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映画監督・松居大悟さん、浪曲師・玉川太福さんなどサウナ好きが語る!「私のサウナエピソード」 #2
思いがけない人やモノ、異文化との出会いも、サウナの醍醐味。7人のサウナ好きに、初めて行ったサウナや、忘れられない体験などのエピソードを語る「私とサウナ」。今回は、イラストレーター・ほりゆりこさん、浪曲師・玉川太福さんなど4人の方にお話を伺いました。10月28日発売「正しく整う大人のリゾート 温泉&サウナ」特集よりお届け。
こばやしあやなさん「キルギスのユニークなサウナサロン文化」
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私の目線で面白いなあと思ったのは、中央アジアのキルギス共和国のサウナ。5、6年前に行ったのですが、一見娯楽施設などがなさそうな小さな村に行っても、みんなが集まる場所にサウナ室とキッチン付き談話室が作ってあり、サロンのようになっているんです。キルギスは多民族国家だから、外では服を脱げない宗教の人も多いのですが、サウナでは男女それぞれ集まって裸でサウナに入るんですね。談話室は、みんなで和やかにお茶ができる場所になっていて、サウナがコミュニティの場になっていることがすごく興味深かったです。サウナ自体は水をかけるタイプのオーソドックスなサウナで、石炭で温めていたのが印象的でした。
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サウナ文化研究家・こばやしあやな(サウナ歴17年)
2011年フィンランドに移住し、在住コーディネーター、ライター、通訳・翻訳者として活動を開始する。近著に『クリエイティブサウナの国ニッポン』(学芸出版社)。
ほりゆりこさん「サウナのおかげで生まれた、素晴らしい出会い」
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サウナの魅力は、素晴らしい出会いをもたらしてくれるところ! 2016年から全国様々な場所で「Tent Sauna Party」という、モバイルサウナを使ったイベントを行っており、2018年に直島に3日間滞在した時は、島の人たちがサウナのお礼にと毎日食事とワインを提供してくれました。その交流はもちろん今も続いていて、そこからはじまった繋がりもあります。サウナでの出会いは太く広いなあといつも思います。
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イラストレーター・ほりゆりこ(サウナ歴11年)
京都精華大学美術学部卒業。2018年よりイラストレーターとして活動を開始。著書にマンガ家タナカカツキとの共著『はじめてのサウナ』(リトルモア)がある。
玉川太福さん「「サウナの口」になってしまい、北海道へ!」
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20年来の銭湯通い。日本一のサウナ激戦区・上野の近くに住んでいることもあり、そのうち湯船に浸からずサウナに入るようになってました。サウナは疲労バツグン回復・心身スコブル健康・商売ボチボチ繁盛・家庭マアマア円満、といいことだらけ。今年1月下旬にちょうど北海道の富良野の仕事が入ったため「これはサウナの聖地・吹上温泉〈白銀荘〉に行ける!」と喜んでいたら、コロナ禍で仕事が中止に。しかし「サウナの口」(カレーの口、みたいな)を抑えられず、妻子を連れてコロナ禍が落ち着いた頃にサウナ旅行を敢行! 水風呂代わりに雪ダイブしたのはもちろん、すべての景色が幻想的で、今でも思い出すたびにヨダレが垂れます。
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浪曲師・玉川太福(サウナ歴5年)
たまがわ・だいふく/2007年に二代目玉川福太郎に入門、2013年11月に名披露目。日本浪曲協会と落語芸術協会に所属し、近年では落語家・講談師との共演も。
松居大悟さん「へこんだ体に空気を入れてくれる場所」
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何もしたくないけど、何かはしたい。そんな時はテレビもネットも頭に入ってこない。今日は仕事で嫌なことがあって、誰かに話して発散するような気分にもならなくて、でも何も予定はなくて。しかし、へこんだ体に空気を入れてくれるのがサウナだ。ひたすらに遠出して、〈綱島源泉 湯けむりの庄〉に向かう。サウナでだけは自分が主役。自分のためだけの時間、自分と向き合う時間。ここは風呂が水風呂も含めてすべて真っ黒なので、心の闇を、静けさと黒さで曖昧にしてくれる。サウナに入ってると、不思議とアンガーマネジメントのすごいバージョンみたいに、すうっと怒りが汗で流れて、へこんだ心は外気浴の深呼吸で丸く膨らんでいく。体重計に乗ると、2キロ減っていてさらにうれしい。会計した後に、受付の方に「ラジオ聞いてます」と言われた。水曜深夜2時のラジオだというのに。なんだか気分が丸くなって、いい一日になった。去り際まで完璧だなんて。
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映画監督・松居大悟(サウナ歴10年)
まつい・だいご/劇団ゴジゲン主宰。2012年に長編映画初監督作『アフロ田中』が公開。近作に映画『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』『手』など。