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連載「拝啓、〈星〉へいらっしゃいませんか?」/第8回 シンガポール人が愛する「カヤトースト」とは?名店4軒食べ比べ。【元ハナコのシンガポール書簡】
第8回はシンガポールの甘い朝食、カヤトーストにフィーチャー。サクサクのトーストに、カヤジャムとバターをはさんだ、甘くてしょっぱい、止まらない味をご紹介。
新年を迎えたばかりと思っていたのに、もう1月も終わりなんですね。だいぶ遅くなりましたが、あけましておめでとうございました。
シンガポールは多国籍民族国家のため、宗教や人種によってお正月が異なり、新年を迎えるタイミングが年4回あります。日本でも馴染みの1月1日NewYear’sdayのほか、旧正月のChinese New Year,イスラム教徒のHari Raya Puasa、ヒンドゥー教徒のDeepavali。中華系が多いので旧正月がもっとも盛大で、今年は2月16日に訪れるため、チャイナタウン近辺を中心に、今まさに街中は祝いの色である赤で彩られ、華やかになっています。
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シンガポール生活も1年をこえ、慣れてきたなあと感じるのですが、「わたしってばローカルっぽい!」と強く感じる瞬間があります。それは、朝、ローカル系のコーヒーショップでコピC(エバミルク入りの甘いコーヒー)をすすりながら、お醤油をかけた温泉卵にカヤトーストをつけて、甘じょっぱい❤を堪能している時。
シンガポール人が愛する甘いもの
カヤトーストとは、カヤジャムを塗ったトーストのこと。そしてカヤジャムは、ココナッツミルク・全卵・砂糖を混ぜて煮詰めた、マレー半島で親しまれているジャムのことです。東南アジア風カスタードといったところでしょうか。シンガポールでは、パンダンリーフというハーブを用いて香りと色づけしているので、ペーストが黄色ではなく緑色なのが特長です。1900年代初頭に海南人によってもたらされたと言われています。
チェーン店も多く、街中の至るところで食べられるのですが、個人的なおすすめ店をご紹介しますね。
まずはオーソドックスな薄切りパンの名店へ
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カヤトーストのパンは、薄切りにされていることがほとんど。これをカリカリに焼いて食感を楽しむのです。
薄切り系の店でイチオシなのが1939年創業の「Tong Ah Eating House」の「Crispy Thin Toast Kaya」。
約5mm厚の薄切りパンが炭火でしっかりめにトーストされていて、パンの香ばしさとカヤの甘さ、バターの塩気が絶妙に絡み合います。
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ディップ用の温泉卵は、立派なLサイズ。新鮮なので、パンに付けきれなかったらそのままいただいても美味。
【Tong Ah Eating House】
■住所:35 Keong Saik Road Singapore 089143
■アクセス:MRTチャイナタウン駅より徒歩8分
■営業時間:7:00〜22:00
■定休日:不定休
約3cmの厚切り2枚を使用
パンは厚切りの方が好き、という厚切り派にお薦めなのは「YY KAFEI DIAN」。
使用するパンは、カヤトースト用に毎日店で焼成。ふっくら焼きあがった山型パンを約3cmに切り分け、2枚で挟みます。厚みはあるものの、空気のように軽い食感なので、1個ならあっという間にペロリ。ここのカヤジャムは茶色くキャラメリゼしてあり、ジャム自体も香ばしい。
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ちなみに同店、昼時は近隣のオフィスワーカーでごった返します。レジでオーダーすると「席を取って、座って待ってて」と言われるものの、番号札のようなものを渡されるわけではないので、オーダーした人物と提供先を覚えていられるのかな? と毎度不安になるのですが、間違いなく届きます。スタッフの記憶力がいいのか何なのか。提供システム、どうなっているんでしょう。
【YY KAFEI DIAN】
■住所:37 Beach Road, #01-01 Singapore 189678
■アクセス:MRTブギス駅より徒歩8分
■営業時間:7:30(土日8:00)〜21:30
■定休日:不定休
■URL:https://www.facebook.com/yykafeidian/
丸パンを使ったカヤバンにも挑戦を
丸パンを使用する店もあります。シンガポールの昔ながらのプラナカン文化が残るカトン地区に位置し、クラシックな建物が可愛い「Chin Mee Chin Confectionery」です。
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カスタードパフやフルーツケーキなど焼き菓子を販売するほか、カヤトーストもあります(ローカルの人は、こういった丸い形状のパンは「バン」と呼ぶため、「カヤバン」と表現する人も)。
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小麦の香りが強い丸パンに負けない、カヤジャムのパンダンリーフの香り。鼻に抜ける香りが楽しい逸品です。昼が近づくと観光客で混雑するため、ここで朝食をとってからカトン地区を散策する順番がベター。
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【Chin Mee Chin Confectionery】
■住所:204 East Coast Road Singapore 428903
■アクセス:市内からタクシーで約20分
■営業時間:8:00〜16:30
■定休日:月休
種類豊富。お土産購入にも重宝するチェーン店
チェーン展開する「Ya Kun Kaya Toast」は、お土産用のカヤジャムを買ったり、チャンギ国際空港で駆け込みカヤトーストをしたりするのに便利。島内に60店舗前後あるので、探そうと思わなくても見つかるはずです。
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トーストだけでなく、蒸しパンやフレンチトーストパンを使ったものなど、メニューが豊富なので、いくつか頼んでシェアするのがお薦めです。
【Ya Kun Kaya Toast】
■住所:本店はFar East Square店(18 China Street, #01-01 Far East Square Singapore 049560)
■アクセス:MRTテロック・アヤ駅から徒歩3分
■営業時間:7:30(日8:30)〜19:00(土16:30、日15:00)
■定休日:祝日
■URL:http://yakun.com
シンガポールの甘いもの、興味湧きましたでしょうか。ちなみにこれ、スイーツではありません。朝食です。その昔、エアコンがなかった時代、朝から甘いものを食べ、その日働くためのエネルギーを補給していたのだとか。もちろんおやつに食べてもいいのですが、シンガポール流に、朝、食べてみていただきたいです。
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そうそう、カヤジャムをお土産に買う場合、1点、ご注意を。容量が100mlを超える場合は、必ずやスーツケースに入れて持ち帰ってください。ペーストも液体物に含まれるため、手荷物にしていると悲しくも空港で没収されてしまいますので。