それぞれのやりがいや思いをインタビュー。 「宇宙まわり」で働く女性たち。/ANAホールディングス 宇宙事業チーム・松本紋子さん
一見、男性ばかりなのでは?という印象を持たれがちな宇宙業界。実は多くの女性たちが生き生きと活躍しているという。宇宙にまつわる仕事をしている方の、やりがいや思いとは?今回は、ANAホールディングス 宇宙事業チーム・松本紋子さんにお話を伺いました。12月25日(土)発売Hanako1204号「幸せをよぶ、神社とお寺。」よりお届けします。
飛行機への熱い思いが、宇宙への扉を開いてくれた。
航空会社〈全日本空輸〉を擁する〈ANAホールディングス〉で、宇宙事業を先導する松本紋子さん。「実は宇宙が大好きというわけではないんです」と打ち明けた彼女が、この事業に従事するようになったのは、「より安全に飛行機を飛ばしたい」という思いがあったから。
入社してすぐ配属されたのは、主にパイロットの飛行計画を練る運航支援の仕事。天気図を読み、どのルート、どの高度で飛ぶのが安全でエネルギー効率がいいかを考える仕事だ。羽田、成田、北京で運航支援を行う中で運航管理者の国家資格を取り、運航計画も作れるように。「大学では流体力学の勉強をしていて、翼の周りの空気の流れには興味がありました。飛行機が安全に飛ぶにはどうしたらいいか、考え続けています」
その後6年間は、パイロットのマニュアルを作る仕事に。各国の空港ごとに異なるルールをパイロットに共有するためだ。そのうちに、「衛星を使って、最適な飛行航路を見つけたい」と思い立つ。これを内閣府のビジネスアイデアコンテストに応募すると、見事大賞を受賞。その後すぐ、同年の2018年1月から開始したANAの宇宙事業化プロジェクトに専任として参加。
「飛行機をより安全に運航するために、宇宙を役立てる。」
最初は2人の専任担当から始まったチームだったが、2021年からはプロジェクトから事業チームに格上げ。より本格的な業務に就くことになった。
現在は、衛星データと飛行機が運航中に集めたデータを活用し、温室効果ガス観測や乱気流予測などの実現に向けて進んでいる。たとえば、これまで風のデータは気象衛星ひまわりから送られてくる2次元の情報しかなかった。衛星から3次元の風予測ができれば、より安全で正確な飛行計画が組めるかもしれない。
「最初の10年の運航支援業務がなければ、宇宙や衛星に目を向けることはなかったと思います。宇宙関連の仕事に就くとは予想もしませんでしたが、飛行機がとても親和性の高い分野だというのは発見でした」
飛行機の中は宇宙船内と環境が似ているともよくいわれる。「〈ポーラ・オルビスグループ〉と取り組む『CosmoSkin』プロジェクトでは、宇宙で使える化粧品を開発中です。実証実験には客室乗務員に協力してもらっていますが、地上でも水が使えない災害時などに需要があるかと」。発売は2023年を目指しているという。ほか、小型衛星打ち上げや有人宇宙飛行など事業は広範囲に及ぶ。「社内でも、もっとチームを広げていければいいなと思います」
飛行機と宇宙をつなげるヒントになる松本さんの参考図書。
宇宙法入門書などの専門書に加え、立花隆の『宇宙からの帰還』、JAXAの機関紙『JAXA’s』を愛読。日向なつおの漫画『宇宙めし!』にはANAが登場するストーリーも。
Profile…松本紋子(まつもと・あやこ)
ANAホールディングス グループ経営戦略室 事業推進部 宇宙事業チーム所属。同社の宇宙事業のほとんどを管轄。
【BIOGRAPHY】
2008 ANAホールディングス入社。
2008-2009 ANA東京空港支店にて運航支援業務に従事。
2010 ANA成田空港支店にて運航支援業務に従事。
2011 ANA北京空港支店にて運航支援業務に従事。
2012-2017 ANAオペレーションサポートセンターフライトオペレーション推進部にて運航基準業務に従事。
2018-2020 ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボにて宇宙事業専任担当。
2021 ANAホールディングス グループ経営戦略室事業推進部 宇宙事業チームに。