香港から逆輸入! 知的好奇心がくすぐられる未体験の味が楽しめる〈CENSU TOKYO〉

香港から逆輸入! 知的好奇心がくすぐられる未体験の味が楽しめる〈CENSU TOKYO〉
“おいしい”のその先を求めて。Meet the Chef
香港から逆輸入! 知的好奇心がくすぐられる未体験の味が楽しめる〈CENSU TOKYO〉
FOOD 2024.08.02
ジュワッと体の隅々に広がる幸せ。本当においしい料理を口にした時にだけ味わえるこの感覚は、けっして価格や食材の良し悪しだけではなく、作り手が歩んできたヒストリーや、その中で醸成されてきた料理への想いが生み出しうるもの。様々な視点から“おいしいをデザインする星子莉奈さんが、“おいしい”の先を求めて、極上の料理と作り手の素顔に迫ります。今回は外苑前にあるCENSU TOKYO〉にお邪魔しました。

2023年7月にオープンした香港で人気のレストラン〈CENSU(センス)〉の姉妹店〈CENSU TOKYO(センス トーキョー)〉は、日本の居酒屋カルチャーをよりクールに、そして自由に編集した一軒。

フレンチで腕を磨いたシェフが作る和洋中を重ねたクリエティブな料理が瞬く間にフーディーの間で話題となりました。今回はオーナーシェフの金須郁幸さんに人気の秘密や一皿に込められたストーリーを伺います。

食の不可欠さを痛感して料理の道へ

東日本大震災をきっかけに料理人を目指すことになったと話す金須さん。

「出身地の宮城で震災を経験し、“食”の大切さを痛感しました。食は人を守り、幸せにする。そのパワーを目の当たりにして、料理人になることを決めました」。

高校卒業後は夢を叶えるべく調理学校へ入学し、名門〈タテルヨシノ〉へと就職。

その後、同郷出身で幼い頃から兄貴分のように慕っていた佐藤峻さんから「香港でお店を立ち上げるから一緒にやらないか」と連絡をもらい、二つ返事で引き受け香港へと向かったと言います。

現地では〈CENSU〉の前身にあたる〈FUKURO〉というお店の立ち上げに携わりながら、ベトナムレストランでも仕事をしていたんだそう。

「言語の壁にぶつかってしんどい時もありましたが、シェフ達が優しく接してくれたおかげで救われました。それから、フレンチ以外の料理を新たに学べたことも大きかったですね。今の料理にもこの頃の経験が生きています」。と、当時を振り返りながら語ってくれました。

その後は東京に戻り、〈シンシアブルー〉で働いたのち、独立を決意。昨年の開店からすぐに火がつき順調そのものという印象を受けましたが、実際のところはどうだったのでしょうか。

「そうですね。オープンしてからはありがたいことに沢山の方に足を運んでいただいていますが、そもそもこの場所にお店を出すことを周囲に強く反対されていました。有名シェフでもないのに、外苑前で二階建てのお店をやるなんてリスキーだと止められたんです」。

それでも反対を押し切り、開店した理由について、「人生一度きりなんだから、失敗してもいい。その気持ちだけですね」と落ち着いた口調で、強い意志を持って答えてくれました。

居酒屋料理を独自に解釈したCENSUな一皿

フレンチ、ベトナム、香港、和食と各国料理のパーツを織り交ぜた新感覚の居酒屋料理を提案している〈CENSU〉。グランドメニューの6割は香港の本店から輸入し、日本食材を使ってマイナーチェンジしているそうです。

一見胡瓜のようなこちら、実はほうれん草を胡瓜に見立てているんです。旨みが強く弾力感のあるほうれん草を、炒った白ごまと、練りごまを使った濃厚なごまソースで拭っていただきます。

ヒラメのカルパッチョにはアールグレイのソースを添えて。フレンチ出身のシェフならではの巧みなソース使いが光ります。

合わせるのは自然派のオレンジワイン。この一品に限らず、〈CENSU〉の個性溢れる料理には優しい味わいのナチュールがぴったりなのです。

青芯大根の夏らしい酸味と上品なアールグレイのソースがクリアな味わいのヒラメと相性抜群。コーディネートしていただいたオレンジワインもピチピチとしていて爽やかなマリアージュを楽しめます。

お次は「うにぎり」。このメニューはシェフがベトナムレストランで働いていた時にまかないで食べていた焼きおにぎりをアレンジしたものなんだとか。

あわびの出汁に浸かったパルミジャーノ入りの巨大おにぎりを崩し、ウニをちょこんとのせてリゾット風に食べるのが正解。

パリパリに焼かれた香ばしい焼きおにぎりとトロっと食感の甘いウニがお出汁で繋がれ、口に入れたときの味のグラデーションがパーフェクト!

スタートしたばかりだというテイクアウト用のバインミーも試食させていただきました。

オリジナルのロゴが入った包装紙を開けるとどっさりパクチーがお目見え!

チキン自家製チャーシューがメインの2種類からチョイスでき、どちらもレバーパテ、にんじん、大根のピクルスがぎっしり入っていて食べ応え抜群です。近所の公園などに持ち寄ってピクニック気分を味わいながら頬張りたいですね。

五感で興じるひとときに酔いしれる

エッジがきいた独特の雰囲気を持つ〈CENSU〉。店名は五感を意味するfive sensesをもじっているのだそうで、洒脱なデザインの内装、大音量のBGMが五感を刺激する心地よいざわめきを醸成しています。

オリジナルグッズやアパレルも製作されていて、デザインは金須さんの腕に彫られたタトゥーの彫り師さんなどが担当されているのだとか。どことなく東南アジアの文化を感じるアイコニックなイラストが海外のゲストから人気を集めているそう。

「この白檀のお香はコロナ禍で日本へ旅行に行けなくなったゲストに少しでも日本を感じて欲しくて香港の〈CENSU〉で販売をスタートしたんですが、今はちょっと意味合いが変わってきていて。

自分たちの中で“ライフスタイルとして〈CENSU〉を提案していきたいよね”という想いが生まれてきたので現在はその一環として販売している感じです」と、金須さん。

お話を聞けば聞くほどに、食だけではなく衣食住で〈CENSU〉を体感することで、五感を研ぎ澄ましながらより彩り豊かな日々を送って欲しいという想いが伝わってきました。

いい意味でカオス感を感じる店内と知的好奇心がくすぐられる未体験の味、そりゃヘビロテしたくなるよなあ…という要素ばかり。食と音楽とファッションが心地よく調和した独自の雰囲気に包まれながら、世界中の文化がクロスオーバーする粋な食体験、ぜひ体感してみて下さい。

CENSU TOKYO

住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-12-9
営業時間:18:00〜23:00
定休日:日曜日
公式インスタグラム:@censu_tokyo

“食”をメインに、レストランプロデューサーやPR、ライターとして活躍。ハナコラボ パートナー。Instagram:(@hoshiko_0607

text_Rina Hoshiko photo_Wataru Kitao

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