くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #3 Vegetus

TRAVEL 2023.06.30

岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

3. Vegetus

お土産に貰ってうれしいもののひとつに「ナッツ」があると思う。ナッツはいつだって食べたいものだけれど、自分の生活に馴染みがあるかと言われると、それはなかなかむずかしい。だから貰うとよりうれしい。木の実を貰ってうれしい。人間という動物の非常に原始的な欲求を満たされるようなところもかわいくて良い。

盛岡のお土産にナッツ、という選択肢が生まれたのは、〈Vegetus〉と出会ってからのことだ。はじめはプレゼントとして友人から貰って食べて衝撃を受けた。
……ちょっとまって、こんなの料理じゃん!、と。

そもそもナッツそれ自体に、一粒にぎゅっとおいしさやすこやかさを詰め込んだような、みなぎるうまさがある。正直、ナッツと言うものをわたしは舐めていた。ナッツは常においしくてありがたいものだから、何を食べてもおいしいものだと思っていたのだけれど、こんなにとびぬけておいしいことがあるのか、と感動した。(あ、これ、もしかするとなんかすごいぞ)と一口目を噛み締めながら目がぐんと開いてくる。大袋でおつまみとして買ってざらざらと口に放り込むミックスナッツとはちがうありがたさがたしかに存在する。

そしてフレーバーがすごいのだ。
わたしが初めて食べて感動したのは「からすみミモレット」。

からすみミモレット

オーストラリアのぱりっと硬い大粒アーモンドに、フランス産のミモレットチーズとスペインのカラスミをたっぷりとまぶしてあるのだが、これがまあ、おいしい。一粒食べるだけでパスタを一皿食べきったときのような満足感がある。○○風味、というレベルのものではない。完全に一粒で一皿の驚きがある。
映画『チャーリーとチョコレート工場』のなかに、フルコースの味が楽しめるという夢のようなガムが出て来るが、一粒でぶわっと一皿分の感動をしたとき、そのガムのことをちょっとだけ思い出した。

それから、最近お熱なのは「八幡平バジルカシュー」!

八幡平バジルカシュー

インドのゴア産の選び抜かれたオーガニックジャンボカシューナッツに岩手県の八幡平市の地熱で栽培されたバジルと、イタリア産パルミジャーノレッジャーノをたっぷり使って味付けしている。これがまた、背もたれにのけぞるほどおいしい。ナッツがバジルの香りを受け止めて、噛むほどにおいしい。あ~っ、お酒のんでいい?ワインも絶対合うけど、ビールも最高だと思う。

ほかにも、ラインナップを眺めているだけで「まいっちゃうね」と声が出るほど、すばらしいフレーバーがたくさんある。甘いナッツも最高なんです。
今日は特別。シュリンプチーズ、からすみミモレット、八幡平バジルカシュー、燻製吟醸ミックスナッツで乾杯。こんなにたくさんナッツがあったら、いくらでもすいすいお酒が進んでしまう。

Vegetus

〈Vegetus〉は盛岡から全国に、世界中から選んで集めた特別なナッツを届けている。

実は最初貰ったとき、このナッツが盛岡で作られているとは知らなかった。全国的に有名な、きっと東京かどこかで作られているナッツなんだろうと思っていた。だから、近くで作られていると知ったときは本当に驚いたし、なんだか「負けてられないぞ」と思った。

〈Vegetus〉のナッツは盛岡駅のカネイリスタンダードストア、菜園の百貨店〈川徳〉、肴町のセレクトショップ〈from〉で購入できる。盛岡市前九年(ぜんくねん)にある店舗では、量り売りでナッツを購入できたり、店舗でしかテイクアウトできないドリンクが楽しめたり、ナッツのために選び抜かれたチーズを購入することもできる。暑い日だったのでテイクアウトのドリンクを店員さんのおすすめ通り注文すると、これがとてつもないおいしさで笑ってしまった。

オーツミルクメープルラテ

オーツミルクメープルラテ。オーツミルクのあまりの香り高さに、二度見ならぬ二度飲みした。えっ。うま。オーツミルクってこんなにおいしいんだ。

“「おいしい」がさらに「おいしい!」になるように”という言葉が〈Vegetus〉のパンフレットに書かれていてはっとした。それってとてもかっこいいことだ。わたしも「いい文章」が「いい文章!」になるようにと思って原稿に向かっている。

お土産を選ぶとき、その土地らしいものを買うのも大事なことだけれど、その土地で生み出されているものを買うのも素敵だと思う。〈Vegetus〉は創業11年目。こうして盛岡から全国へ向けて仕事をしている姿はかっこいい。わたしはとっておきの人には、間違いないこのナッツを送っている。

そして、ナッツはときどき貰うもの、と思っていたわたしは、お守りのように〈Vegetus〉のナッツを家に置いておくようになった。いつだれが来てもいいように、いつお祝いが発生してもいいように、いつわたしがわたしにご褒美をあげたくなってもいいように。

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