編集長・田島の高知旅SIDE-B その3 土佐清水のソウルフード「ペラ焼き」を探して。そしていつしか、おばちゃんに癒される旅へ。
Hanako×高知家の取材旅行に同行中の編集長・田島。四国最南端の土佐清水に到着、この町に根付きつつある新しいフードカルチャー取材、ということだったのですが、編集長はどうやら土佐清水のソウルフードが気になって仕方がないようで…
岬っていいですよね。私、岬とか崖とかが好きなんです。やっぱ世代的にはミスチルの「Tomorrow never knows」のPVがきっかけですよね。岬も、喜望峰やヨーク岬も行ったし日本の岬も数え切れないくらい行きました。でもココ、足摺岬は来たことがなかった!土佐清水が誇る観光名所です。ザパーン。
ほう、ナイス崖ですね。灯台は大事なポイントですよね……というわけで、なぜ私が岬にいるのかというと、本誌取材班の取材も好調そうなので、ちょっと気になることがあり別行動にさせていただきまして(またかよ)。さっき土佐清水市街を歩いていたんですが、こんな看板を発見したんです。
土佐清水が誇るソウルフード、「ペラ焼き」の謎に迫ってみる。
ペラ焼き……
なんだろ、それ。なんとなく想像はできるけど。お好み焼きの皮だけとか、そんなおやつ感覚なものじゃなかろうか。ねぎ焼きのねぎ抜きみたいな。でも、ここでググったらせっかくの旅がもったいないと、もやもやしながらしばらく市街を歩いていたのですが、またあった。
元祖ペラ焼にしむら、と書いてある。元祖って書いてあるし、その佇まいから名店の香りがぷんぷん匂ってくるではないですか。そしてお好み焼きのような匂いも……。というわけで中に入ってみることに。
「いらっしゃい〜」
鉄板台の先には、穏やかそうなおばちゃんが。もう絶対間違えない、これは名店だ!
「どんくらい食べる?」
…ん、だいぶファジィな問いかけから来たな……えーと、(これからペラ焼きめぐりたいので)少なめでお願いします。
「じゃあ350円ね。味付けは?」
味付け?と壁を見やると、メニューが。ふむふむ、なるほど。落ち着きを取り戻しつつ、「ウスター、辛口で!」
無事オーダーを済ませ、しばらくおばちゃんの手元を覗き見ることに。
んん、結構、具を載せるんだな。
ひっくり返して、ソースを塗り塗りして…
できあがり!めっちゃうまそう!いただきます!
食べてみると、まず生地のふわふわさに驚く。ペラ焼きっていうけど全然「ペラ」じゃなくて「フカッ」。フカ焼きにすればいいのに(おいしくなさそうか)。それにしても、私の好きな〈文明堂〉のどら焼きの皮だけをパンケーキとして供するアレを彷彿とさせるフカフカさ!
具は、ネギのほかに…あれ、この四角いのは?
「天ぷらよね」
天ぷら?……あ、じゃこ天のことですね!ここは漁師町ですしね。
「うちは60年以上やってるけれど、私が子供の頃からあるからねー。詳しくはわからんわ。ペラ焼きは元々は子供のおやつみたいなもんだけど、今は大人でも子供でも、昼でも夜でもいつ食べてもいいもんですよ」
混んでる時間帯はこの鉄板をぐるりとお客さんが取り囲み、それぞれのオーダーを的確にさばいていくらしい。つまりおばちゃんがDJならこの鉄板はDJブースで、ペラ焼きはヴァイナルみたいなものですね!(スルーされる)。ところでこの鉄板も年季入ってそうだなあ……。
「いや、鉄板はね、さすがに毎日たくさん焼いてるからそんなに持たないんよ。数年前に変えたかな」
あ、意外な答えが……
「でも鉄板の構造は昔と同じよ。炭火であっためてるからね」
す、炭火?あわてて、鉄板の下を見せてもらう。
なんと、鉄板の下には炭を入れた火鉢が3台。ものすごくアナログなのだ。でもこれが〈にしむら〉さんの美味しさの秘訣かもしれない。うーん、他にもペラ焼きが食べたくなってきた。ごちそうさまでした!
編集長、さらなるペラ焼きを求めて徘徊。が、事件は起こった。
すっかりペラ焼きの虜になった私。さらなるペラ焼き道を究めるべく、町の人にオススメのペラ焼き店を聞き込みに回ります。そこで出てきたのは〈タッチ〉〈立石〉という名前。「ベーコンとかチーズの入った洋風ペラ焼きもあるよ」と教えてもらった〈タッチ〉へ急行!ペラ焼き進化系、気になる!
あった!めちゃくちゃ存在感のある駐車場……が、看板も出てないし、人もいない……。ぺら焼き屋の前でひとり困った顔をしているおじさんに、通りがかった心優しい高校生が教えてくれた。
「あ、タッチさん、まだ再開してないですよ」
え? 再開って?
「焼けちゃったから。そろそろって言ってたから、また来てみたほうが」
そろそろって…そんないつでも来れるところに住んでないんです(涙)。ちなみに、〈タッチ〉は本日7月29日現在、すでに再開しているそう。土佐清水に行った方、ぜひ感想を教えてください(ペコリ)。
というわけで気を取り直して、もう一軒の〈立石〉へ。市街からはちょっと離れた住宅街まで、初夏の日差しが照りつける中、歩いていく。ここもまた看板が見つからないな…住宅地だからな…立石さんって方がご自宅でやってらっしゃるのかしら。
んん、なにか張り紙のある家が…。
た、立石さん……。早く良くなることを祈ってますね。心配です。
というわけで結局アナザーペラ焼きにはたどり着けず、汗だくの私は市街地に戻ることに(すみません、タクシー使います)。
住民に愛された銭湯の跡地にあったのは、土佐清水の憩いの場でした。
中心街に戻っては来たものの、目的を失ってしまった私。とぼとぼと歩いていると、なにやら雰囲気のある廃墟を発見。
へー、こんな味のある銭湯があったんだ。入りたかったな……。そして上はコーヒーショップだったのか、モダンだったんだろうな……
って、まだ営業してる!?
外階段から2階に上がると、時間が止まったかのようなレトロな雰囲気のインテリア。こういうの大好物!平野紗希子ちゃんや小谷実由ちゃんに教えてあげたい。
「何にします?」と聞かれたので、アイスコーヒーをお願いする。そして気になってたことを質問してみる。下の銭湯って、いつ閉まっちゃったんですか?
「そうねえ、3年前くらいかな」
お、意外に最近までやってたんだ。経営は一緒ですか?
「そうなのよ。夫と母と3人で上も下も回していたんだけど、銭湯は薪で火を熾してたから、何かと大変でね。なので下は閉めて、私だけこの喫茶店を続けることにしたのよ」
窓際の席から外を見やると、ちょうど銭湯の庇となる部分に、たくさんの植物が。これ、育ててるんですか?
「最近は多肉植物っていうの?ハマっちゃってね。ちょうどこの部分が日も当たるし、なにかといいのよ」
なんだか気持ちいい空間ですね。ウトウトしてくるなあ。それにしても、銭湯、見てみたかったです。
「結構モダンな銭湯でね。浴槽はみな綺麗なブルーのタイル張りだった。常連さんが自分用の石鹸と石鹸箱を置いてたのよ。箱には漁船の名前が書いてあったわね」
石鹸箱キープは聞いたこと無いなあ。それも漁船ごとにキープだなんて!漁師町の心温まるエピソードを聞きつつ、気がつけばすっかりいい時間に。
取材終了時間も迫り、本誌取材班と再合流する。のはずが……新たな出逢いが!
本誌取材班と再合流しなくてはいけない時間が近づいてきた。待ち合わせ場所に向かうタクシーの中で、私はひとり、窓の景色を見ながら〈タッチ〉の洋風ペラ焼きの味を妄想していた。もぐもぐ。ああ、食べたかったな、次はいつ土佐清水に来られるのかな……。
ちょっと待った、あの店、気になる!運転手さん、止めてください!キキーッ(実際は急ブレーキではないですが)。
目の前に現れたのは、巨大なたこ焼き屋さん。店名は〈ぽろぽろ〉か?店名のタイポグラフィがやけにそそる。よし、入ってみよう、と扉の前に立った瞬間、その横の窓がガラリと開いた!
「いらっしゃいませ。食べていく?持っていく?」
時間はないが、やっぱりココで食べていきたい。うーん、食べていきます!本誌取材班の取材がおしていることを願いつつ!
「12個入りでいいかしらー?男の子だもんね」
いや、おっさんです、と言いそうになったが、「12個で300円、6個で200円なら12個入りかな、だってお得だもん」と考えをめぐらせたその思考回路が中2男子だなと思い返しやめておく。それにしても安い!
席に着くと、この店が川沿いに建っていたことに気づく。まさにリバーサイドヴューでたこ焼きを。なんて贅沢な時間。本誌取材班よ、のんびりしていて申し訳ない。
「もともとはここは、ウチが持っていた、船の大きなパーツなどを置いておく土地だったのよ。だけど需要も減っていって、そこまでの広さの土地が必要じゃなくなったから手放したんだけど、この角地だけは持っておいたの。だから、とてもいい景色でしょ?」
それにしてもこのたこ焼きの上にかかった鰹節がソースと相まっていい味、出してますけど、これって……。
「宗田節よ。だって土佐清水だもんね。たんまりかけて食べないと。他にも足摺のタコや以布利のイカなど地のものをなるべく使うようにしてるのよ」
今回の土佐清水での滞在でも、和から洋からいろいろな料理を食べたけど、どこも宗田節をうまい具合に使っていて、それが土佐清水の料理のアクセントになっていた。そしてこの最後のたこ焼きで、宗田節の味の力強さを改めて感じることに。
「高校生たちが相談に来たりとか、お友達とここで手芸やったりとか、今もこう見えて忙しいの!ほら、この帽子も服も自分でつくったのよ。便利な場所ではないけれど、周りにまるで家族みたいな人たちが大勢いるから、毎日楽しく過ごしてるのよ」
土佐清水ペラ焼きめぐりのつもりが、気がつけば土佐清水おばちゃんめぐりになっていた今回のふらり独自取材。でも、旅取材にハプニングと出会いはつきもの!おばちゃんセレンディピティな土佐清水滞在は、まさに「高知家の家族」を感じることのできた癒しの時間でした。また、ゆっくり来たいな。
問い合わせ先
〈元祖 ペラ焼き にしむら〉
■高知県土佐清水市中央町6-1-1
■0880-82-2752
■10:00〜20:30 火休
〈コーヒーショップ モカ〉
■高知県土佐清水市中央町3-3
■0880-82-2955
■不定休
〈たこ焼 ぽろぽろ〉
■高知県土佐清水市下ノ加江279-9
■0880-84-0222
■11:00〜17:30 不定休
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高知県のまとめサイト「高知家の○○」
http://www.kochike.pref.kochi.lg.jp/~top/matome/