疲労感も肌荒れも便秘も解消! 地球にも私にもやさしい“プラントベース”って?

疲労感も肌荒れも便秘も解消! 地球にも私にもやさしい“プラントベース”って?
疲労感も肌荒れも便秘も解消! 地球にも私にもやさしい“プラントベース”って?
SUSTAINABLE 2024.07.12
プラントベース」。言葉は聞いたことがあるけれど、実際どういうものかわからない。そういった方も多いのではないでしょうか。プラントベースなライフスタイルは、私達の身体にとっても地球環境にとっても嬉しいライフスタイル。今回は、ミラノ在住のプラントベースウェルネスアカデミー主宰、ヴェルヌ華子さんにプラントベースライフスタイルについてお話を伺いました。
ヴェルヌ華子さん
ヴェルヌ華子さん
〈Plantful Journey〉プラントベースウェルネスアカデミー創設者

慶應義塾大学環境情報学部卒業後、〈シャネル〉フランス本社マーチャンダイジングマネージャーを経て、ミラノにて〈Plantful Journeyプラントベースウェルネスアカデミー〉を設立。プラントベース軸の食習慣を取り入れる12週間のウェルネスプログラムは「食から人生が変わる」と人気を博し、2年で230名以上の女性が受講。 2023年にはパリコルドンブルー調理学校のプラントベース専科で日本人として初めてディプロムを取得。

ヴェルヌ華子さんInstagram:@hanako_plantful_journey
ウェルネスアカデミー Plantful Journey 公式Instagram:@plantful_journey
ウェルネスアカデミー Plantful Journey 公式Youtube:PLANTFUL JOURNEY

この日は、ミラノにある〈プラントベースガストロノミー〉にて食事をしながらのインタビュー。工夫を凝らしたプラントベースの料理の数々に、研究熱心な華子さんはスタッフの方からのお料理の説明を熱心に聞いて、ひとつひとつ丁寧に味わっている様子が印象的でした。

プラントベースってどんな食事?

——そもそも、プラントベースとはどんなものですか?

食生活のことを「プラントベース」という場合は、植物性のものを中心に食べる植物性を積極的に摂っていく食のスタイルのことを指し、野菜や果物、全粒の穀物、キノコ、海藻類、ナッツや種子類というものを中心に食べていきます。それが「ヴィーガン」とどう違うかというと、アプローチの違い

「プラントベース」は植物性を積極的に摂って増やしていく考え方で、それに対してヴィーガンは、 イギリスの〈ヴィーガン協会〉が定めている定義によると、人間は動物から搾取するべきではないという主義で、そのイデオロギーに沿って動物性のものを、食またはライフスタイル全般から避けるというもののこと。

つまりヴィーガンは動物性を一切排除するという考え方なので、そこにアプローチの違いがあります。

最近はゆるヴィーガンとかそういう言葉もありますが、基本的にヴィーガンというのは0か100、ヴィーガンかそうでないか、という生き方です。

それに対して、プラントベースというのは度合いがあって、50%プラントベースの人もいれば、80%、90%プラントベースの人もいます。

そしてもうひとつ。プラントベースは植物性系だけではなくて、できるだけホールフードのものを食べていくという思想があります。ホールフードというのは、できるだけその植物を自然のままで、加工や精製されていない状態で食べていくんです。

植物の持っている力、その栄養の恩恵を受けるために、やっぱりそのまま食べるのが1番。加工とか精製は、すればするほどその栄養素をどんどんそぎ落としていってしまうんです。

例えば、 大豆から大豆油を作るときには、元々大豆に含まれる食物繊維とかミネラルとか、せっかくの抗酸化物質が除き、油の部分だけを取り出している。もったいないですよね。

穀物についてもやっぱりホールフードの考えに基づき、白米よりも玄米、白い小麦粉よりも全粒の穀物を中心に食べていきます。

プラントベースの食生活は嬉しいメリットがいっぱい!

——なるほどヴィーガンとプラントベースの違いを分かりやすくご説明ありがとうございます! プラントベースな食生活にすることで、私達の体にはどんな効果があるんでしょうか?

実際に多くの研究でプラントベースが慢性疾患を予防して長寿健康につながることは一貫して証明されています。例えば私の場合だと、プラントベースな食生活に変えたことで、体質が大きく変わりました。

疲れ知らずになったし、眠りの質が良くなったとか、肌が綺麗になったとか、たくさん食べても太らないとか、 便秘を解消したとか…もう本当に色々あります。

なんでそういうことが起きるかっていうと、腸内環境が改善することが大きい。やっぱり現代人には、圧倒的に食物繊維が足りてないんですね。特に日本人は世界基準から見てもかなり食物繊維の摂取量が少ない。プラントベースの食生活ではたくさんの食物繊維を摂ることになるので、自然と腸内環境が改善します。

そして、腸は脳や他の臓器と繋がっているので、メンタルの状態が安定したり、免疫力が上がったりとか、認知機能や睡眠など様々な側面に良い影響があるんです。

——確かに、日本でも外食ばかりしていると、お肉や炭水化物中心の食生活になってしまって、食物繊維を接種する機会が少ないですね。でも、動物性のプロテインを摂らない食生活を続けることに対する弊害は無いんでしょうか?

そうですね、タンパク質が不足してしまうという思い込みがある人が多いんですが、プラントベースは豆や雑穀、野菜から十分にタンパク質が摂れることがわかっています。

また、タンパク質は「何とセットなのか」が大事。動物性タンパク質は飽和脂肪酸と高いカロリーとセットになっている場合が多い。一方、植物性タンパク質は食物繊維とミネラルやビタミン、抗酸物質など、より健康を促進する栄養素とセットで摂取できるんです。

そもそも、大前提として、◯◯食を食べたから健康で、◯◯食を食べたから何かが不足する、ってことはない。プラントベースに限らず、どんな食べ方をするにしろ、バランスの取れた食習慣を意識することはすごく大事ですよね。

プラントベースのキーワードは“旬”と“地産地消”

——そうですよね、どんな食生活でも健康習慣でも、やりすぎも、やらなさすぎも、どちらも健康的ではないので、バランスが大切ですよね。プラントベースの食生活を日常で取り入れる際の野菜の選び方のポイントはありますか?

私がすごく大切にしていることは、まず旬の野菜であるということです。やっぱり野菜の楽しさって、自然がくれる恵みを、その自然の流れに沿って楽しんでいくっていうことだと思うんです。

スーパーとかに行くと、現代は1年中トマトがあったりして、旬が分かりにくくなっていますが、日々、ちょっとだけでも意識してもらえるといいかなと思います。

旬のものを食べるっていうことは、 環境負荷も低い。その土地で、その時期に自然の営みの中で育つものなので、グリーンハウスやそれを熱するための機械を使わずに済んだり、遠方から輸送する必要もない。

そういった意味で、美味しいだけではなく、環境にも優しいので、旬のものをぜひ取り入れてほしいなと思います。

あとはやっぱり地産地消ですね。自分の地域の人が作ったものを購入して、応援していくというのは、すごく大事なことだと思っています。

野菜って取れてから食べるまでに時間があくと、栄養がどんどん失われていくので、できるだけ近くのものを食べるというのは、栄養価が高いうちに食べられるというメリットもありますね。

そして、オーガニック。私もできるだけオーガニックのものを買うようにしてます。実は大規模な研究では、本当にオーガニックが健康面に良いかというと、はっきりした結果が出てないんです。

だから私は、オーガニックが健康にいいかどうかとかだけじゃなく、オーガニックという仕組みへの投資だと思っています

農薬を使うと、どんどん土壌の質が悪くなってしまい、野菜の味を損ねたり、栄養価が低くなってしまういっぽう、オーガニックの野菜は、 その土地が長く、いい状態でいられるように意識して作られている。

そこに投資をし、それを実践している農家さんを応援しているっていう意味で、オーガニックのものを選んでます。

プラントベースで環境を守れる?

——環境負荷を考えた上で、オーガニックを選択されているんですね。動物性の食べ物を摂取することも、環境負荷があると聞きますが、具体的にどのような弊害があるんでしょうか?

いろんな側面があるんですが、まず、気候変動に1番関わっているののは、 温室効果ガスの排出ですね。

実は畜産業が出している温室効果ガスは、車等の交通の温室効果ガスと同じ全体の約15%という風に言われていて、かなり多いですよね。

理由としては、もちろん牛や羊などの反芻動物がメタンガスを出すというのもあるんだけれども、彼らが育つ場所を確保するために森林を伐採する必要もありますよね。結果、複合的に温室効果ガスを出してしまうセクターになってしまっているんです。

プラントベースな食べ方をすることで、温室効果ガスの排出を73%抑えることができるということが、2023年の最新のオックスフォード大学の研究で出ています。

更に土地利用という面でも、動物性食品を食べることは、非常に非効率的。家畜用の植物を育てる場所や加工工場など、すごくたくさんの土地を使うのに、生み出すことができる食肉の量は少ない。

逆に、植物性のものだと、小さい面積でより多くの栄養素を収穫できる、結果より多くの人に栄養を届けることができます。

今後、世界の人口が増えていく中で、このまま動物性に依存していると、食べ物が足りない、栄養が足りない人が出てきてしまうことにも繋がりかねません。

更に水もかなり使います。牛が飲む水、体に浴びる水などを踏まえると、牛肉1キロを作るのに 15,000リットルの水が必要と言われています。

食生活を半分プラントベースにすることで約35%の水の節約になって、完全プラントベースにすると、約55%パーセントの水の節約になると言われています。

自分が変わった。だから伝えたい

——なるほど!そういったご自身の実体験と環境への想いがあるから、プラントベースドウェルネスアカデミー〈Plantful Journey〉を始められたんですね。はじめたきっかけはなんでしょうか?

もともとパリで働いていたのですが、働きすぎてとっても疲れていたんです。病気ではないにせよ、疲れすぎていて…。

その時、健康に気をつけようと思い、色々なダイエット法や食事を試したんです。そんな時、たまたまプラントベースだとは知らずに入ったガストロノミーで頂いたお料理がとっても美味しくて感動して!

それまでは、肉も魚もなんでも食べていたし、むしろヴィーガンは、つまらないとか、美味しくないとか、日本のマクロバイオティックみたいに、全部茶色みたいなイメージがあったんです。

でも、野菜だけでこんなに美味しいんだ! と感動しました。更に次の日にすごく体調が良く、体が軽くなったことを実感したんです。

——次の日にすでに!すごい!

そうなんです! それで、自分もやってみようと思って取り入れ始めたんです。すると、小さい頃から悩んでいた便秘も改善されて、体調も肌の状態も改善し、気づけば疲れもなくなっていった。すごいエネルギーが溢れてる! みたいな感じでしたね。

私は結構、真面目なので(笑)色々知りたくなり、プラントベースについての色んな本を読んだりしているうちに、こんなに美味しく食べれて、体に良くて、環境にも良い食べ方があるのならば、もっと伝えたい!と思い始めました。

——まずは自分のための研究から始まったんですね。

そうなんです。でも自己流で始めたので、最初からいきなり色々なレシピを知っていたわけでもなかったし、最初は家族にも理解されなかった。

自分が最初大変だったからこそ、私みたいにプラントベースフードを始めたいと思っている人たちのサポートをしたい、と思うようになり、アメリカの機関でヘルスコーチの資格の勉強をしました。

ヘルスコーチの資格を取得後、まずは数人のモニターさんからはじめてヘルスコーチとしての経験を積んでから、プラントベースウェルネスアカデミー「Plantful Journey」をローンチしたんです。

——自分の健康のために始めたプラントベースフードの学びがたくさんの人に広がっていて、これからも更に拡大していくのが楽しみです! 今日のプラントベースフードも味はもちろん、目にも美味しく、驚きがたくさんの楽しいお食事でした。動物性のものがなかったとは思えないほどの満足感です!

本当、とても素敵なプラントベースガストロノミーでしたね、ありがとうございました!

text_KIKI

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