ハナコと考えるSDGs 【「She is」プロデューサー】野村由芽さん・竹中万季さんのストーリー/「変わり続ける自分たちを認める。だからこそ一緒にいられる。」
最近よく耳にするようになったSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉。「持続可能な開発目標」と訳され、2030年までに“誰一人取り残さない”よりよい世界を目指して17の国際目標が掲げられています。それは政府や企業の頑張りだけでなく、私たちがもっと意識して毎日を“変えて”いくための課題でもあるのです。そこでハナコは、SDGsについて読者のみなさんと考える特集を企画しました。今回は“わたしらしく働く”ことをあきらめない、ウェブメディア「She is」で働く野村由芽さん・竹中万季さんのストーリーを紹介します。
「個人」と「社会」を繋ぐ存在であるために。
「ずっとこのままの働き方でいいの?」誰もがぶつかるその問いに真正面から向き合い、転職でも独立でもない形で自分たちの居場所を作り上げた人がいる。ウェブメディア「She is」の野村由芽さんと竹中万季さん。同じ会社で、苦楽を共にしてきた先輩・後輩の関係だった。「仕事に明け暮れていた30歳前後の頃、〝このくらいの年齢で結婚するのが普通〞といった社会通念を感じる機会が増えました。それで、これからの生き方や働き方について2人でよく話すようになったんです」(竹中)
「やがて〝年齢や性別を問わずその人らしい生き方ができる場所を作りたいね〞という話に発展して」(野村)2人は1年かけて準備をし、社長にプレゼン。「She is」という社内事業を立ち上げることとなる。1年という期間は予定したものではなく、必要なだけ時間をかけた結果だった。「仕事漬けの日々の中、土曜だけは未来を考える時間に充てました。その時間は余暇でもあり、かつ自分たちの人生と接続していることだったのですごく楽しかった」(竹中)
休日まで使って計画し、仲間も見つけながら、あえて社内事業としてスタートした理由はなんだったのか。「今、自分たちがやろうとしていることは、会社にとってもあった方がいいと直感的に感じていました。だからこそ、マネタイズについてもかなり慎重に考えましたね。社内の既存メディアに選択肢を増やすような形で、〝Members〞を募り、毎月ギフトを贈ったり、会員同士でコミュニケーションをとれる場所を作りました」(野村)「あとはできるだけ多くの人に新しい居場所を届けたいと考えた時、文化や芸術を軸にしてきた会社の基盤を活かせると思って。会社内で立ち上げたからこそ、これまで培ってきた繋がりも大切にしながら作っていくことができました」(竹中)
2人でうまくやっていくポイントは?と尋ねると、「なんでも話すこと、聞くこと」と返ってきた。「やっていくなかで関係はメンテナンスし続けないといけないと知りました。変化する姿勢がお互いにあれば一緒に居続けられます」(野村)「自分のしたいことだけではなく、その先にある社会への問いかけや、他者との結びつきを常に意識しているから変化するのかも。それらが形になった時、自分たちらしいことができていると感じます」(竹中)変化する自分と他者を認めること。互いに違うからこそ補い合い、高め合い、一緒に前に進んできた。共に歩んできたなかで身につけたしなやかさが背景にあるから、人が築いた「She is」という居場所に、多くの人が救われているのだろう。
【わたしが影響を受けたもの】『ザ・フューチャー』ミランダ・ジュライ
2人で話して、「人と人の出会い方」や「距離」について考え続けているミランダ・ジュライのことを、「She is」立ち上げの時のひとつの指針にしていました。チャットグループの名前も、ミランダ・ジュライの作品から引用しています。(DVD/角川書店/4,800円)
Profile/She is(しー・いず)
「自分らしく生きる女性を祝福する」がコンセプトのライフ&カルチャーコミュニティ。2017年9月、〈CINRA〉の新プロジェクトとして野村由芽・竹中万季の2人が立ち上げ、運営している。
■sheishere.jp/about
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について。
昨年、国際労働機関(ILO)が発表した日本における女性の管理職比率は、全世界平均27.1%に対してわずか12%。この国は女性にとってまだまだ働きにくい環境だといえます。今後、世界中が一丸となって、女性の力をもっと引き出せるような取り組みが進められていく中、私たちも自分の働き方についてポジティブに見つめ直す良い機会なのではないでしょうか。
Hanakoは“わたしらしく働く”ことをあきらめない、女性のストーリーを紹介します。
(Hanako1184号掲載/illustration:Nodoka Miyashita photo:Takehiro Goto , MEGUMI, Yoshiki Okamoto text:Makoto Tozukai, Rie Hayashi, Narumi Sasaki, Rio Hirai edit:Rio Hirai)