竹中万季の 「ゆるめる23時」#1 YUNO TAKEMURAさんに教わるヨガ
一日はあっという間に過ぎていく。起きて、仕事して、合間にごはんを食べて、息をつく間もなく眠りについて。気づいたらカレンダーがどんどん次の日にめくれていく。やるべきことをこなしたり、やりたいことに夢中になったりする時間も大切だけれど、ふと一息、ぴんとはりつめた自分をゆるめる時間をどこかに取り入れられたら。たとえば、眠る前の23時だけでもそんな時間がつくれるように、日々のなかで取り入れられる「ゆるめる」方法をme and youの竹中万季さんが探しにいく体験型のコラム連載です。
01. YUNO TAKEMURAさんにヨガを教わって「ゆるめる」
35歳、運動は苦手で、面倒くさがり。スポーツジムは年間契約したのに1回しか通えず解約し、朝のランニングはTODOリストにいれたまま一度もやれた試しがない。これまではそれでも日々をやれてきたけれど、漠然と「身体の調子、悪いな」と思う日が増えて、いよいよどうしようかと真剣に考えている。
コロナ禍で自宅で仕事をするようになってから、一日中同じ姿勢で仕事していることも増え、気づくと身体中がやんわりと痛み、その痛みが心の調子も乱してくるようになった。どうにかしなきゃ、とYouTubeを見ながらヨガやストレッチを見様見真似でやってみると、少し身体が和らぎ、気持ちも晴れやかになることを感じる。これまでの人生で、能動的に身体を動かそうとしたことってあったっけ……? できるだけ動かさずに済むように生活してきたけれど、調子がよくなるのであればもっと動かしてみたいし、身体と心の関係についても知ってみたいと思い立ち、プロのヨガインストラクターの方にお会いすることになった。
原宿にあるIGNITE YOGAで待ち合わせ。今日ヨガを教えていただくのは、ここでヨガインストラクターをしているYUNO TAKEMURAさん。身体の調子に関する悩みをもとにしながら、ヨガや「ゆるめる」に役立つ考え方を教えてもらった。
朝が気持ちよく始まらないときには? 肩甲骨をほぐし、自分に優しくしてあげる時間を持つ。
まずは、朝の悩みから。わたしは朝から疲れていることが多く、首から肩にかけてだるさを感じて、そのせいでベッドから出るのがいつも億劫になってしまう。同じ体勢でのデスクワークが多いことや、眠る直前までベッドでスマホを見てしまっていることも影響しているかもしれない。気持ちよく目覚めるためにはどうしたらいいんだろう?
「肩甲骨がすべてを握っています」とYUNOさん。肩甲骨。名前は知っているけれど、日々の生活のなかで意識したことがあっただろうか。背中にある羽みたいな部分であるこの場所を使って胸を開いたり閉じたりしているため、息をすることにも関係しているらしい。そんなに重要な場所だったのか!
今回は、朝やっても夜やってもいい、肩甲骨を中心とした簡単なストレッチを教えてもらった。まずは床に四つん這いになったら、つま先を立てて、お尻をかかとに乗せる。そのまま両手を前の方に持っていって、胸を床に近づけていくと、肩甲骨がぐーっと内側に入っていく(猫のポーズ)。指を立てるとさらに胸が開いていって、気づくと息を大きく吸い込めるようになっていた。
次に、頭を床につけて、自分の体重を使ったセルフヘッドスパへ(うさぎのポーズ)。首筋の裏を伸ばし、頭頂を左右や上下に揺らす。脳疲労が改善され、頭がすっきりするみたい。
最後に、足を伸ばして座り、両足の裏を手で抱えて持って、身体を伸ばす(長座前屈)。膝裏と肩甲骨がストレッチされてとても気持ちがいい。
身体が緊張していると心も緊張していくように感じていたけれど、ストレッチをしただけで身体がほぐれて、呼吸が深まり、それにつれて心も次第にゆるんでいくのを感じる。数分でこんなに変わるなんて。「肩甲骨がすべてを握っている」という言葉を胸に、これからは生活していきたい。
朝の悩みとして、もう一つ。身体が整わない悩みだけでなく、心が整わないという悩みもあった。ばたばたと準備して、焦りや不安な気持ちと共に一日が始まることも。YUNOさんに朝の過ごし方について聞いてみたら、「朝は丁寧に準備して、何があっても大丈夫な自分を思い出しておきます。準備することで自分に自信がつきますよね」とのこと。たとえば、鏡を見てしっかりと歯を磨いたり、ぱぱっと適当に終わらせるのではなく納得のいくメイクをしたり。特別なことをするというよりかは、「やばい! 急がなきゃ!」としないことが大事だそう。朝に時間がかけられないのであれば、まつげや眉毛をプロにお願いするなど、誰かに頼るのもいいですよね、と話してくれた。
「まわりを見渡すと、優しくしたい人が多いじゃないですか。自分に優しくしてあげて自信をつけれたら、まわりにも優しくできるんです」。本当にそうだなあと思う。朝、準備する時間がなくてバタバタと出かけるとき、「わたしなんか」と投げやりな気持ちが湧いてしまうことがよくある。初めは自分に対しての投げやりな気持ちだったのが、気づくとまわりの人とのコミュニケーションでもその投げやりさが滲んでいるのを感じて、自己嫌悪のループに陥ってしまう。朝は意識的に時間をつくり、自分を大切にしてあげて「大丈夫な自分」を確認することで、どんなことが起きたとしても戻ってくる場所が生まれそうだなと感じた。
不安になってしまうときは、不安な自分を無視しないことと、余白の時間が大事。
家で仕事をしているときや外にでかけているときに、不安で息が詰まるような感じがする瞬間がときたまある。そんなときに呼吸がしやすくなったり、リフレッシュできる方法はあるのだろうか……?
「すごくわかる。でも、それぞれの経験・バランス・状況・体調があるから、『これをやったらいい』とは言い切れなくて。だから、わたしの話をしようかな」。YUNOさんは突如として強い緊張感や終わりのない不安に襲われる時期があり、そのときは「タッピング」を行っていたそう。目を瞑ることができる環境に行き、自分をハグしながら一定のリズムで肩を軽く叩く。ドキドキしていた心臓を安定した鼓動のリズムに戻せていたそうだ。
でも、何より大切なのは「不安な状態になっていることを受け入れ、その自分を無視しない」ことだと感じているそう。「一つのきっかけというより、小さいきっかけの積み重ねを見ないようにしているときのほうがで不安に陥りやすいと思うんです」。たとえば、疲れていたり、睡眠不足だったり、栄養が取れていなかったり、わだかまりがあるけど見ないふりをしていたり。そうしたときに、つい「これくらいなら大丈夫」とやり過ごしてしまいがちだけれど、無視せずに自分の状態を見つめ、自分が欲しているもので満たしてあげるようにしていると話してくれた。
自分に目を向けるためには、余白をつくることが大事で、それがYUNOさんにとってはヨガマットの上にいる時間だそうだ。今まであったことやこの先のことを一回手放して、マットの上で呼吸して身体の筋肉をほぐすと、思考もほぐれ、ふとした瞬間に「自分が何を欲しているか」が降りてくる経験があったそう。その感覚を知っているからこそ、「マットの上に来れば、自分と向き合える」という信頼が生まれているとのことだった。
「楽しいときにこそ、立ち止まれる人はすごいと思うんです。自分が走っている環境から一度外れることで、本当にそれがやりたいんだっけ? あっちに行きたいんじゃなかったっけ? と気づける。わたしはマットの上だけど、自分なりに決めていいと思います」。
YUNOさんはマットの上にいる時間に加えて、「カップ1杯のコーヒーを飲む時間」も余白の時間になっていると話してくれた。コーヒーを飲み終わるまでは何をやっても何もしなくてもいい時間にして、ひたすらかわいいLINEスタンプを探したり、占いのページを読んだり、気ままに過ごしているそうだ。「1日は24時間しかないから、手放せる部分をどうつくるか、ずっと考え続けていて。あれもこれもやらなきゃ、とつい思ってしまうので、自分に時間を許してあげるようにしています。時計の針で進む時間ではなくて、自分のなかで進む時間をつくってあげるのが大事」。つい予定をぎゅうぎゅうに詰めてしまうけれど、そういうときこそ意識しなくてはいけないな。