日本の学校とはまるで違う!? デンマークの人生を学ぶための学校「フォルケホイスコーレ」
デンマークにある人生を学ぶための学校「フォルケホイスコーレ」。ウェルビーイングの学校とも言われるこの場所では一体どんなことを学べるのでしょうか。世界中を飛び回り、ボランティア活動に積極的に携わるKIKIさんが幸せに生きるヒントを求めて、“幸せの国”デンマークで、「フォルケホイスコーレ」を訪ねました。
学校ごとに特色がある北欧独自の教育機関
デンマークにある学校「ホイスコーレ」または「フォルケホイスコーレ」と呼ばれる学校をご存知だろうか。「人生を学ぶための学校」だったり「ウェルビーイングの学校」などと言われている、北欧独自の教育機関である。17歳以上であれば、国籍問わずに誰でも入学ができ、試験も無ければ、成績も無い。全寮制で、先生も生徒も同じ宿舎の中で共同生活を営みながら学ぶ、そんな学校だ。
「ホイスコーレ」は現在デンマーク内に70校ほどあり、それぞれに特色がある。例えば、スポーツをテーマにした学校、ライフスタイルをテーマにした学校、シニア世代にフォーカスした学校、キリスト教をベースにした学校などだ。
今回紹介する学校は「エコビレッジ」という名の傘の基に、3つのプロジェクトが行われている「Avnø Oasis」だ。
3つのプロジェクトとは、「コハウジング(共同生活)」「エコプレナーシップ」そして、「ホイスコーレ」だ。「エコプレナーシップ」とは、エコ(eco)と起業家(entrepreneur)が合わさってできた造語で、環境に配慮した製品やサービスの製造・販売を行う起業形態のことを指す。
地球にも人にも永続的に優しい選択としての「エコビレッジ」
創業者で代表のクリスティアーネさんに、なぜこの3つのプロジェクトが「エコビレッジ」として、行われているのか聞いてみた。その問いに対する彼女の答えはこうだ。
「この3つには、より地球に優しく、健康的で幸せな生活をするための相互作用があります。共同生活をしたほうが電気や水の使用量も少ないから環境に優しい。生活と仕事を同じ場所で行うことで、移動しなければならない距離も減る。『ホイスコーレ』で学ぶ生徒たちは、『コハウジング』のコミュニティと『エコプレナーシップ』を営む人たちと共に生活することで、より環境に配慮したより健康的な生活を体感することができるようになります。
また、世界各国の人たちが共同生活を営むことにより、日常生活を送りながらにして様々な世界や文化を知り、理解することにもつながりますよね。
『ホイスコーレ』では、どのようにしてより健康的で、幸せで、環境に優しい生活を送ることができるか、更に学校での学びを終えた後にどのようにしてそれを実社会で活かすかまで学ぶことができるんですよ」
マクロバイオティックの満足感たっぷりの食事
「Avnø Oasis」での楽しみは、何と言っても満足感たっぷりのマクロバイオテックの食事。季節や気候に合ったマクロバイオティック(穀物や野菜、海藻などを中心とする日本の伝統食をベースとした食事。実は日本発祥のもの)の食生活を皆で実践することで、環境にとっても、そこに暮らす人々にとってもより永続的で健康になることが可能になる。
クリスティアーネさん曰く、「マクロビオテックの食事が一番ホリスティック(※)」で環境によく、季節、状況、時期、気候などのバランスと栄養のバランスが取れる食事だそう。
※精神・身体・環境がほどよく調和し、与えられている条件において最良のクオリティ・オブ・ライフを得ている状態を健康と考えること
「コハウジング」には世界中から住民が集まっていて、現在の「Avnø Oasis」は1歳から80歳までの住民がいる。ウクライナからの移民も受け入れていて、みんなが家族のように暮らしているとても平和でダイバーシティな環境だ。
家族のように暮らしているからこそ、日常の中で色々な価値観に触れることができ、違いを認め合い、理解し合うことができる、暮らしているだけで非常に学びが多い環境である。
「フォルケホイスコーレ」にはサステイナブルが溢れている
研究機関が「Avnø Oasis」の取り組みがSDGsの17の項目のうちどれに該当するか調べたところ、なんと全ての項目に該当していることの結果が出たそうだ。その中でも「Avnø Oasis」が強みとしている項目が以下だ。
・項目3 すべての人に健康と福祉を
・項目4 質の高い教育をみんなに
・項目11 住み続けられるまちづくりを
・項目17 パートナーシップで目標を達成しよう
ここにいるすべての人はもちろん、「Avnø Oasis」の取り組みによってより世界が良くなる仕組みづくりが、ここにはある。
実は「ホイスコーレ」には2種類ある。デンマーク政府から補助金を受け取っているものと(正式名称を「フォルケホイスコーレ」という)、補助金を受け取っていないものだ。
補助金を受け取るためには諸々条件がある。例えば、在籍する生徒のうち、常に50%以上がデンマーク人であることや、学校運営は独立した建物と寮で行わなければならず、生徒や先生ではない人が同じ建物に居住したり同じ建物内で別のビジネスを行ってはいけないということなど、だ。
「Avnø Oasis」は先述の通り「エコビレッジ」の傘の基、学校機能だけでなく「コハウジング」と「エコプレナーシップ」のプロジェクトも運営しているので、「学校だけで独立した建物と寮での運営」に当てはまらない。国際色豊かなのでデンマーク人が50%以上でもない。なので少なくとも現時点では補助金を受け取っていない学校だ。
更にここでは有償で働いている人はおらず、先生を含む全員がボランティアスタッフ。だからこそ、ここには情熱を持って働いている人しかいない。「Avnø Oasis」の理念に共感したボランティアスタッフと、コハウジングで暮らす人々、学ぶ人々、みんなで役割分担しながら暮らしを造っているのだ。
すべての問題は繋がっている。世界をより良くするためにこの場所が教えてくれること
「世の中には、環境問題、健康問題、経済、紛争など、色々な出来事が起こっているが、それらの問題はすべて繋がっているのでどれかひとつだけを取り出して解決しようとすることはできない」とクリスティアーネさんは言う。だからこそ、このエコビレッジでは包括的に、世界をより良くする取り組みを行っているのだ。
我々が今生きていく中で、幸せで健康的であること、そしてこの美しい地球環境を次の世代に残していくこと、平和な世界をつくること。それは難しいようで、もしかしたらとてもシンプルなことなのではないかと考えさせられる場所だった。