斉藤貴之シェフの魅力を詰め込んだ新ブランド〈Saito〉も同エリア内で展開! フレンチをベースに世界各国の料理のエッセンスが楽しめる白金高輪〈オルタナティヴ〉へ。
フレンチをベースに世界各国の料理のエッセンスが楽しめる〈オルタナティヴ〉が、2021年9月28日(火)西麻布から築50年近くの歴史がある白金高輪の町工場跡地に移転。同ブランドの世界観をより味わえる空間にて、当日の仕入れに応じて7皿前後で構成されるディナーコース「Collection “Alternative”」をいただいてきました。
大人のファミレスがコンセプトの〈オルタナティヴ〉。完全紹介制のレストランも立ち上げ。
2016年、フレンチをベースに和食・中華・ロシア料理など世界各国の料理を振る舞う「大人のファミレス」をコンセプトに西麻布にオープンした〈オルタナティヴ〉。
オーナーシェフの斉藤貴之氏は、神戸の〈御影ジュエンヌ〉、〈ラ・ブランシュ〉で腕を振るったあと渡仏し、一ツ星〈ル ベナトン〉、二ツ星〈プティ サン ジャン〉で修業を重ね、帰国後に〈ラール・エ・ラ・マニエール〉〈プロヴィナージュ〉でシェフを務めた人物です。
そんな〈オルタナティヴ〉が移転先に選んだのは、東京メトロ日比谷線 「広尾駅」から徒歩15分、東京メトロ南北線「白金高輪駅」から徒歩13分ほどの白金高輪エリア。
住民から「ブリキ通り」と呼ばれるバスの通り沿いに数々のレストランが点在している一方で、〈オルタナティヴ〉が立地するのは、幹線道路がなく、どこかノスタルジーを感じさせる下町風情で静かな場所です。
今回選ばれた物件も、クレーンゲームの部品を作っていたという町工場の跡地。間取りも28坪という広さであったため、斎藤氏は〈オルタナティヴ〉という世界観を一から作れる場であると確信し、移転を決意したそう。
設計を担当したのは「社食堂」「BIRD BATH & KIOSK」「絶景不動産」「21世紀工務店」などで知られる、谷尻誠、吉田愛率いる建築設計事務所のSUPPOSE DESIGN OFFICE。
設計にあたり谷尻氏と吉田氏は「オルタナティヴには、もう一つの選択という意味もあるため、既存空間に手を入れることなく、その中に新しい空間をつくり、新旧のコントラストを作ることで、新しい空間の化学反応を起こしています。もともとあったものと、新しく作ったものの関係、つまり現代のファッションに古着を合わせたような、この場所ならではの作り方を目指しました」とこだわりを明かしています。
また、 店舗の移転に伴い斉藤シェフが掲げる「フランス料理の本質は自由であること」を遺憾なく体現する新ブランドとして〈Saito〉を立ち上げ、 同エリア内のカウンター席にて展開。選び抜いた究極の食材を用いて、世界各国の料理のエッセンスと斉藤シェフのこれまでの経験を詰め込んだ7皿前後のスペシャルコース(22,000円〜27,000円。別途サービス料10%)を提供しています。
フレンチなのに、中華やエスニック、和の要素も満載な〈オルタナティヴ〉のディナーコース。
〈オルタナティヴ〉のディナーコース(9,900円、別途サービス料10%)は、シェフが当日の仕入れに応じて7皿前後の構成で提供します。フレンチをベースに和食・中華・ロシア料理など世界各国の料理のエッセンスを感じられ、まるで世界を旅する気分を味わえるラインナップが特徴です。
この日の一品目は「甘鯛のラクサ」。シンガポールやマレーシアなどで親しまれている、ココナッツミルク入りのスパイシーヌードルのアレンジです。スープは、鶏出汁や貝出汁に生姜やニンニク、セロリを煮込み、トマトや酢で味を整え煮詰め、タマリンドや発酵唐辛子を加え、ココナッツミルクの代わりに生クリームを加え、最後にテンパリングをした香り高いニンニクと生姜を加えたオリジナル。
そこに若狭湾産の甘鯛の鱗焼がトッピングされているのですが、こちらがラクサにトッピングされている揚げ煎餅を思わせます。そして麺は葛粉のそうめんで、後味さっぱり爽やか。一口サイズの小さなポーションなので、前菜としてちょうど良いボリュームです。「冬なのでまず温かいもので体を暖めてもらいたい」というシェフの心遣いが表れています。
この日は二品目もエスニックな「ヤリイカとギアラのグリーンカレー」。青森県産のヤリイカに牛の臓物・ギアラ、ボイルしてカットしニンニクやクミンなどを合わせたインゲンなどの具材に、ココナッツミルクに鶏出汁、こぶみかんの葉やレモングラス、生姜などを合わせたグリーンカレーを泡立てて回しかけて、最後にアクセントでレモンジャムを添えています。
ヤリイカは片面だけ火入れされているので内側はねっとりとレアな仕上がり。スパイシーすぎないグリーンカレーですが、素材のうま味がしっかりと出ています。ライスの代わりにクスクスが入っているところにも、前菜として楽しんでほしいというシェフの想いを感じました。
二品温かい料理が続いた後は「お口直しのイメージで」ということで、三品目は器も涼やかで料理もひんやり冷たい「真鱈の白子」。カリフラワーのムースに、北海道産の白子、その上にサフランとセルフィーユとエストラゴンというハーブの香りのジュレを合わせています。アクセントにトマトのコンソメや柚子胡椒、ビネガーで味付けしたみじん切りのエシャロットを忍ばせており、白子ポン酢を再構築したような料理でした。
四品目は、これまた驚きのビジュアルで登場。こちらは千葉県産の無農薬レンコンに蓮の葉を巻き、水と小麦粉を混ぜ合わせた生地で包み込み、230度のオーブンで1時間、100度で30分〜1時間火入れしたもの。焼き上がったら割り、中からレンコンを取り出してカットされ提供されました。
包み焼きされたことで、レンコンなのに蒸したジャガイモのようにホックリとした食感で、サツマイモのようにねっとりとした甘さで驚きです。シンプルに食材の素晴らしさを引き出す独特の調理法が光ります。添えられた塩と大徳寺納豆のパウダーを添えて、味を変えつついただきました。
五品目はついに王道のフランス料理「千代幻豚のブレゼ」が登場。長野県産の千代幻豚の肩ロースを白ワインなどを入れて煮込み、ニンニクやセロリ、玉ねぎ、ビネガー、白ワイン、鶏出汁などを入れて蓋をして弱火で1時間ほど煮込み、鶏のフォンを入れて仕上げています。最後に根セロリと塩コショウをふりかけて完成。
しっかりと味わい深いソースに、筋も解けるようにやわらかくなった肩ロースが、ワインを誘います。ココット一つで仕上げるブレゼは、派手さはないものの料理人の腕が問われるフランス料理。メインに来て、フレンチの名店で修業を積んできた斉藤シェフの力量の高さをしみじみと感じました。
最後は〆の料理かデザートの選択制。私は同店で人気だという坦々麺を選んでみました。そう、フレンチなのに〆は中華なんです。
鶏出汁をベースに乾燥したシイタケや鰹出汁を入れ、ゴマやニンニク、醤油を加えて煮込み、中太麺と自家製ラー油を回しかけ、最後に炒ったゴマをすり入れ、小口ネギをトッピングしています。自家製ラー油はジャンたっぷりで山椒もしっかりときいていて、シビレ好きにはたまりません。西麻布時代から多くのファンを虜にしてきたという坦々麺は、専門店も顔負けのおいしさでした。
「型にはまらない自由な店、お客様にとって“おもろい”店でありたい」そんな思いを込め、フランス料理の技術をベースに、日本料理や中国料理などの異分野のエッセンスも取り込んだ唯一無二の“斉藤料理”。未知なる食の旅に、出かけてみてはいかがでしょうか?
〈Alternative(オルタナティヴ)〉
■東京都港区白金 5-12-24 T-building 1F
■03-5422-7551
■18:00〜22:00
■日、不定期に4日間休
■公式サイト