鎌倉を代表する、老舗和菓子屋〈力餅家〉へ。/第57回なかしましほの散歩のレシピ

FOOD 2023.05.21

料理家・なかしましほさんが、気になるお店とその方に会いに行く本誌連載「散歩のレシピ」。今回は神奈川・鎌倉にある〈力餅家〉へ訪れました。

鎌倉の仕事部屋へ自転車で向かう途中、極楽寺を抜けて坂の下にさしかかると、いつもほわ〜んとお餅のよい匂いがしてくる場所があります。
〈力餅家〉は、江戸中期から続く、鎌倉を代表する老舗の和菓子屋さん。大きなのれんがかけられた年月を感じる木造の建物は、そこだけ時が止まったような風情があり、大仏などたくさんの観光スポットがあるエリアですが、私にとっては〈力餅家〉が長谷坂の下のランドマークのような存在になっています。

江戸時代から300年以上続く老舗の〈力餅家〉。道ゆく人の目をひくのれん。店名の字は、書家・林祖洞の手によるもの。
江戸時代から300年以上続く老舗の〈力餅家〉。道ゆく人の目をひくのれん。店名の字は、書家・林祖洞の手によるもの。

まずは食べてほしいのが、つきたてのお餅をこしあんで包んだ名物の「権五郎力餅」。箱の中に並んだ様子も美しく、何回買ってもふたを開ける瞬間、わくわくします。
そして最初はおやつのつもりで食べ始めるのですが、上品な甘さなので毎回ごはんのように食べてしまうのがお約束。
添加物などが入っていないので、賞味期限は当日中。お餅だから当然かたくなるところ逆に安心だなあと思います。
2〜4月はお餅が草餅に替わるのが楽しみで、実は年が明けると心の中でカウントダウンを始めていて、今年は何回食べられるかなあとそわそわ。
ほかにも季節の上生菓子や、カステラ生地であんこを包んだ、いろんな表情がたのしい「福面まんじゅう」など、さまざまな和菓子を作っていらっしゃいます。
そして、あると必ず買うのがお赤飯。一般的な赤飯より食べ心地が軽やかなところが好きで、ささげの風味もとてもよいのです。
安齊さんは「せいろで蒸してるからかな」とさらりとおっしゃっていましたが、ほかでは出会えないおいしさにいつも感動しています。暮らす時間が長くなると自然なことのように感じますが、歴史とあたらしいものが合わさってうまれる鎌倉の空気は、やっぱりちょっと特別なのかもしれません。
それはきっと、力餅家さんのようなお店があるからこそだと感じました。

〈力餅家〉さんに来たら買いたいもの。

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