デザイナー・皆川明さんが語る。 馬喰町に新風を巻き起こす。〈minä perhonen〉新ギャラリーショップのこれから。
下町情緒が残るオフィスエリアだった東京駅イーストエリアを活気づけ、よりクリエイティブで居心地のいい街へと導く馬喰町の注目スポット〈minä perhonen elävä Ⅰ〉〈minä perhonen elävä Ⅱ〉。ブランド設立者であるデザイナー・皆川明さんが感じた、この街らしさとは?
時を重ねた味わいや変化。それが感じられる街と空間。
〈ミナ ペルホネン〉の設立者、皆川明さんがフィンランド語で“暮らし”を意味するスペース〈elävä〉の地として導かれたのは馬喰町。「東京生まれですが、馬喰町は繊維の街くらいの漠然とした情報しかありませんでした」と皆川さん。〈elävä Ⅰ〉の地にあった〈スターネット〉のクロージングパーティにたまたま立ち寄り、この空間を引き継ごうと直感的に決めた。元ギャラリーだった〈elävä Ⅱ〉と同時に今年の2月オープン。「その土地の気配のようなものを大事にしたいので、飾りすぎないようにし、フロアの傷もそのままの状態を生かしました」と言うように経年変化の味わいを残した。販売しているヴィンテージ家具も同様。新品のように戻すのではなく、風合いを生かしてリペアしている。フィンランドの小学校で使われていたアルテックのデスクにもよく見ると落書きや傷が。
「表面は黒板塗装なんですよ。何かアクセントが欲しいなと思ったら僕が絵を描いてもいいし」と皆川さん。「ものというのはつくられてからの寿命がもっと長いはず。大事につくりたいという思いで丁寧につくられたものを届けたい」と皆川さんは微笑む。
新しい風を巻き起こした、この街のニューカマーのこれからとは?
ディスプレイはすべて現場のスタッフに任せている。「来るたびに変わっていて『自転』しているのがうれしいですね」。そのコーディネートにルールはないが、景色として見立てるようにしているそう。「例えばこのオイバ・トイッカのバードもただ美しい造形のデザイナー作品として飾るのではなく、このように並べれば親子で水面を泳いでいる風景に。少し角度を変えれば鳥が何か考えている表情になるなど、物語が生まれます」。空間を風景ととらえることは生活を楽しむコツかもしれない。
食材や器を扱う〈elävä Ⅰ〉の2階では定期的にワークショップも開催。ものだけではなく体験も得られる場にしたいと語る。「東京には世界中のものがあふれています。インターネットも発達し、ものを買うだけならばお店の機能には限界があります」と皆川さん。このエリアに移り住む若い層も増えた。「近所には〈ともすけ〉や〈ビーバーブレッド〉など素敵なお店も多いですよね。多様性のあるお店がもっと増え、それぞれのペースで活動していけるといいなあと思います」
〈minä perhonen elävä Ⅰ〉
北欧デザイナーの名作家具から調理器具まで生活にかかわるアイテムを厳選。
■東京都千代田区東神田1-2-11 201
■03-6825-8037
■11:00~19:00 日休
〈minä perhonen elävä Ⅱ〉
皆川さんがエチケットをデザインした自然派ワインなども。
■東京都千代田区東神田1-3-9
■03-6825-3037
■11:00~19:00 日休(展覧会開催期間は無休)
皆川 明
1967年東京生まれ。オリジナルのテキスタイルで知られる〈ミナ ペルホネン〉を1995年に設立。2019年2月に〈elävä Ⅰ〉〈elävä Ⅱ〉を馬喰町にオープン。
(Hanako特別編集『East Area of Tokyo Station Magazine』掲載/photo : Satoshi Nagare text : Noriko Maniwa)
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