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【SDGs A to Z: P (Permaculture) 】パーマカルチャーに触れられる神奈川県藤野町が、移住した私にくれたもの。 (前編)
東京都内から車で1時間ほどの、都心に一番近い里山と呼ばれる神奈川県藤野町(現相模原市緑区)。パーマカルチャーに触れられるこの地へ移住した、文筆家・中村暁野さんの気付きとは?
後編はこちら
パーマカルチャーって?
環境に優しい循環型の社会を目指す、永続性(パーマネント)、文化(カルチャー)、農業(アグリカルチャー)を合わせた言葉。「田舎で自給自足」にとどまらず、人と自然が共生できる形を一人一人がデザインする。

中村暁野さん家族が、東京都内から藤野へ移住したのは約7年前。
「子どもも私も、都会での暮らしに息苦しさがあり、娘の小学校入学のタイミングで藤野に来ました」
住んでみれば「漠然と感じていた息苦しさの正体に気付けた」そう。
食べ物や使うものなどの消費の連続に疲れていたり、「迷惑をかけてはいけない」と常に緊張していたり。
「藤野に来て、そんな殻が破られました。自然や本来ある能力を観察してクリエイティブに生かす空気に満ちていて、心が軽くなったんです」
そう感じているのは、移住者仲間の室田恵実さんや青木ソロリオ美郷さんも。「藤野の人に共通するのは、違いを楽しめる多様性」と話す。楽しそうなことがあればどんどん乗っかり、それぞれが別の表現で面白がる。マルシェや作品展をしたり、歌ったり、踊ったり……プロだとかは関係なしに、一人一人が表現者だと気付かされたそうだ。
3人に藤野に来て感じている変化を聞くと、返ってきたのは「自分にも人にも優しくなれること」。
「藤野の人は、〝助けてコール〞が上手。交通手段がなく困っていると表明して、車で送ってくれる人を見つけたり、野菜を育てている人に季節の作物をおすそ分けしてもらったり。都会だと遠慮するお願いごとも、持ちつ持たれつ。○○してもらって〝ごめんなさい〞じゃなくて、〝ありがとう〞が連鎖しています」
くれたもの
#1 自然も人も生かす本質の大切さ。
地域や自宅で採れた野菜や野草へのありがたみから、それらを素材の魅力を生かす料理や保存食で無駄なくいただいて、恵みに感謝。「自然を目の当たりにし、人もありのままの個性を尊重したいと思うようになりました」
#2 気軽に人に頼っていい。感謝は次の人の手助けに。
藤野には、“お金”ではなく“心”が循環する地域通貨システムがあり、メーリングリストで困りごとと、それを助けたい人をつないでいる。「自分が助けてもらった感謝をバトンリレーしていくような、住民の助け合いです」
#3 挑戦のハードルは低く。何かを始められる空気。
表現者の多い空気感から「自分も何かできるかな」と、フットワーク軽く、成功目的ではない好きなことを始める人が多いそう。「人気のクラフトチョコレート屋さんやパン屋さんも、小さな手づくりから今に至ります」
#4 気楽に参加してもいいクリエイティブな場。
「コロナ禍前は、ほぼ毎週イベントがあり、飛び入り参加する方も」。ライブや食のイベント、季節のお祭りなどが、自然発生的な盛り上がりを見せるそう。都市部では分断されがちな心のつながりが、ここにはある。
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