17:00 日休
若手作家たちの、 工房兼ショップへ。
常に進化を続ける京都のものづくりの現場。今注目は、工房とショップを併設した若手作家たちの動きだ。〈Ren(レン)〉の中根嶺(れん)さんは、金工作家。東京の会社で結婚指輪づくりに従事した後、京都・西陣で独立。5年の節目に左京区へ移転した。元家具店の倉庫だった物件を1年かけて自ら改装。光と風が通り抜ける心地いい空間の一角に、作業机を置く。「基本的には工房メイン。毎回テーマを決めて、1〜2カ月に一度ギャラリーとして開きたい」と中根さん。
京うちわの美しさに魅せられ、老舗の〈阿以波(あいば)〉で修業の後、路地奥の長屋の一軒に自分の城を構えたのは、〈蜂屋うちわ職店〉の蜂屋佑季(ゆうき)さん。靴を脱いで上がる部屋で、材料の和紙や道具を間近に見られる。京都・清水の4代目・涌波蘇嶐(わくなみそりゅう)さんと、福岡・小石原焼で14代続く窯元出身の妻・まどかさんが始めた〈蘇嶐窯〉も工房とショップが一体化。作り手の顔が見えて、話もできる。その距離感とマイペースな創作活動が、時代に心地よく寄り添う。