JICA海外協力隊×Hanako:私の“気づき”と新しいモノやコト。 エジプトに〝手工芸隊員〞として派遣された田原彩さんの場合
JICA海外協力隊で活動した田原彩さん
参加したきっかけや、現地で得た“気づき”について話を聞いた。
RESULT!:伝統柄の布を新たな商品に。仕事での経験が役立った。
予想しなかった力が現地で役立ちました
エジプトに〝手工芸隊員〞として派遣された田原彩さん。今年1月から再びエジプトで活動することを決意。彼女を駆り立てるものとは。
田原さんが海外協力隊を知ったのは高校生のとき。家庭科の先生が雑談の一つとして話した、海外協力隊に参加したエピソードが心に残っていた。「でも実際すぐに行動に移すということはなく、興味のあったモノづくりの道に進みました」(田原さん、以下同)
大学では被服を学び、印刷会社勤務、家庭科の非常勤講師、メーカーに勤務しカタログをディレクションするなどさまざまな職を経験。そのうちに妹が協力隊に合格し、頭の片隅にあった想いが芽吹いた。「妹に職種の説明などを受けるうち、自分も何かできるのではとイメージが湧くように。それまでは、協力隊=井戸を掘るという印象が強かったのですが、被服の勉強や家庭科教師としての経験があったので、手工芸の分野でならと思って応募しました。でも実際役立ったのは、働き出してからのディレクション能力で」
田原さんの前任者が現地の人と一緒に作っていたハーヤメーヤのトートバッグは、当時は受託製作で、販売するにも品質がもう一歩だった。そこで、試行錯誤の末、売れるクオリティに。「ハーヤメーヤはエジプトの伝統工芸の一つで、ハスや幾何学模様がアップリケで鮮やかに表現された布。この柄をプリントしたハーヤメーヤ柄の布が、現地ではラマダン時にテントやスーパーに飾られています。バッグやポーチなら、私たちのような外国人にウケがいいかと思ったんです」。注文書なども管理ができるように工夫した。「技術向上の支援をするうちに技術力の低さを痛感し、自分も教える前に学びたいと思いました。そこで、より求められていた、商品価値を上げたり、販売する場所を時には飛び込み営業で探したりと、ディレクター業にシフト。事前に決めた活動内容が変わっても大丈夫なんですよ」
帰国して、技術を身につけるために染織を勉強。「コロナ下で染織の勉強を始め、エジプトの羊の毛から糸を紡ぎ、絨毯を作って現地の女性たちの雇用にもつなげたいという新たな目標ができました。いつかは現地で立ち上げたブランド〈OSRMONTEJA〉でハーヤメーヤのグッズと一緒に販売したい」。コロナ下には、貧困に陥ったエジプト人を支援するための農園設立へ向けたクラウドファンディングも行った田原さん。「遠い日本からではなく、現地で彼らに寄り添いたい」と、エジプトに再び旅立った。