竹中万季の 「ゆるめる23時」#1 YUNO TAKEMURAさんに教わるヨガ
一日はあっという間に過ぎていく。起きて、仕事して、合間にごはんを食べて、息をつく間もなく眠りについて。気づいたらカレンダーがどんどん次の日にめくれていく。やるべきことをこなしたり、やりたいことに夢中になったりする時間も大切だけれど、ふと一息、ぴんとはりつめた自分をゆるめる時間をどこかに取り入れられたら。たとえば、眠る前の23時だけでもそんな時間がつくれるように、日々のなかで取り入れられる「ゆるめる」方法をme and youの竹中万季さんが探しにいく体験型のコラム連載です。
夜寝る前のリラックスヨガ。なかなか難しい、習慣づくりのコツは?
夜眠る直前まで仕事をして、慌てて眠りにつくと、眠りが浅く悪夢を見ることもしばしば。安心して、リラックスして眠るためにはどうしたらいい……?
ここでもやっぱり、「何が自分を不安にさせているのか?」に向き合うことは必要不可欠で、そのうえでリラックスして眠るためにぴったりのブロックを使ったストレッチを教えてもらった。ブロックは枕のようなものでも代替できるし、オンラインショップなどでも購入できるそう。
まず、仰向けになって、肩甲骨の内側に立てたブロックをいれて、膝を曲げる(魚のポーズ)。ブロックのおかげで肩甲骨がぐっと開いて、呼吸が深くできるようになった。
それから、ブロックを腰の仙骨の下に移動させると、骨盤や股関節が開いていく(橋のポーズ)。ブロックを使うと、身体のなかで普段使わない場所が自然とストレッチされて、縮こまっていた筋肉が伸びていく感じがする。最後に、ブロックは使わずに仰向けになり、膝を曲げて足で数字の4の字をつくるポーズ(四の字のポーズ)。なかなかほぐすことがない、お尻の筋肉がほぐれていく。YUNOさんにポーズを直してもらうことで、よりほぐれていく感じがした。
YUNOさんはヨガを始めた頃、お尻の筋肉をほぐしてもらって泣いたことがあったそうだ。「身体が先に理解して、それが後で感情につながった感じでした。涙って本当の自分の気持ちに気づいたときに出てくると思うんです。大丈夫じゃないけど『大丈夫』って言い続けていて、誰かに『大丈夫じゃないって言っていいよ』と言ってもらえたときに出るみたいに」。身体と心は、つながっているはず。けれど、日々の生活のなかで、身体と心がばらばらになっているように感じるときもある。「ヨガやストレッチは、身体と心をつなげるためにも大事なもの」だとYUNOさんは言う。
けれど、頭ではわかっていても、習慣化するのはなかなか大変。習慣にするにはどうしたらいいのだろう? という問いに対しては、こう答えてくれた。「自分との約束が強く結べるようになったときに、初めて習慣になると思うんです。まずは習慣化するまでの心地よさを、身体と心でしっかり感じることが大事。スクールでプロに心地よさを教えてもらったり仲間ができたりすることで、きっかけが生まれると思います。そこから、自分の生活のなかで続けていけるスタイルを探してみてください」。
YUNOさんは月曜の朝7時からのヨガクラスを担当していて、そこにはさまざまな年齢・性別・職業の人が集っているそう。
「今回紹介したストレッチはわたしにはとても合っているものだけれど、あなたはわたしではないから、『自分にはこれが合ってるんだ!』というものが見つかる瞬間がきっとあるはず。それが習慣に一番取り入れる必要があるものなので、見つける過程をぜひ楽しんでほしいです」。
「物事には必ずポジティブとネガティブがある」ことに気づいて。
YUNOさんはもともと美容師で、現在もヘアメイクアーティストとしてサロンワークを続けている。仕事を始めた頃に心と身体がばらばらになってしまった瞬間を体験し、それがヨガを始めるきっかけになったそうだ。
当時は睡眠時間を削って、ごはんは3食コンビニ弁当のことも。「やれる人だけが勝つ」というムードのなかで、つらさを無視して過ごしていたら、自分をコントロールできなくなってしまったそう。それから北海道の実家に帰って療養生活を始め、もともとヨガをしていたお母さんが知り合いだったことでたまたま出会ったのが「ヨーガ療法」。心療内科や精神科病院のほか、産婦人科病院などさまざまな場所でとりいれられている療法だそう。また、ヨーロッパの薬局で心の不調に関する商品が日本よりもっとオープンに並んでいるのを見たことをきっかけに、そこで知ったハーブやフラワーエッセンスなどの植物療法の知識も取り入れるようになる。偶然の出会いも大切にしながら、自分に合っている方法を模索して見つけていってるのが素敵だな、と感じた。
「ヨガを始めて、愛で満たされていると感じるようになりました。この先も、いいことも悪いことも両方あるはず。物事には陰と陽があって、ネガティブがなければポジティブに気づけないですよね。ちょっとしたことでもスペシャルであることに気づいたり、特別な何かがなくてもこの時間を共に過ごせた喜びに気づいたり。そうしたことに気づいていくステップも、ヨガの哲学から得られることだと思います」
YUNOさんはヨガを始めてから「ネガティブなことを味わう」という感覚がわかるようになったそうだ。「不安定なバランスを楽しんだことってありますか?」と話しながら、ヨガには「不安定でぐらぐらしててもいい」ということを身体で体感していくポーズもあると教えてもらった。
ヨガというと、ポーズをつくって身体を動かすというイメージがあったけれど、決してそれだけではないのだということを知った時間だった。「身体と心はつながっている」という言葉はよく聞くけれど、それが自分のなかにすっと溶け込んだ感じ。きっとレッスンを受けたり、長く続けていったら、見える世界がもっとあるのだろうなと思う。
家に帰って、習ったストレッチをしてみる。明日の朝は自分のために時間を使ってあげよう、ぎゅうぎゅうに予定を詰めるのではなく余白をつくりながらやっていこう。背中にある羽みたいな部分を意識して生活しよう。そんなことを思いながら眠りについた。