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連載「拝啓、〈星〉へいらっしゃいませんか?」/第21回 シンガポール在住者に人気のグルメスポット4軒。「ケオン・サイク・ロード」をそぞろ歩きしよう。
第21回は、在住者が集うケオン・サイク・ロード。カヤトーストの老舗やビブグルマンに選ばれたローカルレストランなど良店ぞろい、かつ、街の歴史もユニークです。
朝食にも、ランチにも、ナイトアウトにもおすすめなお店をご紹介します。
いわゆる「観光スポット」というわけではないのですが、すてきなお店が凝縮しているストリートがあって、朝食にも、ランチにも、ナイトアウトにもいいところなので、ご紹介します。通りの名は、ケオン・サイク・ロード。チャイナタウンからすぐなので、観光ついでに寄るにもアクセス良好。金融街からも近く、欧米系ビジネスマンをターゲットにした彼ら好みのお店も多数。
ちなみにケオン・サイクとは、20世紀初頭のシンガポールで中国商工会議所の設立に貢献したタン・ケオン・サイクの名前にちなんでつけられました。実はこのエリア、1930年代は歓楽街、そして1960年代は「red-light district」、つまり赤線地区でした。シンガポール政府によって売春宿がゲイラン地区に一斉移設されたため、この空いたスペースを利用して店が増え、現在の形になったのです(ほんのわずかですが、政府公認の売春宿の証である赤字の建物番号看板が残っているビルもあって、それを探して歩くのもおもしろい)。
全長400メートル弱の通り上に、ミシュラン系飲食店、老舗軽食店、ヒップなレストラン、ベーカリー、リノベーションされたホテルなどがずらり。個人的なおすすめをピックアップします。
1.クリスピーカヤトーストが最高。〈Tong Ah Eating House〉
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まずは今年で創業80年を迎えた〈Tong Ah Eating House〉。ここのクリスピーカヤトーストが、当地のカヤトースト部門・個人的暫定1位。カヤトーストとは、ココナッツミルクと卵を合わせたカヤジャムを塗ったトーストのこと。ここでは炭火でしっかり焼き目をつけた薄切りパンを使っていて、その香ばしさと、ジャムのほどよい甘み、バターの塩気の三位一体感がたまりません。ローカル風に楽しむなら、とろとろのゆで卵(温泉卵にちかい)がついてくるので、お皿に割りいれて、醤油をひとたらしし、カヤトーストをディップしてみてください。あまじょっぱさが助長され、背徳感のあるおいしさに。
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〈Tong Ah Eating House(トン・ア・イーティング・ハウス)〉
■35 Keong Saik Rd, Singapore 089143
■MRT・North East線(紫)またはDowntown線(青)「Chinatown」駅から徒歩約7分
2.本人駐在妻さん御用達ベーカリー〈Keong Saik Bakery〉
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続いて、近ごろ日本人駐在妻さんのSNSに頻出中の〈Keong Saik Bakery〉。バスク風チーズケーキが美味だと人気に火がついたのですが、代表作はSor Heiという、チョコチップを練りこんだデニッシュで、サクサクかつバターたっぷりの贅沢な味わい。お店のコンセプトは、伝統と新しさの融合。たとえばこのSor Heiとは櫛で髪を結い上げることを意味する広東語で、その昔、結婚をせず家政婦として働いた女性がしていた束ねた髪型を表現したデザイン。商品にストーリー性があっておもしろいベーカリーです。
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〈Keong Saik Bakery(ケオン・サイク・ベーカリー)〉
■41 Keong Saik Road, Singapore 089146
■MRT・North East線(紫)またはDowntown線(青)「Chinatown」駅から徒歩約7分
3.ミシュランのビブグルマンに名を連ねる〈Kok Sen Restaurant〉
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食事どころのおすすめは〈Kok Sen Restaurant〉。中華系のローカル食堂で、非常に大衆的なムードですが、ミシュランのビブグルマンに名を連ねています。名物はヨントーフ。ヨントーフとは野菜や練り物などをスープと合わせていただく、おでんのようなもの。透明なスープが一般的であるものの、こちらのスープは茶色いのが特徴。エビ出汁を使った濃厚なスープが、豆腐やとろとろのナスにからまって、最高! メニューはたくさんあって、どれを頼んでもハズレなし。くれぐれもヨントーフのオーダーは忘れずに。
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〈Kok Sen Restaurant(コク・セン・レストラン)〉
■30 Keong Saik Road, Singapore 089137
■MRT・North East線(紫)またはDowntown線(青)「Chinatown」駅から徒歩約7分
4.写真映えスポットとしても人気のバーガーショップ〈Potato Head Singapore〉
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最後にご紹介するのは〈Potato Head Singapore〉。通りの象徴的存在の白塗りの建物を丸ごと1棟使っていて、1~2階はハンバーガーをメインにしたダイニング、ルーフトップはバーという造り。アートが描かれた可愛い内装が、写真映えスポットとしても人気。バーガーは、パティにグラスフェッド牛やラムが使われていて、パンチのある肉感。が、やや小ぶりゆえ、大人の胃袋にちょうどよいボリューム。ルーフトップバーでは煌めくシンガポールの街並みを眺めながら、東南アジアらしいトロピカルカクテルがいただけます。食事もお茶もバー利用もできる使い勝手抜群のアドレスです。
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〈Potato Head Singapore(ポテト・ヘッド・シンガポール)〉
■36 Keong Saik Road, Singapore 089143
■MRT・North East線(紫)またはDowntown線(青)「Chinatown」駅から徒歩約7分
元赤線地区というと退廃的な雰囲気が漂っているのでは、と懸念するかたもいらっしゃるかもしれませんが、昔ながらの建物から醸し出されるオーセンティックなムードが感じられて、嫌な空気はありません。むしろ在住者にはとても人気の高いエリア。ゆえに家賃がお高いらしく、店の入れ替わりが激しい場所でもあります。上記4軒は安定の古株。ぜひ足を運んでみてください。