花井悠希の朝パン日誌 vol.5 寄り道のススメ~〈俺のBakery&Cafe〉と〈pour-kur〉~

LEARN 2017.08.21

パンを愛するヴァイオリニスト花井悠希(はないゆき)がお届けする「朝パン日誌」、第5回。どれだけ自分がパンを好きで、どれほど新しいパン屋さんを開拓したいと思っていても、友人や家族と一緒の時はやはり気を使ってしまうもの。例えば、己のパン欲に付き合わせて遠くまで歩かせるのはちょっと申し訳ないな…とか。それでも美味しいパンで朝を迎えたい……うずうず、となった時にオススメなのが、プラスαがある場所のパン屋さん。今回はそんな2軒、「恵比寿ガーデンプレイス」にある〈俺のbakery & cafe〉と〈代々木VILLAGE〉内の〈pour-kur〉をリコメンドします。

究極のミルク食パン…〈俺のBakery&Cafe〉の「俺の生食パン」

恵比寿ガーデンプレイス。ここは、三重から出てきた私にとって、いつまでも東京らしさを感じる景色の1つです。映画館も写真美術館も百貨店もあり、レストランも沢山入っていて、真ん中の広場ではイベントもよく行われる、みんなの憩いの場所。

そんな恵比寿ガーデンプレイスの入口に去年できて、今もその食パンを求めて行列が絶えないのが〈俺のBakery & Cafe〉。皆さんもよくご存知のあの〈俺の〉系列のパン屋さんです。近くに住む友人がプレゼントしてくれて、ついに対面することが出来ました。

「俺の生食パン」
「俺の生食パン」

一斤、どんと目の前にそびえ立つ様は、なんともたくましい。ちょっと遠慮がちにナイフを差し入れて、丁寧に丁寧に、パンへ目一杯の敬意を払ってそっとナイフを動かします。パンをお姫様のように甘やかす、この時間がたまらない。

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焼かずにそのまま食べるのがオススメとなっているこちら。綺麗に切れた、真っ白な断面に惚れ惚れしながら、大きなお口を開けて、はむっと一口。

はぁ、なんという儚さよ。

極上に柔らかな表面に触れたと思ったら、しゅわしゅわしゅわしゅわと泡のように消えていく……。粒の細かい空気が生地の隅々まで入りこみ、クッションのような役割をしているので、スフレのような儚い溶け方をします。

甘さはあるタイプ。なかほら牧場のミルク、北海道産小麦「キタノカオリ」を使った【究極のミルク食パン】というフレーズが添えられているだけあって、ミルクのまろやかなコクと甘みを感じることができます。

甘すぎる食パンが苦手な私ですが、この食パンの甘さは心地よい。それは、我先にと、甘さが前へと訴えてこないから。気持ち良い食感と戯れているうちに、ゆるやかに滲む甘さは、気がつけば、口内にまあるく広がっています。

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ぜひあなたのお口のサイズに合わせた厚みでカットしてみてください。ピタッと口にハマるサイズの食パンで、その中に包有された空気を外へ押し出すように、勢いよくはむっと口を閉じると、最大限にエアリーさを感じられます。子供の頃、青空に浮かぶ雲を見て、食べたいって思ったことがある人(あれ?わたしだけ?)なら、きっとその夢を少し満たしてくれるはずです。イメージしていた食感はきっとこんな感じだったはず。

ガーデンプレイスへご飯を食べに誘って、「雲食べたいと思ったことない?」と、少しばかりメルヘンに(?)、こちらのパン屋さんへいざなってみてはいかがでしょうか?

都会のオアシスの入口…〈pour-kur〉の「フルートレザン」と「プラムのタルト」

代々木駅からほど近い場所にありながら緑豊かな〈代々木VILLAGE〉。こちらもレストランやバーが入り、イベントもよく開催されています。その入口に佇む〈pour-kur〉さん。

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大きな窓からたっぷりと光が入り、温かな雰囲気。

「フルートレザン」
「フルートレザン」

ラム酒漬けレーズンを巻き込んだバゲットに、バターとグラニュー糖がトッピングされたもの。細めのバゲットは、こんがりと角がたった、しっかりした焼き加減で、食欲をそそる小麦肌をしています(小麦なだけに)。

その香ばしさの底上げに一役かっているのが、仕上げにバターと一緒にトッピングされた砂糖。溶けて固まってキャラメリゼのようになり、バゲットの角をツヤツヤと縁取ることで、クラムのカリッと感を強調してくれています。

トップにのるラムレーズンから、ラムの香りと焼けた苦味が深みを作り出し、そこにジャリっと砂糖の質感と甘さが加わって、香り高い小麦がまとめ上げる。このほろ苦ほろ甘さは、酸いも甘いも知る大人仕立て。一筋縄じゃいかないバゲットさんです。

「プラムのタルト」
「プラムのタルト」

見てください、この艶やかでジューシーそうなプラム。それ故に、アーモンドクリームの部分も、タルト部分もしっとりしたタイプかなと思ったら、、、タルトからサクリと音が聞こえてくるものだから、こりゃあニンマリが止まりません。薄いタルト地に見えるけど、隅々までまんべんなくサクリとしています。

タルトの底の部分は、溶けたバターが溜まるのか、よりカリリと香ばしく、焦がしバターのような風味がして充実感いっぱい。食感も味わいも贅沢なここ、マグロでいうトロ的な、リッチさです。

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アーモンドクリームのゾーンは、しーっとりとした生地。その生地に、ふんだんに紅茶の茶葉が練りこまれているから、胸いっぱいに深呼吸したくなるほど香り高い。そこにジューシーなプラムの、華やかな甘みが広がれば、パンを越え、立派なご褒美スイーツの顔でありました。

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〈pour-kur〉の前の椅子に腰掛けて、様々な植物が植えられている〈代々木VILLAGE〉の緑を眺めながら、頂くのもオススメです。

お出かけの1プランに加えて、美味しい朝パンを是非ゲットしてみてくださいね。早起きも頑張れちゃうはず!

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