【岐阜・飛騨高山】故郷で見つけた手仕事の軌跡と、地元で愛され続ける老舗の温もり。
おもて・ももか/「目の前の日々を留めて置く作業」をライフワークとしながら、東京を拠点に活動。2024年3月には、自身、2冊目となる写真集『traverse(r)』の出版。ハナコラボパートナー。
Instagram:@fantasy_omote
HP:https://www.momokaomote.com/
北アルプスに囲まれた自然豊かな町、飛騨高山へやってきた。やってきたというより、帰ってきたと言う方がしっくりくるのは、ここが私の生まれ育った場所だからだ。

飛騨高山へは、東京から車で約5時間。険しい峠を越えてやっと辿り着く。江戸時代に城下町として栄えた頃の名残があり、「古い町並」と呼ばれる観光名所にもなっている。北アルプスの大自然や温泉も楽しめて、旅行者が絶えず訪れる…言わずと知れた観光地だ。

帰郷してまず向かうのは、生活道具の拠り所〈やわい屋〉
高山に帰ったら、迷わず最初に訪れる場所がある。10代の頃からお世話になっている〈やわい屋〉だ。私が生まれ育った集落に古民家を移築して暮らしを営まれており、民芸の器を中心とした生活道具を取り扱っているお店。
店主の朝倉さん、店長の佳子さん、看板息子の十一、看板猫の玄米が暮らす古民家には、〈やわい屋〉と私設図書館、ギャラリーが併設されている。



〈やわい屋〉が好きな理由は、家族みんなで〈やわい屋〉という場所を営んでいる様子を楽しめるから。朝倉さん・佳子さん夫婦の漫才のような掛け合い、十一の書いた絵やポストカードが飾られていたり…これは是非、足を運んで空気を体験してほしい。

もちろん、取り扱っている器や生活道具もおすすめ。自分たちの手で買い付けができる範囲の場所のものを中心にそろえており、地元や近隣の作家さんの作品を手に取って選ぶことができる。



住所:岐阜県高山市国府町宇津江1372-2
TEL:0577-77-9574
営業時間、定休日などの詳細はInstagram(@yawaiya_asakura)にて確認を
飛騨からアフリカへ。丁寧な手仕事で想いをつなぐ木工家との出合い
今回の旅では、朝倉さんの仕入れに同行して〈やわい屋〉で作品を取り扱っている木工家の村瀬恭平さんの工房に伺わせていただけることに。お店から車で20分ほどの距離にある村瀬さんの工房に向かっていると、車の中にふわっと木の香りが漂ってきた。

倉庫の中にある秘密基地のような工房に到着し、村瀬さんの制作風景や作品を早速見学させていただくことに。すると、私が3月にエチオピアへ訪れた時に出合った木のスツールや枕に似た作品がいくつもあることに気がついた。
思わず村瀬さんに「先日、エチオピアでこの作品に似た木工品を見てきたばかりです!」と伝えると、制作した作品について教えてくれた。


アフリカでは近年、スツールの作り手が減り、現行品が作られていないそうだ。その状況を知った村瀬さんは、自分が日本でアフリカンスツールを作り、それが売れていけばアフリカの人たちがまた作り始めてくれるのではないか、という想いから制作されているそうだ。


ほかにも、間伐材で捨てられているスギをどうにか使えないかと考えて作品に用いていたり、村瀬さんの作品からは「ものづくりを通して、何かかが少し良い方向へ変わるんじゃないか」という祈りにも近い想いが伝わってくる。飛騨に村瀬さんのような作り手がいるということを知り、うれしくなった。

江戸時代の面影を残す、高山の「古い町並」をお散歩。
村瀬さんの工房を後にして、お昼ごはんを食べに〈大黒屋〉へ向かった。昭和23年創業の老舗蕎麦屋だ。毎朝手打ちの蕎麦が食べられて、地元民が足しげく通う名店。古い街並みから歩いていける場所にあるので、近隣の駐車場に車を停めれば観光もあわせて楽しめる。

迷わず一択、で注文する貝柱の天ぷらそばは、帰るたびに食べたくなるほどおいしい。

住所:岐阜県高山市天性寺町2
営業時間:11:00~20:00
定休日:木曜日
TEL:0577-35-1227
蕎麦つゆも飲み干し、お腹いっぱいになったところで、朝倉さんと少し街歩きをすることになった。向かったのは、〈飛騨高山まちの博物館〉。城下町の形成と町家文化をテーマに高山の成り立ちや、文化などが展示されている。

朝倉さんはここに展示されている円空仏がお気に入りだそうで、解説付きで館内を回った。有難いことに、入館料は無料。訪れた土地の風土や歴史を知ることができる施設には、行く先々で立ち寄りたくなる。

住所:岐阜県高山市上一之町75
開館時間:9:00~19:00
HP:https://www.city.takayama.lg.jp/machihaku/
博物館の後は、歩いて5分ほどの場所にある〈いわきの早蕨〉へ。趣のある佇まいが目を惹くこのお店は、1998年創業のわらび餅屋だ。本わらびを使用しており、ぷるぷるとろとろの食感が楽しめる。とにかく大人気で、買いに行っても大抵売り切れだ。

今日は奇跡的に2箱だけ残っており、手に入れることができた。お土産にぴったりなのだが、なかなか手に入らないので、開店と同時に買いに行くのがおすすめ。
住所:岐阜県高山市上三之町111-2
営業時間:9:00〜15:00(売り切れ次第終了)
定休日:不定休
HP:https://iwaki-sawarabi.jp/
朝倉さんとお別れして、旅の最後は〈荒城温泉 恵比須之湯〉で疲れを癒すことに。北アルプスの麓の、のどかな里山集落のはずれに佇む温泉施設だ。茶濁する炭酸泉の名湯は身体の疲れや不調を整えてくれるので、地元民にとっては万能薬のような存在。私も〈やわい屋〉とあわせて必ず訪れる場所のひとつだ。

恵比須之湯へ向かう道のりは、自然豊かな里山風景を楽しめるのでドライブにもぴったりで気持ちが良い。

住所:岐阜県高山市丹生川町折敷地井之口415-1
営業時間:13:00〜21:00
定休日:火曜日
TEL:0577-78-2877
五感を使って風土を楽しむことは、私が旅をする上で大切にしていることだ。飛騨高山に訪れた際にはぜひ、足を運んでみてほしい。
〈いわきの早蕨〉のわらび餅をこぼさないように食べながら、帰り道は雨のドライブを楽しんだ。

【予算2,000円】お土産は、日々の暮らしに添えたい器
〈やわい屋〉で見つけた 「柳窯 yanagi pottery」の小皿。アフリカなどの大陸のプリミティブな空気感が漂う独創的な柄に一目惚れ。余白もあって、暮らしに寄り添ってくれそうな小皿は、自分用に一枚、贈り物に一枚と、お土産に最適。

今回の旅の様子をまとめたスペシャルムービーも是非ご覧ください。
text&photo_Momoka Omote



















