世界中から集めた雑貨と挽きたてコーヒー、代田の小さな休憩所。コーヒー&インテリアショップ【Hi Monsieur】| ある日、あの店のプレイリスト#9
雰囲気の良い、おいしいお店には、心地のよい音楽も流れている気がする。"食のある場所"の、ある日のミュージックプレイリストをおすそわけしてもらった。
第9回目は世田谷代田駅から徒歩11分のコーヒー&インテリアショップ【Hi Monsieur】へ。
Spotifyのプレイリストを流し始めれば、あっという間にあの店気分に。ひと休みのお供に。
プレイリストのこだわり|ゆるっとした空間にはならないよう、音楽でちょっぴり緊張感を
世田谷代田駅から徒歩11分程の住宅街の中に潜む「Hi Monsieur(ハイ ムッシュー)」は、コーヒーとインテリアグッズのお店であり、出張で空間演出も行う、一言でカフェとは言い表せないちょっぴり謎に包まれた独創的な空間。それでも一度お店に踏み入れてみれば、まるで”友人のうちに少し寄ってみた”ようなくつろいだ雰囲気と、店主・大石さんのさりげない存在感に癒されて、なんだか常連を目指したくなってくる(?)そんなお店なのだ。
今回はHi Monsieurの店主・大石さんに、お店を立ち上げた経緯や想い、とっておきのプレイリストを教えてもらいました。
「これまでずっとインテリアに関する仕事をしてきて、今もここは事務所兼お客さんへのオープンスペースとしてお店をやっている感じなんです。元は広告の美術などを手がける会社に勤めていて、10年くらい前に独立しました。事務所を構えることが決まった時、ここを自分だけの空間にするのではなくオープンな空間にしたいなと。音楽はやっぱり今まで仕事柄もあって色んな空間を訪れていますが、いいお店にはいい音楽が流れているなと感じますね。自分は(これいいな)と思ったら『なんの曲ですか?』って話しかけるタイプ。もちろん話しかけていいタイプかは、見極めていますよ(笑)。昔から音楽と空間がベストマッチだなと思っているのは、富ヶ谷のPathと渋谷のrojiura。どちらも今は人気店でなかなか予約が取りづらいですが、裏路地はレコードで音楽が流れていてとても居心地がいいんです。
このお店にある作家さんの食器や、国内外で買付したアンティークのものは全て、ユーモアや一癖がありながら、どこか可愛らしい側面のあるものを選んでいます。ただ、そういうものを置いていると空間も少しゆるっとなりがちになるんですよね。なので、そこは音楽で少しだけ緊張感を持たせています。例えば、ビル・エヴァンスのピアノを大きな音で流してみたり。音楽で、空間のバランスを保っているのかもしれません。
このプレイリストに入れたPuma Blueは、実は3月28日に来日ライブがあるんです。自分もいく予定で、最近よくリピートしているので選びました。次のJohn Scofieldは、有名なジャズギターの奏者。コンテンポラリーっぽい感じが空間と合っていいんです。Nilssonは『真夜中のカーボーイ』という映画で見つけてお気に入りに。こう見ると全体的には洋楽が多いですが、日本のアーティストだとフィッシュマンズをお店の”蛍の光”的な感じで流しています。そうすると土地柄か、結構その音を聞きつけてお店に遊びにくる人もいますね。あとは、自分は男性の声の曲を普段はよく聞くことが多いなと思ったんですが、女性のボーカルではSakanaがおすすめです。はじめはメンバーのギターリストの絵をあるギャラリーで見たことがきっかけで、音楽も作っていることを知って。今は解散してしまったそうなのですが、本当に声がいいのでぜひ聞いてみてください」
学生の頃は建築を学んでいたという大石さん。この取材でも、音が空間をどう作りあげるのか?と立体的に捉えながらお話しされていたのが印象的でした。やはり今まで学んできたことや、その経験が無意識にジャンルを超えて影響し合うのかなあと考えてみたり。まるで『部屋の中のここに椅子を置いてみよう!』といった具合で、音楽を選んでいるのが伝わり、話を聞いたあとはより空間が香り立つようにみえてくるのが不思議。
そんなこんなで、お店にはかっこいい音楽と絶妙な塩梅で選び抜かれた抜群のセンスのインテリアがずらりと並べてあり、こちらもいつの間にかそんな素敵な空間に恥じぬように!とクールな面持ちに。しかしなんとそこへ、Hi Monsieurの名物グルメ、MY PICNCさんの出来立てドーナッツが届いたではありませんか。(水曜、金曜に焼き立てが届くのだとか!)一瞬にしてそのお届け物に心奪われてしまった私は、素敵な空間への背筋の伸びる緊張感はどこへ、頭の中はその甘いかたまりに大きく齧り付く想像で埋め尽くされてしまったのでした。そんなHi Monsieurの楽しみ方は人それぞれ、欲望は無限大です。