鎌倉びいきが教える鎌倉の答え 小説家・小川糸さんと鎌倉。/小説「ツバキ文具店」は鎌倉散歩の参考書。

TRAVEL 2022.07.05

毎月数日は鎌倉で過ごすという小説家・小川糸さん。町の住人やお店に注ぐ眼差しは温かく、愛にあふれる。訪れるたびに新発見があるという町の魅力について聞く。

「ツバキ文具店」とは

ツバキ文具店の主人ポッポちゃんと鎌倉の人々との物語。舞台となるカフェやカレー屋さんなど、筆者が鎌倉を歩いて見つけ出した場所ばかりが登場し、読者は実在と物語が入り混じる。暮らしと季節がやさしく綴られている。

小説「ツバキ文具店」は鎌倉散歩の参考書。

レンバイにある〈はな〉。レンバイに来たときに、お団子や太巻きを購入する、普段使いの店。〈パラダイスアレイ〉の向かい側。
レンバイにある〈はな〉。レンバイに来たときに、お団子や太巻きを購入する、普段使いの店。〈パラダイスアレイ〉の向かい側。

小川糸さんの小説「ツバキ文具店」は、鎌倉の代書屋、ポッポちゃんのお話。チャーミングだったり、ひとクセふたクセあったり、困ったちゃんであったり、といった愛すべき登場人物が織りなす物語が、鎌倉を舞台にキラキラと綴られていく。読者にとって何よりうれしいのは、お話に出てくるお店や場所が実在することだ。だから、ポッポちゃんやお隣のバーバラ婦人になった気持ちで、鎌倉散歩が楽しめたりもする。『ツバキ文具店の鎌倉案内』(幻冬舎刊)なんて文庫本まで出ちゃってるから、聖地巡礼のように、本を手に鎌倉巡りをする人も多い。

小川さんがうれしかったのは、鎌倉駅そばにある鎌倉総合案内所に、「すみません、ツバキ文具店はどこにあるんでしょうか」と、尋ねてくる人がいることだ。いかに、この町になじんでいるかという証しである。作者にとっては、この上ない喜びだろう。「長く温めていた、この物語の構想がまとまったとき、核となる代書屋がある町は、鎌倉が一番しっくりくると思ったんです」

1. 3部作が同時に揃う。〈島森書店 鎌倉本店〉/小町
地元の書店として多くの人に100年余り愛されている。入口を入ったところにロングセラー「ツバキ文具店」の3部作が常に置かれている。
■神奈川県鎌倉市小町1-9-3
■0467-22-0266
■9:30~20:00無休

2.料理人も野菜を買いに来る。〈鎌倉市農協連即売所〉/若宮大路
「レンバイ」の名前で親しまれている。23軒の農家が4班に分かれてお店を構え野菜を販売。レストラン関係者も注目。カフェなどもお店を構える。
■神奈川県鎌倉市小町1-13-10
■8:00~野菜がなくなり次第終了

3.駅近のサンクチュアリ。〈古我邸〉/扇ガ谷
築100年余の邸宅をレストランに改造(P.68参照)。木々や花々に囲まれる。裏庭にはカフェが設けられている。
■神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-7-23
■0467-22-2011
■11:00~15:00、17:00~21:00(レストラン)火、第1・3水休

4.新緑のアーチを見に行く。〈段葛(だんかずら)〉/若宮大路
鶴岡八幡宮への参道である若宮大路は源頼朝が妻・政子の安産のために、鶴岡八幡宮から由比ヶ浜まで造らせたもの。二ノ鳥居から中央に一段高く造られた参道が「段葛」と呼ばれる。桜の季節には桜のアーチができる。

Profile…小川 糸(おがわ・いと)

1973年、山形県生まれ。2008年のデビュー作『食堂かたつむり』は英、韓、中、伊、仏語などに翻訳され、海外の文学賞も受賞。神奈川新聞に再び、「ツバキ文具店」シリーズの続編を連載している。

(Hanako特別編集『鎌倉びいきが教える鎌倉の答え。』/photo : Norio Kidera text : Michiko Watanabe)

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