神々に守られた島、隠岐4島ツアーその1 【隠岐の島町】隠岐開拓神が鎮座する古代隠岐の中心地へ。
島根半島を離れること約50km、見渡す限りの海原にこつ然と緑の島影が姿を現す。日本海に浮かぶ隠岐(おき)には、大地の成り立ちを伝える絶景と、離島ならではの独自の生態系、古くから受け継がれる固有の文化が損なわれることなく息づいている。「開発」の2文字から縁遠いところにあり続けるこの場所が、今やどれほど貴重なことか。2013年、世界ジオパークに認定されたことを機に国際的な評価が高まり、旅の上級者の間で注目の的になりつつある。
外周150km、ほぼ円形の島は標高500mを超える峰が連なり、海上から遠望すると一面の緑。その森に蓄えられた水が島の各地で湧き出し、時に断崖を落ちる滝となり川となって海に注ぐ。その恵みを感じさせる場所に古代の島人は神を祀り、今に至るまで守り続けてきた。島を開拓した兄弟神を祀る玉若酢命(たまわかすのみこと)神社と水若酢(みずわかすみこと)神社、光り輝きながら流れ落ちる壇鏡(だんきょう)の滝を巡って感じたのは水の加護。どんなに淀んだ気持ちもまっさらに洗われて、潤いを取り戻せるにちがいない。
隠岐国造(おきのくにのみやつこ)の末裔が宮司を務める、島前島後の総社。
延喜式神名帳にも記載された、1000年以上の歴史を持つとされる古社で、御祭神は隠岐を開拓したと伝わる玉若酢命。かつて都から任命されて隠岐に赴いた国司は島々に点在する約300の神社を詣でるしきたりがあったが、ある時代から玉若酢命神社を総社とし、ここ1社ですべての神社に詣でたのと同じ効果を得られることに。社殿背後の丘には古墳群、社殿左手には湧水の池があるパワースポット。
〈玉若酢命神社〉
島根県隠岐郡隠岐の島町下西701
08512-2-7170
拝観料無料
小野篁が京都への帰還を祈った壇鏡の滝。
那久川上流の澄んだ流れを遡り、鬱蒼とした森へ。ほどなく現れたのは屏風のような岩壁と、光を受けて天から降ってくるような滝。落差50mの雄滝と落差40mの雌滝が左右に並んで懸かる。この滝で、嵯峨上皇の怒りを買って配流された眉目秀麗な貴公子・小野篁(おののたかむら)が2年間欠かさず禊(みそぎ)を行い、奇跡の帰京を果たした。滝の水は環境省の「名水百選」のひとつで、贅沢なことにも集落の水道にも利用されているのだとか。
〈壇鏡の滝〉
島根県隠岐郡隠岐の島町那久
08512-2-0787(隠岐の島町観光協会)
滝の間にある壇鏡神社の拝観料は無料
隠岐国一宮にして最高の格式を誇る水若酢神社。
御祭神は隠岐開拓神のひと柱、水若酢命(みずわかすのみこと)で、社格は出雲大社と同じ名神大社。ここで印象に残ったのは、境内に設けられた堂々たる土俵。聞けば、遷宮など大きな祝い事を機に行われる隠岐古典相撲の舞台なのだとか。この相撲では同じ相手との取り組みが2度行われ、必ず1勝1敗の結果に持ち込まれる。小さな島で互いに遺恨を残さず暮らすための智恵は今も健在なのだという。
〈水若酢神社〉
島根県隠岐郡隠岐の島町郡723
08512-5-2123
拝観料無料
奇岩の先端に夕陽が火を灯すローソクの岩へ。
隠岐の島町で見逃せないのが、夕暮れ時のローソク島遊覧船。小型船に乗り込んで日本海へ出航! 波間に揺られ、荒波の侵食でできた奇岩や洞窟、断崖に現れた地層を眺めながら、沖合にすっくと立つローソクのような形の島の近くへ。高さ約20mの岩の先端と夕陽が重なると、その姿は火を灯した蝋燭そのもの。船上でしか見られない絶景に思わずため息がこぼれる。
〈ローソク島〉
島根県隠岐郡隠岐の島町代
08512-2-0787(隠岐の島町観光協会)
3月15日~11月30日運行(出航時刻は日没に合わせて当日決定、要予約)
3,000円