本の中の京都。 小説やエッセイに登場する、京都の喫茶店4軒。『夜は短かし歩けよ乙女』初デートの待ち合わせ場所も。
京都の風景に欠かせない喫茶店は、小説やエッセイにも頻出のモチーフ。待ち合わせしたり、店の歴史を味わったり、それぞれの物語に浸ってみたい。Hanako『京都の、ほんと。』「本の中の京都。」より、本に登場する京都の喫茶店4軒をご紹介します。
1.森見登美彦『夜は短かし歩けよ乙女』「午後四時に彼女と待ち合わせて珈琲を飲む約束になっていた」
〈進々堂 京大北門前〉/北白川
勉強好きだった初代が京大生のために作った空間。1931年のオープン以来、学生たちに愛用されている長テーブルと長椅子は、人間国宝の木工作家・黒田辰秋が若き日に手がけたものだ。クリームソーダ 570円(税込)など懐かしいメニューとともにゆっくり読書するのがおすすめ。併設の工場で作ったパンのブランチも。
アニメ映画にもなった、森見登美彦さんのベストセラー青春恋愛小説。「先輩」が思いを寄せる「黒髪の乙女」との初デートの待ち合わせ場所として〈進々堂 京大北門前〉が登場する。「黒髪の乙女」が店に入ると、「先輩」は先に窓辺の席に座っていた。二人はここでコーヒーを飲む。
〈進々堂 京大北門前〉
■京都府京都市左京区北白川追分町88
■075-701-4121
■8:00~17:45LO 火休
■120席/禁煙
2.川口葉子『京都・大阪・神戸の喫茶店』「食パンの耳とはこんなに役立つものだったのか」
〈COFFEE HOUSE maki〉/河原町今出川
自家製マヨネーズを使ったポテトサラダと野菜サラダ、ロースハム、ゆで卵が食パンの耳で作った器の中に。くり抜かれた中身はバタートーストになって登場するボリュームあるモーニング。ネルドリップした、コクのある自家焙煎コーヒーと共に。
喫茶店の賢者、川口葉子さんによる関西三都市の喫茶店案内。個性の異なる京都、大阪、神戸の中で、京都の喫茶店を「琥珀色」と表現している。有名店から穴場まで、紹介するのは落ち着いた雰囲気が魅力の店。〈六曜社〉店主の親子対談を織り交ぜ、温かい視点で綴る。
〈COFFEE HOUSE maki〉
■京都府京都市上京区河原町今出川上ル青龍町211
■075-222-2460
■8:30~19:00 無休
■54席/禁煙(月~金17:00以降喫煙可)
3.甲斐みのり『京都おでかけ帖―12ヶ月の憧れ案内』「浮かんでくる言葉が愛おしい文字に変わる、特別な場所」
〈六曜社地下店〉/河原町三条
「深煎りも浅煎りも、産地の偏りもなく豆を焼いて、お客さんが好みを選べるように」とは、1982年から自家焙煎を始めた店主、奥野修さんのこだわり。ハウスブレンド500円は、初心者も飲みやすい中深煎りだ。奥様が作る素朴なドーナツ 160円(各税込)が鉄板コンビ。
作者は京都在住歴もある文筆家で、京都に関する著作も多数。この本では地元の人にも観光客にもおすすめの、季節ごとの楽しみ方を紹介している。甲斐さんの〈六曜社地下店〉でのお気に入りは、奥のソファ席。長居しても気後れしない雰囲気は、創作意欲も刺激される。
〈六曜社地下店〉
■京都府京都市中京区河原町三条下ル大黒町40 B1
■075-241-3026
■12:00~18:00(バー18:00~23:00) 水休(バーは無休)
■15席/禁煙
4.木村衣有子『京都の喫茶店:昨日・今日・明日』「とりわけ烏丸店は、店そのものに、人懐っこさが滲み出ている」
〈高木珈琲烏丸店〉/烏丸高辻
〈イノダコーヒ〉出身の父ら創業メンバーから喫茶店のイロハを学んだ店長・北村亮さん。自ら焙煎も手掛けるが、目指すのはあくまで「気さくな街のコーヒー屋」。お客さんのブレークタイムを一服のコーヒーで彩りたい。その思いを込めた「おおきにまいど!」が今日も店内に響く。
2001年に発刊し、カフェブームを牽引する存在となった『京都カフェ案内』を12年ぶりにブラッシュアップ。珠玉の15軒を紹介するのは、店主の語りも添えられたエッセイだ。〈高木珈琲〉のページには親子2代のインタビューがあり、京都の喫茶店DNAが脈々と続いているのがわかる。
〈高木珈琲烏丸店〉
■京都府京都市下京区烏丸通高辻下ル
■075-341-7528
■7:00~19:00 無休
■32席/喫煙
Hanako『京都の、ほんと。』特集では、京都の楽しみ方を多数ご紹介しています!
(Hanako1176号掲載/photo : Natsumi Kakuto, Noriko Yoshimura, Yoshiko Watanabe text : Kahoko Nishimura, Mako Yamato, Atsuko Suzuki)