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花井悠希の朝パン日誌 vol.20 耳をすませば…?〈AOSAN〉と〈うぐいすと穀雨〉
今回で第20回目!各所で読んでるよって言ってもらうことも増え、嬉し恥ずかし嬉しく(嬉しさが圧勝)とうとう20回に突入です!
今回は、ヴァイオリ二ストらしく(?)音大の側にあるパン屋さんを選んでみました。というのも、小さい頃からクラシックを学んできた身とすると、音大のある街って少し背筋が伸びる感じがあるのです。地名を目にしただけでそこにある音大が浮かぶというか。シャンとした気持ちになるのであまり行かないのですが(たまにはシャンとして!笑)、先日〝いつか行きたい″貯金していた仙川にある「AOSAN」へ。合わせて、母校の東京音楽大学がある雑司が谷の「うぐいすと穀雨」にも行ってきました!
ギャップに惚れ惚れ…〈AOSAN〉
仙川といえば、素晴らしい音楽家の皆様を沢山輩出されている桐朋学園音楽大学がある街。「AOSAN」はその目と鼻の先にあります。商店街を抜け、落ち着いた住宅街に入ったところで、行列を見つけたらそこが目印。倉庫風な内装と陳列は、パン屋さんのイメージを超える無骨なかっこよさがあって、入店する前からトキめかせてくれます。
そしていざ入店してみると、木箱に入ったパン1つ1つの可愛らしいこと!このギャップにまずコロっとヤられます。ツヤツヤしていたりコロンとしていたりぷっくりふくれていたり。〝みんなちがって、みんないい。″そんなあまりにも有名なフレーズが心の中でリフレインしてしまったほど。みんなみんな素敵だよ!!って全パンに向かって、あぁ、伝えたい!!!
いかんいかん。昂ぶる気持ちをなだめて、魅力的なパン達と向き合って選びます。(選べない!と何度呟いたか…)どんどん焼けて、どんどんお客様が手に取っていくから、お店に並ぶパンはどれもほぼ焼きたて。ホッカホカです。せっかく焼きたてなのでお店の外のテラスで頂きました!朝パン、外パン編といきましょう。
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異彩を放つこのルックスに目が釘付けになったのはいうまでもありません。口に含めばシュンと溶けてしまう湿度の高い生地は、持ち上げる指の力だけでも形を変えてしまうほどふわふわ。
ほのかに甘く口溶けはシルキーで、その優しさに包まれるとすっかり夢心地です。
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手で裂けば、生地同士が離れたがらず、うにょーんとひく糸。あぁ、この糸引く部分にダイブ出来たらどれほど幸せか!(←本気)
上に贅沢に一本乗ったハーブソーセージは柔らかい皮のものだからパンに馴染む馴染む。バジルとマジョラムを効かせたハーブソーセージの香り高い肉汁がシルキーな生地に染み渡ってシズル感やばしです。あっという間にぺろりんちょ。

シナモンロールな顔をしたこの子はなんと、カレーパン。お子様も安心の、辛さが穏やかなカレーからは野菜の甘みを感じます。
モチモチとしてグニャりと手で形が変わってしまうほど柔らかな生地感は「ソシスハーブ」とも似ています。でもこちらの方が焼き目しっかりなのでよりカリッとしているかな。
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チーズとカレーの油分なのか内側がテカテカと艶を放ち、生地の柔らかさも携えての誘惑がすごい。その誘惑に1秒で負けて近づけば(弱っ)、カリッもちっトロッ。みんな大好き三食感が迎えてくれました。
もちっとして口に溶けていく生地の質感は、カレーライスよろしく相性抜群。カレーの主張は強すぎずゴーダチーズのコクと半々くらいの穏やかさで、主役はパン生地!なカレーパンでありました。
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もちろんお持ち帰りもしてスタンダードな朝パンも。パンと張りつめたバケット生地は、一口噛めばむっちり。噛みしめる度にむちむちと力強く歯を押し返しつつも歯切れはよくって、ほのかな酸味と相まってさっぱりとした印象があります。
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半分に切ってみれば露わになる贅沢に閉じ込められた黒豆たちは、お正月にみるソレより甘さ控えめで、とてもしっとりと炊かれています。豆のモサっと感は何処へやら、瑞々しくなめらかな黒豆に、驚きを隠せませんでした。お正月のよりおいしいよぉ。(小声)
パンを食べて黒豆の美味しさを教えられるなんて!みなさん気をつけて。黒豆パンね、って味の見当つけて食べたら、度肝ぬかれますよ!
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この子、よそ見したらちょこちょこって動き出すんじゃないかと期待したくなる、ジブリ的可愛さがあると思いませんか?勢いよく外の世界へ飛び出しちゃったチョコ生地も愛おしい。外側のフランスパン生地は、黒豆パンのにも似て歯切れよくあっさりしています。
でも一口食べて、ムムムっ!?
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なんと、外と中の生地が全く異なる食感なんです!中のチョコレート生地はきめ細やかで柔らかな、食パンのような生地。外の生地とは違う時間軸、違う速度の溶け方、違うリズムがあって、一体感はありつつもそれぞれの生地の個性を感じ取ることができます。
そしてその柔らかな生地の中からチェリーがチョコレートをトロリと纏って登場!そこにまたクリーミーな甘みのホワイトチョコレートも絡み合い、甘美なハーモニーを響かせます。実に仕掛けが多いパン!
いつか、並ばないと買えない「AOSAN」の角食も食べてみたい。"いつか”貯金がまた増えました(笑)。
静かなるパン…〈うぐいすと穀雨〉
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私が大学に通っていた頃にあったらなぁ。訪れる度にそう思ってしまいます。〈うぐいすと穀雨〉は静けさと落ち着きのある雰囲気が魅力的なパンとコーヒーのお店。
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カフェでゆっくりしたい所でしたが、この日はパンをお持ち帰りで。
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袋を開けた側から、ハーブの香りが鼻腔をくすぐって春のかおり。惜しむことなく混ぜられたハーブは生き生きとしていて、新緑の中を歩くような清々しい気持ちにさせてくれます。マイナスイオン出てます。(注:私調べ)
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もちっとというよりふんわり柔らかなタイプ。外側の皮は一見カリッと固い壁に見えますが、内側と馴染む柔らかさです。
フランスパンをベースにオリーブオイルが混ぜ込まれているので、さらにふわっと仕上がっているのだそう。ほのかに塩気を感じるから、スープやシチューとかと組み合わせて風味豊かな食事を楽しめそうです。
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もちっと、弾力のある生地。中はクリームチーズにこしあんが乗っています。だからまずはじめに舌に届くのは、クリームチーズのコクと酸味。そこからなだらかにこしあんの滑らかさと甘みに移行していくと、もちもちな生地も相まって大福のような和テイストに。上に散らした胡麻もいい和アクセント。
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持ち上げるとふるふると揺れるくらい保水力が抜群の食パン。しーっとりしているのにどしんと沈まず、しなやかでなめらか。いとも簡単に口内を泳ぎ、人魚のように尻尾をゆらゆら惑わして、喉へ滑っていきます。
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トーストすれば軽やかに弾み、しゅんと溶ける。甘さも塩気も何色にも染まれるくらいに、穏やかに構えているから、食べたことのある人はみんな思うでしょう。
"まいにち"食べたい食パン、ここにあり!
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歯に当たるカリッとした食感ににやり。このクッキーのようなカリッとがたまらないんですよね。スコーンってお店によって本当に性格が違う。もさって食感からほろほろ、サラサラ、んぐんぐ(!?)などなど。
これはザクザク!口腔に響くザックザックという音に、魂が鼓舞されるようでなんだか元気をもらえます。この音、自分がものっすごくワイルドになれたような気がするんですよね。(←気のせい)
まぁまぁ、と全粒粉の香ばしさで包まれると、大きく入ったチョコレートがほのかに酸味と苦味で本格派な顔を見せて、このチョコスコーンの懐の深さを見せてくれました。
たくさんの種類はないけど、丁寧に丁寧に作られたパン達は一つ一つにしっかりキャラクターがあってしみじみと美味しい。店内で過ごす時間もとっても素敵で美しいお店ですよ。