仕事と子育てを両立する日々で小島聖さんが見つめ直した母子の関係。母から私、そして子どもへ。受け継ぐのは“当たり前のこと”前編。

MAMA 2023.04.05PR

子役として11歳でデビュー以降、数々のキャリアを重ね、現在は舞台を中心に活躍する俳優の小島聖さん。5歳の子を持つ母親でもある。2018年に上梓した初のエッセイ「野生のベリージャム」では、初めての妊娠、出産についても触れている。登山と出会い、自然に魅了された30代。そのきっかけは「父の死」だったとこのエッセイの冒頭で語る。「両親がつけてくれた聖という名は、南アルプスの聖岳から取った」ものだった。父の遺骨を前に「もっとコミュニケーション取っておけばよかった。もっと山に一緒に登っていれば」と思ったと続く。年齢を重ねることで、親との関係が変わることがある。今、小島さんは子育てを通して、母と子としての自分の関係も変わりつつあると感じているのだと、教えてくれた。

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自分自身が母親になって、はじめてわかった母のこと。

ーー今回のテーマは「母から受け継いだもの」です。この言葉を聞いて、まず小島さんはどんなことを考えられますか?

「母について考えるようになったのは、自分自身も母親になったことがとても大きいと思います。なんというか、いいことも悪いことも、それこそ受け継いでいるなって思うから。ひとりでいた頃は、母のこういうところがよくないとか、なんでこういうことを言うんだろうという不満の種みたいなものをずっと抱えていたんです。でも、子どもができて、気付いたら母に言われてイヤだなと思っていたことを私も同じようにやっていたりする。特に怒るときとかにね(笑)」

ーーすごく、わかります。子どものときはなんでこんなに「勉強しなさい」とか「片付けなさい」と言われるんだろうと思っていたけれど、いざ親の立場になると言わざるを得ないことに気づかされます。言いたいわけではないのですが。

「そうでしょう!主人が子どもと接するところをみていても、同じように感じるんですが、結局いいところもよくないと思っていたところも親から学んだことしか子どもには伝えられないんですよね。最近、つくづくそれを思います」

親は自分の合わせ鏡であることを、母になって知る。

ーー小島さんは、そういう気づきがあったとき、どう受け止められていますか?

「やっぱり、自分が窮屈だなと感じていたことを同じように言ってしまっていると感じたら反省はするようにしています。ああ、次からは言い方をもう少し気をつけようって。でも、きつく言われていたことが、今思い返すといいことだったなというのもたくさんあります。例えば箸の持ち方だとか。それは、厳しく言ってもらえてよかったことだから、私も同じように伝えていきたいなと思います」

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ーーその他に、お母さんに子どもの頃に言われて、今よかったなと感じているのはどういうことですか?

「本当に当たり前の、ささいなことばかりです。さっき言った箸の持ち方にはじまって、食べ方だとか、姿勢だとか。私は内股気味だったので、母は、いい姿勢を身につけさせたいとバレエ教室へ入れてくれた。それもその当時はいやだ、いやだと思っていました。でも、今になると通っていてよかったなと思います。子どもの頃はわからないんですよね。振り返って、この年齢になって、やっと気づくことです。だから、今は逆に私が言う立場で、子どもに“うるさいな”と思われているんだろうな、と思いながらも必死でやっています」

ーーそういう小島さんの率直な子育ての実感をお母様と話すことはありますか?

「つい先日のことですが、母が家にきていたときに子どもをきつく叱ってしまったんです。母がいることを気にしないで。そうしたら母に“あんな言い方をしていたら、私みたいになってしまうからやめなさい”って言われて思わず、笑ってしまいました。10代の頃、私は母への反抗心の塊でしたから。そんなギスギスとした母子関係になってはよくないと、自ら助言してくれたのがおかしくて。そんな話をあっけらかんとできるようになったのも子どもを持ってからです。不思議なもので、出産してから母との関係が変わりました。私も仕事をしていますし、子育てを母に頼らないと立ち行かないというところもあって。でも、子どもという共通言語ができたおかげでぐんと距離が縮まった、お互いの心がほぐれたと感じられたんです。それは、本当に子どもを持ってよかったことのひとつだなと感じています」

母が愛着を持っていたものを、忘れずにそばに置いておく。

ーー今回、お母様から受け継いだものをいくつかお持ちいただきました。

「母は出身が秋田なんです。これは、秋田の樺細工(かばざいく)という工芸品の丸茶盆と茶筒です。自分が成人をして一人暮らしをはじめるときに譲ってもらったもので、それ以来、大事に持っているものです。お盆は実家にあったもので、茶筒は私のために当時、買ってくれたものだったと記憶しています。若いころはそんなに興味がもてなくて、使わずにしまいこんでいたのですが年齢とともにいいなと思うようになって、最近は日常的に使っていますね。茶筒には日々飲んでいる三年番茶が今、入っています(笑)。

樺細工はヤマザクラなどの樹皮を使い作られる。樹皮特有の光沢を生かした、渋くて奥深な色合いが特徴。
樺細工はヤマザクラなどの樹皮を使い作られる。樹皮特有の光沢を生かした、渋くて奥深な色合いが特徴。
「実家にも樺細工のものがまだまだあります。お菓子をいれる菓子入れみたいなものとか。当たり前に使っているものでしたが、伝統工芸品ならではの錆びない良さを改めて感じています」
「実家にも樺細工のものがまだまだあります。お菓子をいれる菓子入れみたいなものとか。当たり前に使っているものでしたが、伝統工芸品ならではの錆びない良さを改めて感じています」

母は、若い頃に上京をしていて、秋田には親戚や友達はいるものの、もう生まれ育った家も残っていないです。それでも、やはり秋田という土地には愛着があるようです。秋田の工芸品を大事に、日々つかっている母をみているとその気持ちを私も受け継ぎたいなと思います。ものだけじゃなくて、新米の時期に出るきりたんぽを秋田から送ってくれたり…そういう食べ物の記憶も、場所が失われても繋いでいけるものだと思うんです。作り方を教えてもらったりもできるじゃないですか。そういうものを、ひとつ一つ忘れずに自分の中にも蓄積させていきたいです」

ーーもうひとつは、とてもかわいい腕時計です。

「これ、どこでどう手に入れたのかは、確かには覚えてないんです。でも、ずっとあるもの。特別に大事にしまいこんでいるわけじゃないんですが、引越しをしても、家を変えても、ずっと引き出しにいる(笑)。私が今の子どもくらいの年齢のときに親から買ってもらった腕時計だと思います。

ちょっとおしゃれをする時とかにつけていたんじゃないかな。これを今日選んだのは、親からもらって子どもに受け継げるものもいいな、と思ったから。子どもがそろそろ、時計が読めるようになる年齢なので譲ろうかなと思っています。手巻きの時計で動かなくなっていたんですが、街の時計屋さんに持って行って、最近直してもらったんです。気に入ってくれるといいんですけど」

小島聖さんに伺った母と子の話。後編では、「特別、子ども好きではなかった」自分のまま、母となった小島さんが向き合った子育ての日々や子どものためのもの選びについてお話を伺います。

(衣装クレジット)
ロングシャツ52,800円/ピースタイトスカート57,200円(ユーモレスク TEL:03-6452-6255)サファイアのネックレス55,000円/ナチュラルダイアのリング106,700円/イエローサファイアのリング106,700円/イエローサファイアのリング91,300円(モナカ ジュエリー|MONAKA jewellery 表参道 TEL:03-6434-7816)

photo : Keisuke Fukamizu styling : Reiko Ogino hair&make : Takeharu Kobayashi text & edit:Kana Umehara

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