シンプルデザインを大きめサイズでまとう。 スタイリスト木村真紀による「ソロソロ、イイモノ。」Theme #9/ハンサムウォッチ
似合うものは決まってきたし、あふれるほど欲しいわけじゃない。心地がいい、具合がいい、気分がいい、品がいい。 いろんな意味でバランスの「イイモノ」に、少しの特別を添えて。
スタイリストを志す前、編集者として携わっていたのがメンズ雑誌。ラグジュアリー層と呼ばれる読者に向けて、食や旅、アートなど様々なジャンルのコンテンツづくりに熱中しました。そのおかげで詳しくなったアイテムの一つが腕時計。最初はぜんまいを動力とする機械式と電池で動くクオーツがあるということもわからなかった初心者でしたが、数百を超える部品から成る、複雑で工芸のような腕時計の存在を知り、顕微鏡を使ってその機構を正確に組み立てる職人の技の数々に感動しながら、その世界観に魅せられるようになりました。
その中でずっと気になっていたのがレディスウォッチのサイズとデザイン。特に日本人女性に向けた時計は、ケースと呼ばれる文字盤を囲う外装の大きさが30㎜以下の小ぶりのものが多く、文字盤には白蝶貝、インデックスにはダイヤモンドといった、“キラキラ”に装飾されたものが主流でした。小さくてかわいい、華やかなデザインも素敵なのですが、本格機械式メンズウォッチを数多く見る機会があったおかげですっかりハンサム顔が好みに。メンズウォッチのデザインはそのままに、サイズを少しだけアジャストした時計があったらいいのに、というのが長年の願いでした。
そんな中、うれしい流れが昨今のユニセックスブーム。男女両方に向けたメンズライクなケース径40・4㎜前後の小さめサイズが登場してきたのです。ケースが大きめの分、シンプルなデザインが洋服とも好相性。インデックスや針がスリムで、ケースもすっきりとしたものがオススメです。
値段は張りますが、長年愛用したくなるイイ時計を選ぶなら思い切って機械式を。しかも王道ではなく、信頼できる技術力と洗練されたデザインのブランドのモデルをセレクトすれば、ほどよい個性も演出できちゃいます。
シンプルクラシックな佇まいの中に光る本物の手仕事。
20代後半で出会い、30代後半になりその魅力を再認識しているセイコーウオッチの最上級ライン「グランドセイコー」。写真の「SBGW231」はクラシックなデザインと37.3㎜という絶妙なケース径が大人の腕をハンサムに飾る一本。丁寧に磨き上げたインデックスや針など、愛でるたびに本物を感じられる細工が随所に。
ミニマルさを追求したデザインを聡明ブルーでまとう。
20代前半で出会い、15年以上経った今なお魅力が褪せないIWCの「ポルトギーゼ」シリーズ。150年以上もの歴史がある同ブランドの中でも高い人気を誇るその魅力は、シンプルなアラビア数字やスリムなリーフ針といった無駄のないミニマルさ。写真の「ポルトギーゼ・オートマティック40」は40.4㎜という大きめなケース径ながら聡明なブルーがスタイリッシュ。