読むなら各停でゆったりと。 さまざまな“旅”の本を集めました。 〈BUNDAN COFFEE & BEER〉の店主・草彅洋平さんがオススメ。旅のおともにぴったりな本5選
旅の途中で読みたい本から、帰路で手にしたい一冊まで。本を愛し、本のある暮らしをさまざまに提案する、ブックカフェ〈BUNDAN COFFEE & BEER〉を営む草彅洋平さんにセレクトしていただきました。
「旅と本って“渋いもの”という共通点が僕にはあります。」
地方に行くと、建物や食べ物まで昔ながらの渋さにあふれているじゃないですか。旅の目的は、それらを見るためということが多いでしょ。本も同じで、本離れが加速するいま“渋いコンテンツ”になりつつある。時代の移り変わりが激しい時だからこそ、昔の趣が残る場所を訪れたり、本に触れさまざまな渋い体験をしてほしい。そんな気持ちで、文学から漫画までパラパラッと読めるチョイスをしてみました。鈍行は特に、本を読むのには最高。行程がアクティブでも、乗っている間はゆっくり時間が流れますしね。
1.『女一匹シベリア鉄道の旅』/旅の情景をかわいく描いたコミックエッセイ
織田博子著。旅するイラストレーターである彼女が、念願のシベリア鉄道の旅へ。名所や出会った人々など、リアルな旅の様子をかわいらしいイラストで届ける。(イースト・プレス コミックエッセイの森/1,100円)
2.『最長片道切符の旅』/途中下車ブームを作ったのは彼かも。
宮脇俊三著。国鉄を全線完乗した著者が、移動距離が長くなるほど運賃が安くなる「一筆書き切符」を使って旅に出た際の話。「途中下車しながら、旅と仕事を繰り返す。正味34 日の旅です」(新潮文庫/670円)
3.『内田百閒集成 1 阿あほう房列車』/昭和の鉄道小説なら、この人!
内田百閒著。鉄道旅が好きだった著者の、さまざまな“用事のない旅”を綴った紀行文学。「夏目漱石門下。駅の描写や旅の視点もすごくいいんです。戦後の地方の良さを感じられるはず」(ちくま文庫/1,100円)
4.『世界しあわせ紀行』/旅をしながら、自分にとっての幸せを考える。
エリック・ワイナー著。不幸な国を取材してきたジャーナリストが幸せになるために必要なものを探る旅へ。10カ国を訪れ、各地の人々や風習などをユーモラスに紹介する。(ハヤカワ・ノンフィクション文庫/1,100円)
5.『古本屋台』/本好きの理想を描いたショートショート
久住昌之作、久住卓也画。ショート漫画の舞台は、神出鬼没の古本売り屋台。(飲み屋じゃなく本屋なので)騒がしい客はお断り、メニューは白波お湯割りのみ一人一杯までなどルールもユニーク。(集英社/1,200円)
紹介してくれたのは・・・
草彅洋平/くさなぎ・ようへい
1976年、東京生まれ。編集プロダクション〈株式会社東京ピストル〉代表取締役。ほか〈BUNDANCOFFEE & BEER〉を運営。昨年オープンした〈歌舞伎町ブックセンター〉のプロデュースも手がける。
(Hanako1160号掲載:photo : Chihiro Oshima text :Wako Kanashiro edit : Chiyo Sagae)