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2021.09.15

第26回 今のあなたにピッタリなのは? モデル・柴田紗希さんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、モデルの柴田紗希さん。ハッピーオーラ満載!まるで、ひまわりのような彼女に、発信することへの思いや、最近ハマってるという「畑」の魅力を語ってもらいました。途中、自作の歌を披露してくれるユニークな一幕も…!?

今回のゲストは、モデルの柴田紗希さん。

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個性的なファッションやライフスタイルの発信を通じて、同性からの人気を集めるハッピーガール。古着やジュエリー、コスメと同じくらいに「自然」が好きで、最近はもっぱら「畑」に夢中。本はあまり読まないようで、原田マハさんのことを、“原田ハマ”さんと間違えていたのが可愛かった(晒しちゃう!)。

根本にあるのは「人を助けたい」という思い。

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木村綾子(以下、木村)「はじめまして。今日は柴田さんの人となりや、過去のどんな経験が今の柴田さんに繋がっているのかをご本人の口からお聞きしたくて。あえて経歴やバックグラウンドについては、ほとんど調べずに来ちゃいました。検索したら出てきそうなことも含めて、いっぱい聞かせてください」
柴田紗希(以下、柴田)「うふふ。何でも聞いてください」
木村「今でこそ、たくさんファンに愛されている柴田さんですが、モデル業を始められる以前は何をされていたんですか?」
柴田「もともとは名古屋の古着屋さんで働いていました。当時は、今の事務所の先輩でもある武智志穂(たけち・しほ)さんに憧れていたんです」
木村「武智志穂さん憧れ世代なんですね! 私も同じ系統の雑誌出身なので、誰に憧れていたかを聞けば世代がなんとなくわかります(笑)」
柴田「私もその感覚、分かります!(笑)彼女のきらきら発信する姿を見て、ああ、私もこんな風になりたいなってオシャレを磨いていました。そしたらある日、雑誌の『mer(メル)』のスナップ撮影に声をかけていただいて…。翌月には8ページの特集を組むので出てくれませんかって、連絡をいただいたんです」
木村「すごい! スナップからいきなり特集ページだなんて、スター街道ですね。滅多にあることじゃないです!」
柴田「当時の『mer』には、それこそ志穂さんとかがいて、私は高校生の頃から「いつか必ずこの雑誌のモデルになるんだ!」って思いを抱いていたので、実際夢が叶ったときは嬉しい反面、正直不安もあったんです。「私、本当に務まるのかな…」って」

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木村「古着屋さんで働かれていた当時は、学校にも通われていたんですよね?」
柴田「はい。大学では福祉の勉強をしていました。なんとなくですが、人を助けたいなっていう思いがありまして」
木村「“人助け”という壮大なテーマが出てきましたね! でも、柴田さんの根っこにある部分がこの言葉に隠れている気がします。もう少し深掘りさせてください!」
柴田「昔から、将来の夢を聞かれてもなかなかうまく答えられなかったんですが、「人を助ける仕事がしたい」ってイメージはあって。ただ、それも漠然としたものだったので、進路指導のときには先生から「どういう方法で!?」なんて問い詰められたりもしてたんです(笑)結局、“助ける=福祉”というストレートな道に一度は進んでみたんですが、モデルになって、「これだ!!」って」
木村「なるほど。たしかに、誰かの憧れになるようなモデル業や、自分の好きを発信する行為も、見方を変えると人を勇気づけることへと繋がりますもんね。人を助けたいという根本の部分が、大学で学ばれていたことと今のお仕事とでリンクしている部分があるように私には思えました」
柴田「そんな風に言っていただけると、あの時間も私の一部になっているんだって自信がわきます。モデルやプロデュース業など、何をしてても「女の子の心の支えになるぞ」っていうのを心がけるようにはしてるんです」

エピソードその1「読める本に出会いたい」

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柴田「木村さん、この連載に招いてもらっていながらこんなことを言うのもあれなんですけど、実は私、あまり読書が得意ではなくて…」
木村「そうなんですね。でも大丈夫ですよ! 本との出会いも人との出会いと同じで、巡りあわせですから。いまの柴田さんが出会うにふさわしい本を選んで見せましょう!(笑)」
柴田「よかった、そう言っていただけてホッとしました。私、昔は本当に本が読めなかったんですけど、最近になって、これだったら読める! っていうのに何冊か出会ったんです。だから今日は、木村さんに、そういう本を見つけていただきたいな~って(笑)」
木村「任せてください! ちなみに、それはなんて本だったんですか?」
柴田「今村夏子さんの『アヒル』っていう本です。ご存じですか?」
木村「わー!大好きな作家、大好きな作品です!!あの物語は、当たり前のように受け入れてた景色が一気に歪む瞬間が訪れるので、なんというか読む前の価値観には戻れなくなってしまう感じがあって、ゾワっとしますよね」
柴田「そうなんです。「意味分かんない!」ってなりながらも、それがなんだか心地よくて。不思議とぶわーっと読むことができました」

処方した本は…『ドレス(藤野可織)』

河出書房新社出版/2020年5月初版刊行
河出書房新社出版/2020年5月初版刊行
表題作の『ドレス』と『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』がおすすめ。
表題作の『ドレス』と『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』がおすすめ。
河出書房新社出版/2020年5月初版刊行
表題作の『ドレス』と『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』がおすすめ。

木村「これは、可愛らしさとグロテスクさの両方を持ち合わせた奇想の詰まった短編集です。表題作の『ドレス』は、アクセサリーが重要なモチーフにもなっているので柴田さんには特におススメ。アクセサリーを通して、いわゆる男女の分かり合えなさを描いていて、一辺倒にはいかない恋愛小説とも読めます」
柴田「男女の分かり合えなさ! 最近深掘りしたい分野でもありました(笑)」
木村「自分のランクに釣り合う女性を選んで付き合うような男性の前で、恋人の女性は、ある日出会ったアクセサリーによってみるみる変化していくんです。他人からの評価も格段上がっていくのに、張本人の彼氏にはその魅力がちっとも理解できなくて…。それでも「わからない」ことがバレて自分の評価が下がることを恐れるあまり、恋人に調子を合わせてしまうんです。でも結果的にそのことによって、さらに恐ろしい展開が・・・」
柴田「わぁあ!聞いてるだけでホラーだ!」
木村「柴田さんにとってお洋服やアクセサリーってきっと人一倍思い入れのある存在だと思うので、この小説をどう読んだか、ぜひ聞きたいですね。あとは、オスがメスの体に一体化することで子どもを宿す“チョウチンアンコウ”の生態を、人間の生殖に置き換えた『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』とかも、柴田さんがどう感じるか興味があります!」
柴田「な、なんですかその設定! でも私、年齢的にちょうど自分の女性性を見つめる時期でもあるので、話を聞いていて、「今の私が出会うべき本かもしれない!」って素直に思いました」

エピソードその2「畑の魅力に気づいてしまった」

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木村「そういえば最近、畑仕事にハマっているというのをお聞きしまして。お野菜つくられているんですか?」
柴田「そうなんですよ。畑の魅力に気づいてしまって…! 友達と一緒に横浜の方で土地を借りて、毎週末、耕しに通っています。木村さんも自然とかお好きですか?」
木村「私、実家が静岡の田舎で、田んぼに囲まれてるどころか家の裏には山があるようなところで育ったんです。子どもの頃の遊びといえば、秘密基地ごっことか、木にロープを吊るした“ターザンごっこ”とかでしたね…野生児です(笑)」
柴田「わ、めっちゃいいですね! 畑とかもありましたか?」
木村「はい。近所の農家さんと物々交換をしたり、それこそ食卓に並べるくらいは自分の畑で作ったり。今でも時々、季節の野菜が届いたりもするんです。畑にハマるきっかけは何だったんですか?」
柴田「私も名古屋の田舎から出てきたので、上京してしばらくは、心のバランスをうまくとれずにモヤモヤしてしまう時期もあったんです。「東京は自然が少なすぎて、もう…!」って。そんな頃、ファッション関係の友人が「いいとこ連れてってあげるよ!」って誘ってくれたのが、今育ててる畑だったんです。電車に乗ってる時間とか、土をいじってる時間とかが、私を開放してくれてることに気づいて…。今では週に一回、畑で汗を流すのがストレス発散でもあり、自分を保つ秘訣にもなっています」
木村「そういう風に自分のバランスを見つけていくのは大事なことですね。ちなみに畑仕事は、どんな格好でされているんですか?」
柴田「可愛いお洋服があるんですよ! 同じシェア畑に通う男性モデルさんが、農業服のブランドを始めたんです。例えば、真っ白のツナギとかがあって、「どうしてそんな汚れやすい色を?」って思うじゃないですか。そこには、真っ白のお洋服がキャンパスに見立てられていて、「土で汚してアートに」っていう思いが込められているんです…!」
木村「畑仕事も楽しくオシャレに快適に、そして自由なアートに。だなんて、素敵なコンセプトですね! あとでなんてブランドか教えてください!(笑)」

処方した本は…『発酵文化人類学(小倉ヒラク)』

木楽舎出版/2017年4月初版刊行
木楽舎出版/2017年4月初版刊行
持ち歌を披露してくれた柴田さん。他にも何曲かあるらしい。
持ち歌を披露してくれた柴田さん。他にも何曲かあるらしい。
木楽舎出版/2017年4月初版刊行
持ち歌を披露してくれた柴田さん。他にも何曲かあるらしい。

木村「小倉ヒラクさんは、“発酵デザイナー”という恐らく世界で一人だけの肩書きを名乗って活動されている方です。「見えない菌のはたらきを、デザインをとおして見えるようにする」をコンセプトに、日本の伝統文化でもある“発酵食品”に光をあて、新商品の開発やイベントごとなどで新しく面白く広げていかれていて…」
柴田「面白そうな方ですね!」
木村「伝える切り口が本当に面白いんですよ!微生物と発酵食の関わりを、恋愛やアートに例えたり…」
柴田「えー!それ聞いてみたいです!…小倉さんご本人とはお会いしたことはありますか?」
木村「はい。初めてお会いしたのは、下北沢の〈本屋B&B〉で働いていた頃でした。持ち込み企画で、「誰にでもできる味噌づくりを歌と踊りにしたので、披露させてください!」とイベントを持ち込まれて…。その名も「てまえみそのうた」(笑)」
柴田「てまえみそのうた! ネーミングセンスもチャーミングですね!」
木村「蓋を開けたら満員御礼!遠方から参加される方も多くて、子どもから大人までみんなで踊りながら「手前みその歌」を大合唱!!その姿が本当に生き生きとしていたんですよね。発酵文化って、こんな伝え方もできるんだなーって」
柴田「伝え方の新しい道ですね。木村さん、実は私もね、畑の歌をつくったんですよ」
木村「え!!」
柴田「『まいふぁーむ』っていう歌なんですけど、ちょっとだけいいですか」

「心を耕すMy Farm~♪ 明日を照らすMy Farm~♪ おいしく体にいただきます♪ まいふぁぁむの、野菜っ!」

木村「(拍手)フルコーラス歌い切りましたね!しかも踊りまである!(笑)最高です。最後の「野菜っ!」のところが、特に良かった…!」
柴田「そうなんです。「野菜っ!」のところは、こう、語尾をちょっとだけ引っ掛けるように…」
木村「柴田さんも、畑にちなんだ唯一無二の肩書き名乗っちゃえばいいのに・・・! 小倉さんにも一度会ってみてほしいなぁ。下北沢で〈発酵DEPARTMENT〉というお店もされているので、今度一緒に行きましょう」

エピソードその3「やっぱり、海外に行きたい!」

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木村「さっき、畑のお話をお伺いしているときに、東京と自分との距離感みたいなことも話してくださいましたが、生活はどうですか?」
柴田「上京してから今年で6年目になるんですが、最初のうちは正直苦手だったんですよ。やっぱり自然が好きっていう思いが強かったので、どうも街全体が味気ないなって思っていた時期はありました。でも最近は、自分自身がこの街のおかげでポジティブになっている気がするんです。決してネガティブだったわけではないんですけど、なんだかどんどんハッピーへと変わっていっている感じ」
木村「街によって自分が変わっていくという感覚は私もすごくよくわかります」
柴田「そうなんです。東京ってなんだか異国な感じがあるじゃないですか。会う人会う人が、みんな面白かったり」
木村「「優しい」とはちょっと違うんだけど、なんていうか、「許容してくれる」感じはありますね。柴田さんは今後、この街でやっていきたいこととかはありますか?」
柴田「う~ん、東京の魅力を語っておいてあれなんですけど、実は海外に行きたいって気持ちがあるんですよね。数年前に青年海外協力隊としてラオスに行ったんですが、今でもその時のことが忘れられなくて。「恵まれない子どもたち」って言い方よく聞くじゃないですか。けど、実際に足を運んでみると、みんな幸せそうな顔をしていたんですよ。自分にできることが何なのかはまだよく分かっていないですけど、ラオスの子供たちにもう一度会いに行かなきゃ! っていう使命感みたいなものは今でもずっと胸に秘めているんです」

『東京 ぼくの生まれた街(石川直樹)』

エランド・プレス出版/2020年12月初版刊行
エランド・プレス出版/2020年12月初版刊行
表紙カバーの仕掛けに喜ぶ私たち。
表紙カバーの仕掛けに喜ぶ私たち。
エランド・プレス出版/2020年12月初版刊行
表紙カバーの仕掛けに喜ぶ私たち。

木村「最後に紹介するのは、石川直樹さんの写真家です」
柴田「え、ちょっと待ってください!私、半年くらい前にその方の写真集買ったばかりです!」
木村「わぁ、すごいシンクロですね!」
柴田「古本屋さんでたまたま、名前も見ずに手に取った2冊が両方とも石川さんのものだったんです。風景や子供たちの笑顔に吸い寄せられるように買い求めてしまって…!」
木村「石川さんは登山家でもあるので、世界の自然やそこに生きる人々を写した写真集を多く出されています。ただ今回、柴田さんに紹介したいのは、石川さんがまなざす「東京」の街並みです」
柴田「“ぼくの生まれた街”ってことは、石川さんは東京出身なんですね。…そっか。東京から、世界のあらゆる土地へ出かけては、またここに帰ってきてるんですね」
木村「そうなんです。広い世界を知っている人が、東京をどう捉えているか。それを写真で感じたあと、ぜひ巻末の文章を読んでいただきたいんです。見開きのエッセイなんですが、石川さんは文章もとても魅力的なんですよ」
柴田「石川さんの文章には触れたことがなかったです。私、本当に作家さんの名前とかほとんど知らないのに、これは本当にすごいめぐり合わせ…!このカバーもなんだか可愛いですね」
木村「広げると東京の地図になっていて、石川さんが写した景色にピンがついてます。柴田さんが過ごしてきた東京と照らし合わせながら見ると、自分にとってのこの街がどういう存在だったのかに気づけるかもしれません」
柴田「いつか私が本当に「海外で勝負するぞ!と決めた時には、この写真集を連れていきたいなとも思いました。自己紹介がわりにもなるし、自分の帰る場所の確認にもなるし。頼もしい相棒になってくれそうです」

対談を終えて。

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対談後、『東京 ぼくの生まれた街』を購入してくれた柴田さん。撮影日の夜には、石川さんご出演のドキュメンタリーもテレビで放送されていたようで、「またもや、引き寄せました~!」と連絡をくれたのが嬉しかったな。髪型やお洋服が見るたびに変わる柴田さんのInstagramはこちらから。すくすくと育つ夏野菜にも注目です!

Instagram(shibasaaki)

撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉

木村綾子
木村綾子 / 文筆業・企画

COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)という本屋をはじめました。作者と読者のつながる場所を提案していきます。  」

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