ハナコラボSDGsレポート ありそうでなかった!環境に配慮した紙パックのナチュラルウォーター「HAVARY’S」
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第23回は、ライターとして活躍する五月女菜穂さんが、紙パックのナチュラルウォーター「HAVARY’S(ハバリーズ )」を取材。〈株式会社ハバリーズ〉の矢野玲美社長に話を伺いました。
1本の水から世界が変わるー
そんなキャッチコピーを掲げる、紙パックのナチュラルウォーター「HAVARY’S」。青いペガサスが描かれたおしゃれなパッケージは、おしゃれなだけではないんです。森林の環境保全に配慮しているという証であるFSC認証を取得した紙の包材を使用したり、1本につき1円を「世界自然保護基金」に寄付したり、送料無料のリサイクル回収BOXを用意したり。あらゆる観点からSDGs達成に向けて取り組んでいます。
そんな「HAVARY’S」に込めた思いを、〈株式会社ハバリーズ〉の矢野玲美社長(27)に伺いました。
ーー2020年6月に〈株式会社ハバリーズ〉を立ち上げられましたが、その背景を教えてください。
「元々ファミリービジネスとして、九州に水源を持ち、京都に本社をおくペットボトルのミネラルウォーターを製造するメーカーを営んでいました。私自身、企業としての責任や、SDGsにもつながる事業継承の問題を考えるなかで、このまま同じ事業を続けることに疑問を感じていて。環境配慮のアイテムを発信していきたいと第二創業として、あえて起業という形をとりました」。
ーーペットボトルの製造メーカーだったんですね。
「はい。皆さんご存知のように、脱プラスチックというムーブメントが世界中でどんどん加速していますよね。海洋汚染やマイクロプラスチックの問題がかなり深刻になってきているのにも関わらず、日本ではまだまだペットボトルを当たり前に使うカルチャーがあり、世界の中でも遅れをとっています。そこで、ありそうでなかった紙パックウォーターを開発し、新たなイノベーションを起こしていけたらと思ったんです」。
ーーファミリービジネスを継がれることは、元々決められていたのですか?
「そうですね。大学卒業後は、技術系の商社で中東を中心に往来しながらビジネスをしていましたが、いずれは事業に関われたらいいなと思っていました。みなさんは当たり前に考えてしまいがちなのですが、日本はたくさんの水源に恵まれており、世界の中ではとても水が豊かな国なんです。でも最近は、日本の貴重な水源が中国に買収されたり、枯渇したりしていて。何かしらのアクションを起こさないといけないと考えたことも背景にあります」。
ーーなるほど。矢野社長自身、SDGsに関心を持たれたのはいつ頃なんですか?きっかけがあれば教えてください。
「ドラスティックにインパクトのある経験をしたというよりも、グラデーションと表現した方が正しいと思います。私だけではないと思いますが、義務教育の中で環境問題や人権問題などは習っていましたし、身近に感じていました。SDGsは最近とても話題になっていますが、国連で採択されたのは2015年ですし、実はそんなに目新しくない。地球みんなの根本的な問題だと思っているので、いつからというのは具体的になく、頭の片隅にずっとあったんです。もちろん、水源を持って、自然の恩恵を受けながら事業を行ってきたこともあるとは思いますが」。
ーー紙パックのミネラルウォーターはありそうでなかったアイテムだと思いますが、どこから着想を得ましたか?
「商社で働いていたときに、水とは全く関係のない事業をしていたのですが、海外に行く機会が多くて。特にヨーロッパでは、紙パック水は徐々に広まっているんですね。当たり前すぎてそれまで気づかなかったのですが、日本に紙パック水はありそうでなかったかもしれない。ビジネスとしても展開できるのではないかと考えました。水源を持っている立場だからこそ、『日本の水源を守る』というコンセプトがあるなと。よく考えてみると、地方の過疎問題の解決や、日本の社会のジェンダーの問題にもつながっているところがあり、これはただのビジネスチャンスというより、色々なメッセージを発信できる立場に私自身がいるなと思いました」。
ーー様々な観点でお話いただきましたが、確かに水って人間にとって必要なものですし、全てにつながっていく気がします。
「そうなんです。水ってすごくシンプルなので、身近すぎて忘れてしまいがちなのですが、誰もが飲むもの。あらゆるシーンで普及していますし、飲み水以外でも生活のインフラとしても必要不可欠のものですよね。人間が生活していく上で、すごく基本的なところであるので、それこそSDGsの基本的な理念にかなり通ずるところがあるかと思います」。
ーー実際に「HAVARY’S」を開発するにあたり、1番苦労されたことはどんなことですか?
「私たちに限った話ではないと思いますが、コロナ禍まっただ中にローンチをしたこと。予定していたイベントがキャンセルになったり、ホテルや飲食店との契約が白紙になるなど、かなり影響を受けました。それでもなぜ2020年に起業したかというと、東京オリンピック・パラリンピックの前になんとかローンチをしたくて。海外のお客様は特にプラスチックごみ問題に関する意識が高いですし、ホテルなどに『ペットボトル以外の水はないのか』というニーズが寄せられていることも分かっていたので、それまでに商品を完成させたかったんです。また、国内初ということにもこだわりたかったので、コロナ禍で起業することにしました」。
ーーコロナの影響があったんですね。その他、商品自体の包材選びなどはスムーズにいかれたんですか?
「包材に関しても苦労はありました。紙パックと言っても色々な種類があります。水を充填してパッケージングするにあたって臭いの問題があり、特殊な包材を使用しなくてはいけませんでした。さらに、本当にエコフレンドリーな商品にするために、100%再生可能という点にこだわるなど、FSC認証を取得しているものを選びました。デザインやキャッチコピーだけが独り歩きするような商品だけは作りたくなかったので、包材に関しては、結構時間をかけました」。
ーー「HAVARY’S」の商品説明を読んでいると、もう全部盛りというか、本当に抜け目なくこだわっていらっしゃるなと思いました。最初からそこはブレずに進めていったんですね。
「そうですね。『世界自然保護基金』に寄付をしたり、送料無料のリサイクル回収BOXというリサイクルの回収スキームを構築したりと、付加価値をたくさんつけました。水の味の違いが分かる方は多くいないかもしれませんが、なぜ差別化をするのか考えたとき、そこに付加価値やストーリーがないと訴求効果も低いかなと思って。その辺りは最初からこだわっていました」。
ーーちなみに「HAVARY’S」というブランド名の由来は?
「大分県の『羽馬礼(はばれい)』という場所に第一水源があり、そこから名付けました。また、『羽』『馬』ということから、羽が生えた馬・ペガサスのデザインもここから来ています。水源を持つ立場で、日本の水源を守っていきたいですし、自然環境の整備をちゃんと取り組んで受け継いでいくというフィロソフィーを込めています。この名前にしたと祖母に伝えると大喜びしていましたね(笑)」
ーー少し意地悪な質問かもしれませんが、まだまだ日本はペットボトルで水を飲むというカルチャーがありますよね。そこを「HAVARY'S」という商品を持って変えていこうとする姿勢はとても素晴らしいと思います。一方でペットボトルの便利さもあり、なかなか変革が難しいのかなと。その辺り矢野社長はどのように考えていますか?
「経済性ももちろん大事なことなので、企業側としてはペットボトルやプラスチックの容器を使用して、コストを安く抑えようとしていると思うんです。でも世界の流れとしては、経済成長も大事ですが環境への取り組みこそ優先すべき必須課題なんです。環境配慮の方が優先順位が高い。消費者側はどうしても、安くて便利な方を選んでしまいがちです。もちろん個人として環境配慮を意識できる方はより良い選択をしてもらえると思いますが、やはり提供企業が路線を変えていかない限り、あまり根本な解決には繋がらない。そこは個人というよりも企業の努力が必要だと感じています。ESG投資も含めて、もう環境問題への取り組み自体が、企業の評価項目になっていますから」。
ーーその旗振り役にぜひなっていってほしいです。
「実際、元々ペットボトルの製造メーカーが家業だったので、プラスチックと紙とでは、原価が全然違うということは私たちが一番痛感しているところです。でも、レジ袋が有料化になったら、みなさんエコバックを持って買い物するのが自然になりつつありますよね。紙ストローもそう。そんな風に、社会の風潮として、『え、まだプラスチックなの?』と言われるような時期が必ず来ると思います」。
ーー最後に、今後のビジョンを教えてください。
「『HAVARY’S』の認知・拡大はもちろんですが、それ以上に“1本の水から世界が変わる”と謳っているように、SDGsの第一原則である『誰1人取り残さない』という前提を具現化しているアイテムとして、情報発信をしていきたいと思っています。コスメやファッションだとターゲットが絞られてしまうので、なかなかそのメッセージを具現化するのは難しいと思います。だけど水ってすごくシンプルに、どんな国籍でもジェンダーでも、シーンを選ばず手に取ることができる。その特性を生かすことができる究極のアイテムなんです。だからこそ、1人でも多くの方にメッセージを届けていけたらと思います」。