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日本人の舌に合う江南料理、一軒家レストランで堪能して! 名店出身シェフによる肩肘張らないフレンチから創作ベトナミーズまで。池尻大橋のワインが合う上質な4軒
渋谷と三軒茶屋の間に位置する、池尻大橋にあるワインが合う上質なお店を、ポルトガルをベースに幅広い料理が楽しめるお店から江南料理に特化した広尾の人気中華2号店まで、ジャンルに捉われずにご紹介します。
1.料理、ワイン、空間が調和して、おいしい音色を奏でるフレンチ。〈calme〉
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都内屈指のグランメゾンで出会い、時を経て再び同じ店で働くことになった、オーナーの佐野敏高さんとシェフの植松裕喜さんは、ビル街ながら、中目黒へと道がのびる広がりのある景色に一目惚れしてこの地を選んだ。料理は、「おいしいとシンプルに思えるものを」とシェフ。これまで培ってきたクラシカルな技法を踏襲しつつ、崩して軽やかに仕上げている。オマール海老のうま味が舌の上でとろける「コンソメゼリー」や、イカの墨やエンペラなどのエキスが凝縮した「イカ墨のソース」など、ふくらみのあるソースのおいしさが際立つ。
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6品4,900円のコースから。「柔らかな白イカ サフラン香るイカ墨のリゾーニ 秋風の見たもの」(手前)、「美味 豆乳ブランマンジェオマールのコンソメゼリーずわい蟹と雲丹」。グラスワインは約40種、グラス700円~。
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オーナーの佐野敏高さん。好みの1杯を丁寧に選んでくれる。「難しいことは抜きでリラックスしてもらえれば」。普段着で過ごせる居心地のいい店。カウンター席が中心。
2.ポルトガル+αの料理を囲み、飲み口軽やかな微発泡ワインで乾杯。〈食堂ヒゲ〉
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メニューは、バカリャウ(干し鱈)のコロッケに代表されるポルトガル料理をはじめ、ブラジル、ヴィーガンと幅広い。「色々な料理がテーブルに並ぶ、食堂のようなイメージですね」と店主の阿部知寧さん。店名のヒゲは、彼のニックネームから。店内は、カウンターとテーブルがある。
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おすすめは、ポルトガル南部の郷土料理であるカタプラーナ。二枚貝のようなスタイルの銅製の鍋で、魚介や野菜のうま味を逃がさず蒸し煮に。蓋を開けると立ちのぼる芳しい湯気、口いっぱいにじんわりと広がるスープの味わいが食べた者を虜にする。「魚介のカタプラーナ」2,800円(中央)、「オレンジのサラダ」700円は、ニンニク、チリなどでマリネ。爽やかな酸味がアクセントに。ワインは、ポルトガルの微発泡ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデ ガタオ ロゼ グラス500円、ボトル2,800円。
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夜風が心地いい日は、店先のテラスで、ワインを飲みながらゆるゆると時を過ごすにもいい大人のスペースだ。テラスは6席。
3.ナチュラルなワインを合わせて楽しむ、クリアな味わいのベトナミーズを。〈Sugahara Pho〉
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ベトナムベースの創作料理をつまみにナチュラルなワインを合わせるのが、店主・菅原勉さんの提案。オーストラリアのワイナリーやレストランで働いていた時、プライベートではまったのがきっかけだそう。店をオープンする前にベトナムへ渡り研究を重ね、知人のアジア料理家からテクニックを学び、菅原流のベトナミーズを完成させた。ねぎとろにハーブやヌクマムなどアジアのエッセンスを加えた前菜「エゴマディライト」、牛バラをレモングラスやショウガと煮込んだスパイス香る一品など、どの皿もセンスのよさを感じさせる。スペシャリテに据えたのは「鶏肉のフォー」。スープのおだやかな味わいは食べ進むごとに癒される。
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鶏肉のフォー1,200円(中央)は、右のパクチーなどのハーブをのせ、ライムをしぼって食べる。「ねぎとろエゴマディライト」1個420円(左)、「フエ風牛バラの煮込み」3,200円。ワインは仏産を中心にナチュラルなものを約100種そろえる。
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4.江南地方に特化した料理に興味津々。未知なるメニューを味わいに。〈JASMINE 憶江南〉
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広尾の名店〈中華香彩 JASMINE〉の山口祐介さんが、住宅街の一角に開いた新店。ここでは、上海、蘇州、杭州など、シェフが得意とする江南地方に絞りこんだ家庭料理が目白押しだ。基本の調理法として、中国特有のたまり醤油でこっくりと甘く煮込む、紅焼(ホンシャオ)料理がある。代表メニューのひとつが、かなりの大きさの肉団子。ごつごつとして黒光りしたフォルムはインパクト大! 手強そうな見た目とは逆に、ふわっふわの食べ心地が興味深い。15種類の香辛料を使ったタレが自慢のよだれ鶏は、残ったタレに焼き餃子をつけて食べるというユニークな提案も。豊富な紹興酒とワイン、どちらを合わせても美味。
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タイプの違う紹興酒が並ぶ。「古越龍山 甕出し」グラス800円など。
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バー風の個室のみテレサ・テンの中国語版の歌がBGM。
(Hanako1120号掲載/photo : Shin-ichi Yokoyama text : Yumiko Ikeda)