甲斐みのりさんが綴る「銀座グルメ はじめて物語。」 実は巨人の選手が発案者! 「カツカレー」が誕生した意外なストーリー
明治初期、西欧風に改革がなされ、街に最先端の〝はじめて〞のものが集まった銀座。その感動は今も変わらず受け継がれている。銀座をルーツに持つ、おいしいものや場所を、甲斐みのりさんと訪ねました。〈銀座スイス〉のカツカレーについての物語です。
〈銀座スイス〉のカツカレー誕生秘話
ときは終戦後まもない1948(昭和23)年。日本の西洋料理の礎を築いた〈宝亭〉で総料理長を務めた岡田進之助氏が開いた洋食店〈銀座スイス〉で、新たなメニュー「カツカレー」が誕生した。発案者は、〈銀座テーラー〉帰りによく立ち寄っていたという巨人軍の名選手・千葉茂氏。あるとき千葉氏は、短時間で一気にがつんと食べたいと「カレーライスにカツレツをのせてくれ!」と注文。当時はトッピングという発想がない時代。店側も周りの客も驚いたが、体の大きな野球選手がもりもり頬張る姿が評判を呼び、いつしか正式に店のメニューに加わった。
少しずつ形を変えながら、「千葉さんのカツレツカレー」は、すりおろし野菜と挽肉で作る辛みが効いた欧風カレーに、カラッと揚げた肉厚の国産豚ロースカツと、キャベツを添える現在のスタイルに定着。洋食店ならではの歯切れのいいカツと濃厚なカレーを、みなぺろりと平らげる。カレーには生姜が皮ごと入っているそうで、食べ進めるうちに体がぽかぽか。「カツ」と「勝つ」をかけて験担ぎに食べに来る人も多いというけれど、たしかにみるみる力が湧いて、なんでもひょいっと乗り越えられそう。ここぞというときのお守りとしても味わいたい、「勝利の味がする」伝統メニューだ。
銀座スイス
住所:東京都中央区銀座3-4-4 大倉別館2F
TEL:03-3563-3206
営業時間:11:00~21:00(20:30LO)
定休日:不定休
席数:42席
千葉さんのカツレツカレー2,420円。ディナーメニューには最上級ロースを使うプレミアム(3,500円)も登場。昔ながらのグラタンやビーフクロケットも人気。