連載「拝啓、〈星〉へいらっしゃいませんか?」/第18回 個性派ベーカリー続々!シンガポールのおすすめベーカリー5選。
第18回は、シンガポールのパン・トレンド。実力派ブランジェの独立オープンや、日本以外のアジア圏のベーカリーが上陸するなど、パンまわりのニュースが賑わっています。
1.フランスの名ブランジェ、ゴントラン・シェリエさんがプロデュースした〈Tiong Bahru Bakery〉
最近、友人との会話に頻出するトピック。それは「近ごろ、個性的なベーカリーが増えたよね!」というもの。わたしがシンガポールで暮らし始めたのは2016年。日系スーパーマーケットは充実しているし、日本ブームで和食屋さんも多く、家でも外でも、食に苦労はありませんでした。が、ただひとつ、もっとこうだったら…、と願ったことがあります。それが、パン。
さて、シンガポールの近年のパン事情を、少しだけ振り返らせてください。2010年代前半から半ばにかけ、当地を東南アジアへの事業拡大の足がかりにすることを目的に〈PAUL〉や〈メゾンカイザー〉、〈ブランジェ浅野屋〉といった日仏の名ベーカリーの進出が続きました。外国人駐在員にとって馴染みのあるベーカリーですし、彼らが多く暮らすシンガポールはショウケースとして最適の地だったからです。ゆえに、わたしが移住してきた2016年当時は、これらの外資大手ベーカリーと昔ながらのローカル系チェーン店が主流。でも欲張りな性分ゆえ、日本では出合えないパン屋はないものか、と思ってしまいまして……。
そこで見つけたのがフランスの名ブランジェ、ゴントラン・シェリエさんがプロデュースした〈Tiong Bahru Bakery〉。
彼が得意とするクロワッサンとクィニーアマンで人気に火がつき、いまでは国内に6店舗を構えるほどに成長しました。
〈Tiong Bahru Bakery(チョン・バル・ベーカリー)〉
■56 Eng Hoon Street, #01-70, Singapore 160056 ※Tiong Bahru店ほか5店舗あり
■MRT East West線(緑)「Tiong Bahru」駅から徒歩約10分。
2.生食パンが登場し、SNSでたちまち話題に。〈Fine Dining Bakery〉
「日本人がこぞって通うパン屋といえば〈Tiong Bahru Bakery〉状態が長らく続いてきたのですが、ここ数年(特に今年に入ってから)、この状況にちょっとした変化が訪れています。シンガポール国内のレストランで活躍していたブランジェの独立オープンなど、パン屋関連のニュースが続いているのです。たとえば〈Fine Dining Bakery〉。
〈ロブション・シンガポール〉の立ち上げに関わったのち、別のレストランで腕をふるっていたブランジェ、AKIRAさんがオープンしたお店です。肉料理に合うサワドウ、魚料理に合うサワドウ、白ワインに合うバゲット、赤ワインに合うバゲットなど、ラインナップが面白い。
こちらで外せないのが生食系食パン「Fluffy Shokupan」。
「fluffy=ふわふわした」なので、当然、軽〜〜いのですが、キメがものすごく細かくて舌触りが滑らかで、弾力もありながら、数回もぐもぐするといつの間にか消えてしまっている、という具合に、もちもちとふわふわが同居しています。
2019年4月にソフトオープンすると、近隣に住む日本人駐在員の間で話題となり、瞬く間にSNSで拡散、繁盛店となりました。
〈Fine Dining Bakery(ファイン・ダイニング・ベーカリー)〉
■207 River Valley, UE Square #01-59, Singapore 238275
■MRT Downtown線(青)「Fort Canning」駅から徒歩約5分。
3.36時間発酵が特徴的なインドネシア・バリからやってきたベーカリー。〈starter lab〉
またインドネシア・バリの〈starter lab〉、台湾の〈Wu Pao Chun Bakery〉など、日本以外のアジア圏のベーカリーが上陸中。
〈starter lab〉は36時間発酵が特徴的。
表面はかなりしっかり焼かれていてザクっと香ばしいのですが、長時間発酵していることにより、中の生地の気泡は細かく、しっとりと仕上がっています。香り高いローズマリー入りのサワドウや、味噌を使ったバゲット(バターを塗ると、最高!)など、食事に合うパンがずらり。
〈starter lab(スターター・ラボ)〉
■721 Havelock Road, Singapore 169645
■MRT East West線(緑)「Tiong Bahru」駅から徒歩約10分。
4.パリのベーカリー世界大会の2010年の覇者。〈Wu Pao Chun〉
〈Wu Pao Chun〉は、パリで開かれたベーカリー世界大会の2010年の覇者。
受賞のきっかけとなった「Red Wine Longan」は、焼き上がり時には買い求める人が列をなす名物パン。
ワインの香りがしっかり残っている大人味で、ハードパンでありながら、焼きたては生地ほんわり。
時間が経っても固くなりにくく、2日目以降もリベイクなしでOK。惣菜系のパンも充実しているので、小腹を満たすのにも重宝します。
〈Wu Pao Chun Bakery(ウー・パオ・チュン・ベーカリー)〉
■13 Stamford Road, Capitol Piazza #01-19/20, Singapore 178905
■MRT East West線(緑)またはNorth South線(赤)「City Hall」駅直結。
5.今秋より面白い新サービスを開始!〈Firebake〉
そして今秋から面白い新サービスを始めるのが〈Firebake〉。
薪釜で焼成するのがユニークな同店が、パン生地を持って訪れると、店の薪釜で焼かせてもらえるサービスをスタートさせます。
家庭のオーブンは庫内を保湿するよう設計されているため生地に水分が残ってしまいますが、薪釜は余分な水分を飛ばすことができるため、サクッと食感よく仕上がるのだそう。
と、このような感じで、シンガポールのパン事情、盛り上がってきております。今回ご紹介したベーカリーはどこもイートインスペースが併設されているので、朝ごパンにパンランチなどいかがでしょう。
〈Firebake(ファイヤーベイク)〉
■237 East Coast Road Level1, Singapore 428930
■バス停「Opposite The Holy Family Church」から徒歩約2分、電車の最寄りはMRT East West線(緑)「Eunos」駅から徒歩約25分。市内からタクシーで約20分。
アラブストリートのハラルパンなどもあって一度にご紹介しきれないので、またご連絡しますね。