三度目のフェスティバルはリアルでもオンラインでも。 11月24日まで。多様な現代アートの国際イベント『ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020』が開催。
2020年11月18日から24日まで横浜市役所アトリウムをリアル会場として開かれている『ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020』。「our curioCity - 好奇心、解き放つ街へ」をテーマにオンラインとリアル、両方で開かれる初の試みになりました。開始直前の会場でアーティストのみなさんのお話を聞いて、作品も体験しましたので、その様子をレポートします。
2014年開催の第1回から約7年をかけた発展進行型プロジェクトの集大成!
第1回の2014年から発展進行型プロジェクトとして始まった『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』。第2回が2017年、そして第3回となる『ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020』はその集大成です。
「第1回を開催した2014年から社会を変えていくことを謳って3回の『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』を行ってきました。今回はオンラインとリアルを融合した新しいフェスティバルを開催することになりました」
そう話してくれたのは総合ディレクターの栗栖良依さん。
「今回のテーマは『our curioCity - 好奇心、解き放つ街へ』。2014年からの活動では大変なことがたくさんありましたが、好奇心が原動力となって突き動かされてきたと思っています」ともお話しされました。
『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』史上初の映像番組『パラトリテレビ』。
たくさんの人が集まることができなくなった今回、『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』史上初の映像番組『パラトリテレビ』が公式サイトで配信されます。番組のナビゲーターを務めるのは車椅子インフルエンサーの中嶋涼子さん。
「コロナ渦だからこその出会いがあったと思っています。遠隔でもいろいろできるので、可能性を感じました。普段出会えない人とパラトリテレビを作り上げてきたので、みなさんにも見ていただきたいです」と中嶋さん。
『パラトリテレビ』は11月20日からの3日間、横浜市役所内のスタジオから様々な番組が放送されます。乙武洋匡さんや皆川明さんらが参加するトークイベントも予定されています。
リアル会場となっている横浜市役所アトリウムにはアーティスト、井上唯さんによる作品『ホワイトスケーパー』が展示されています。
『ホワイトスケーパー』の材料は形状が固定できるプラスチック製の糸。私たちが毎日使っているマスクの鼻の部分に入っているものと同様の素材だそうです。作品は井上さん一人で作ったのではなく、第1回の2014年から1万人を超える参加者とともに作成してきたものです。
「今回は、みなさんに自由な形のパーツを編んでもらってそれをつなぎ合わせました。個人の想像力を超えた作品にしたいと思って作りました。生で見ていただけたら嬉しいです」とのこと。
ガラス張りの横浜市役所ホール全体に設置された作品は時間帯によってもいろいろな見え方に変化します。
映像作品『MEG -メグの世界-』で世界のサーカスアーティストが共演。
サーカスアーティストの金井ケイスケさんを中心に結成された「SLOW CIRCUS PROJECT」が作成したのはサーカスアニメーション。普段はリアルのパフォーマンスをしているメンバーが、CGを駆使したアニメーション作品に出演します。
「ひとりずつ遠距離で撮影して映像作品を作ることになりました。イタリア、カナダ、チリのサーカスアーティストも参加しています」となかなか大変だったようです。
映像作品のタイトルは『MEG -メグの世界-』。女の子メグが猫のクロと時空を超えた旅に出て、たくさんのサーカスアーティストと出会う希望に満ちたストーリーになっています。
「普段はリアルでパフォーマンスしている世界のサーカスアーティストたちも映像作品のおもしろさに目覚めたようです。これを機に新しいクリエーションとして映像を使ったサーカスが増えていくかもしれません」と金井さん。
『MEG -メグの世界-』は横浜市役所アトリウムで繰り返し上映しているほか、YouTubeでも配信しています。
作品に作品で応答する「BOOK PROJECT 読む展覧会『そのうち届くラブレター』」。
過去2回の『ヨコハマ・パラトリエンナーレ』では障害のある人と多様な分野のアーティストがコラボレーションした作品を展示してきました。今回はオンラインでも楽しめる展示として「BOOK PROJECT 読む展覧会『そのうち届くラブレター』」が企画されました。
『そのうち届くラブレター』は200ページほどもある本とウェブサイトでも読むことができる作品群です。6人の作家の作品に対して、料理家や書家、音楽家ら9組の表現者がそれぞれの表現方法で応答しています。自分の思いが届かない、すれ違うことがあっても、伝えていけばいつかは届くという希望と願いが込められています。
山本高之さんの映像作品『悪夢の続き』は2人1組で一方が見た悪夢の話をもう一方が聞いて、聞いた人がその続きを考えるという作品。この作品に対してテキストと写真の作品『いつか 私も みたい もの』で応答したのは写真家で美術家の松本美枝子さん。そして『蓋の向こうからあなたへ』というテキストの作品で応答したのが『視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ』ナビゲーターの中川美枝子さんです。
このほか井口直人さんがコピー機を使った画像作品に対して、料理家の船越雅代さんと現代美術家の金氏徹平さんが応答するなど、1つの作品からだけでは辿りつかない多様な世界につながっています。
これらの作品はすべて会場で無料配布されるブックに掲載されています(1,000部限定)。またオンラインではPDF版が配布されています。
横浜市役所の2Fでは『ヨコハマ・パラトリエンナーレ ドキュメント展示』も行われています。2014年からのこれまでのパラトリエンナーレの歩みや港南福祉ホームと〈ミナ ペルホネン〉の協働で続けられてきた刺繍のプロジェクト『sing a sewing』の作品を見ることができます。
会場全体が賑やかで明るい雰囲気に包まれている『ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020』。リアル会場の横浜市役所、オンライン会場、どちらを訪れても自分の中にある新しい好奇心を解き放つきっかけになるかもしれませんよ。
『ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020』
■コア会期2020年 11月18日(水)~24日(火)
■会場:神奈川県横浜市中区本町6-50-10 横浜市役所アトリウム、オンライン
■無料 ※一部有料
■公式サイト