理想を追い求め、動き続けている人たちに聞く。 仕事、結婚…生き方を選ぶ。 #8/『同性カップルだからといって結婚・出産の夢を諦めたくない。』みち子さん&ぽっちさんの選択。
働き方に結婚、出産や自分の体について…、日々は選択の連続。突きつけられる選択肢に迷ったり、間違ったり、軌道修正をしながらも、自分の道を歩み続ける、わたしたちの話。「どこで」「誰と」「何をして」働くのが自分にとって心地よいのか。理想を追い求め、動き続けている人々の話。今回は、事実婚を宣言した同性カップル、みち子さん&ぽっちさんお話を伺いました。
事実婚を宣言したことで 将来がより具体的になった。
日本の法律上、同性同士は婚姻関係を結ぶことができない。そんななと認められる制度がある。現在、みち子さんは歳、ぽっちか、「私たち、結婚しました!」と高らかに叫んだレズビアンカップルがいる。YouTubeチャンネル『はぴLIFEチャンネル』を運営する、みち子さんとぽっちさんだ。報告動画のなかには、プロポーズの瞬間も収められていて、観ているこちらまで幸せな気持ちになる。だが、先にも述べたように、同性カップルは法律婚はもちろん、事実婚すら認められていない。そこで人が選んだのは、事実婚を“宣言”することだった。
「付き合った当初から、年経ったらプロポーズしようと決めていました。私自身は同性カップルは婚姻できないものだと思っていたので、正直結婚について考えていなかったのですが、ぽっちは結婚をして子どもを産むことが小さい頃からの夢だったんです。その夢が私と付き合うことで壊れてしまうのは違うと思いました」とみち子さんは話す。結婚を宣言したことで、いくつか変わったことがあったと言う。「一番は気持ちの部分が大きいですね。異性のカップルも同じだと思うんですが、付き合っている時は家を買おうとか、子どもをつくろうとは思わないですよね。そういうことが前向きに考えられるようになったのは、結婚というのを宣言したことが大きかったかな」
同性パートナーシップ証明制度は法的拘束力がない。
同性カップルが婚姻相当に値すると認められる制度がある。2015年に渋谷区と世田谷区を皮切りにスタートした「同性パートナーシップ証明制度」だ。現在は、全国50以上の自治体で導入され、これまでに1000組以上の同性カップルが証明書を受け取っているが、みち子さんとぽっちさんはこの制度を利用していない。「私たちが住んでいる自治体ではこの制度が適用されません。また、同性パートナーシップ証明制度には異性同士の法律婚のような法的拘束力がないんです。配偶者控除や遺族年金も受けられないですし、共同親権なども持つことができません。それに、証明したとしても、自治体ベースなので、住民票を移せばまたゼロに戻ってしまう。わざわざ住む場所を変えてまで、証明したいとは思えなかったんです」それでもこの先、引っ越すことがあって、その街に同性パートナーシップ証明制度があれば利用してみたいと言う。「世間的にも“同性婚に準ずるも”のとして認知されつつある制度なので、そういう面では魅力的ですね」
未来の子どものためにも同性婚が認められるのを待つ。
現在、みち子さんは29歳、ぽっちさんは27歳。お互い30歳までには第一子を設けたいと話す。だが不安もあるようだ。「もし不妊症だった場合、婚姻していないと不妊治療が受けられないんです。それに、子どもの親権もお互いのものになりません。また、私たちは精子バンクを利用するつもりなのですが、日本から利用できる精子バンクは選択肢がまだまだ限られているんです」とぽっちさん。子どもに関する事柄については、やはり制限やハードルを感じることが多い。「全員がどちらかの養子になり、家族となった場合、法律が変わって同性婚が認められた時に、籍を入れられない可能性もあるらしく…。私たちは、今後同性婚ができるようになるのを信じて待つつもりです」
今の日本の法制度では、まだまだ同性カップルの権利の保障が足りていない。そのなかで堂々と結婚を宣言し、“婦婦”として暮らす2人。「黙っているだけじゃ何も変わらないから、同性同士の結婚生活ってこんなに楽しいよと発信していきたい。結婚してよかった!」ととびきりの笑顔で話してくれた。
迷った時の支え…『Lの世界』 製作総指揮 アイリーン・チェイケン
ロサンゼルスを舞台に、レズビアンやバイセクシャルの女性たちの恋愛や人間関係を描いたテレビドラマシリーズ。「アメリカのテレビ史上初めてレズビアンをメインにした作品です。レズビアンをすごくポジティブに描いているので、観ていて元気になれます!」。各種配信サービスで配信中。
My decision
・結婚したいという気持ちを諦めない!
・お互いにとって何が大切かを見極める。
・将来に期待して待つというのも一つの手。
みち子さん&ぽっちさん
みち子さんは1991年、ぽっちさんは1993年生まれ。2019年、同性カップルとしての日常を紹介するYouTubeチャンネル『はぴLIFEチャンネル』を開始。同年には結婚を宣言した。
(Hanako1190号掲載/photo:MEGUMI, Tomo Ishiwatari, Andy Jackson, Keiko Nakajima, Naoto Date illustration:Manako Kuroneko text:Rie Hayashi, Mariko Uramoto, Makoto Tozuka, Miho Oashi, Rio Hirai edit:Rio Hirai)