ティートレンドはオーガニック? 再びお茶ブーム!ティーラヴァーたちが語ってくれた、お茶の楽しみ方とは?
今やコーヒーに負けぬ盛り上がりを見せるティー文化。3人のティーラヴァーが昨今のブームを独自の目線で分析。お茶愛とともに熱く語り尽くします!
幼少期からOR仕事から。ティーラヴァー誕生秘話。
藤森:本日は各界のティーラヴァーの皆さまにお集まりいただきました。我がお茶愛のこと、ここ数年のお茶のムーブメントについて大いに語っていただけたらと。まずはお2人がお茶にハマったきっかけは?
宮﨑:私は2010年に〈銀座三越〉に入社したのですが、その年にできた紅茶とスイーツのマリアージュをテーマにした〈デセール・テ〉という売り場に配属になったのがきっかけです。実はそれまでコーヒー派で、紅茶はティーバッグやペットボトルで飲む程度だったので、いきなり300種類もの紅茶を扱う担当になって最初はとまどいました。〈銀座三越〉のお客様はかなり紅茶に詳しい方ばかりだったので、お客様に鍛えられた感じです。
藤森:そうしたお客の期待に応えるには深い知識が必要ですものね。
宮﨑:ええ。入社1年目の休暇ではイギリスとフランスに一人旅をして、〈フォートナム&メイソン〉や〈ハロッズ〉、〈マリアージュ フレール〉など、自分が扱っているブランドの本店を巡りました。そうしてどんどん紅茶が楽しくなっていったんです。
北条:私は祖母が紅茶好きで、自宅から徒歩5分の祖父母宅に遊びに行くと、祖母の「アフタヌーンティーしましょ」のひと声でお茶の時間が始まるんです。当時7歳で、それが最初の紅茶体験。それから高校2年で初めてロンドンを旅行した時に、偶然立ち寄ったコヴェントガーデンの〈THE TEA HOUSE〉の膨大な紅茶の種類に大興奮して、フレーバードティーの面白さに開眼したり。大学2年の春休みにはダージリンのファーストフラッシュが摘みたいと、単身インドへ飛びました。
藤森:いきなりインドに!?すごい行動力!私はと言うと、もともと喫茶店が好きで、大学時代に喫茶店に通ってまずコーヒーを知り、その流れで紅茶にも興味を持って。ダージリンやアッサムくらいしか知らずに紅茶専門店に行くと、メニューにスリランカ産の茶葉が並んでいて、ウバやヌワラエリアやディンブラなど、もう訳もわからず注文したり(笑)。ライターになってからは台湾旅行を機に台湾茶にのめり込みまして、産地に茶葉を買いに行ったりしています。
藤森:そんな感じで朝からコーヒー、紅茶、台湾茶をハシゴするのでほぼ毎日カフェイン過多(笑)。就寝前はせめてノンカフェインをと、最近はルイボスティーを飲んでます。
新潮流をもたらしたセレクション系とは!?
宮﨑:私も夜はフルーツティーやハーブティー、あと夫が中国茶好きなのでプーアールや鉄観音を飲んだりしています。2人で「今日は何飲む?」なんて言いながら茶葉を選んで。
北条:わあ、いいですね。私は朝も夜もミルクティー派なので、スパイスティーなどミルクに合うブレンドを常に探しています。あとはデトックスのためにどくだみ茶を飲んだり。
藤森:さすが皆さん、ティーのヘビードランカーですね(笑)。さて、ここ数年、新たな紅茶ブームの勢いをひしひしと感じますが、この波は何がきっかけだったと思いますか?
宮﨑:そうですね。紅茶の消費量は実は2011年がピークで、それ以降はコーヒーと反比例して減少しているのですが、〈デセール・テ〉は2010年のオープン以来売り上げが右肩上がりだったんです。〈マリアージュ フレール〉や〈フォートナム&メイソン〉など大手ブランドは既に一定数の固定ファンがいる一方で、セレクト系のブランドが前年比120%の勢いで伸びていて。
藤森:すごいですね、それ。
宮﨑:客層も私が新人だった7年前は紅茶愛好家の40代〜50代の女性が中心でしたが、セレクションティーを購入する層は20代〜30代の女性たち。このセレクト系を充実させることで若い女性客が増えて、売り上げも伸びていったので、昨年3月の〈GINZA ティー〉へのリニューアルが実現したんです。
北条:私は、今のブームのきっかけは〝手軽なのにおいしくて本格的なティーバッグ〟の選択肢が増えたことだと思います。ちなみに私がオーストラリアの紅茶ブランド〈LOVE TEA〉の輸入会社を立ち上げたのも「オーガニック&天然原料のみで作られているのに、こんなに香り豊かで力強い味わいだなんて!」と驚いたから。
北条:ティーバッグで楽しめて、パッケージも素敵で。〝一歩先行く自然派〟はここにあったのか、と。
スパイスとハーブと。お茶は自由に進化する。
藤森:そしてファッションブランドの広報を退職して会社をスタートするなんて、運命的な展開ですよね。私もティー文化の盛り上がりの理由の一つは、ティーバッグの画期的な進化にあると思います。かつてティーバッグといえば細かく粉砕した品質の良くない茶葉のイメージが強かったですが、あの三角錐のテトラ型ティーバッグの登場で、フルリーフの茶葉を充填できるようになった。実はこの「三角錐ティーバッグ充填包装機」を開発したのが、静岡にある〈FUSO(不双産業)〉という会社。世界で90%のシェアを誇り、海外ではパッケージに〝FUSO TEA BAGS〟と書くブランドもあるほどステータスなんです!……って私、取材に伺ったことがあるのでつい饒舌になってしまいましたが(笑)。
北条:〈LOVE TEA〉の2人も静岡まで行って機械を買ったそうですよ(笑)。
北条:それから、オーガニックやノンカフェインもキーワードですよね。
宮﨑:ええ。〈銀座三越〉は場所柄ギフトが多いので、主に妊婦さんへのプレゼントなどでフルーツティーやデカフェなど、ノンカフェインの需要が増えています。最近はデカフェの技術が進化しているので、味もきちんとおいしいですよ。また、北参道の〈ティースタンド ナナ〉といった気軽でオシャレなティースタンドの動きも気になります。
北条:同感です。〈リプトン〉が手がけたフルーツティーのポップアップストアのような、インスタ映えするかわいいティーも増えてますよね。あと、個人的にも大好きで注目しているのがチャイ。スパイスやハーブを使った多彩なフレーバーが今後さらに充実すると思います。スパイスやハーブ、香りによる組み合わせの妙こそ、お茶の楽しみですから。
宮﨑:いま、従来のクラシック派と第一印象で選びたいカジュアル派と、お客様の好みが二極化しています。私としては気軽さも謳歌しつつ、原点に立ち返って、本当のお茶の良さも伝えていけたらと思います。
藤森:なるほど。現在のティーブームを牽引するのはオーガニックでオシャレな〝セレクト系〟と言われる各国の若手ブランドたち。安全でおいしいお茶がマグでガブガブ飲める新カルチャー、大歓迎です!
今回お話してくれたのは…
宮﨑優子/〈銀座三越〉アシスタントセールスマネージャー。昨年3月に拡大オープンしたお茶のセレクトショップ〈GINZAティー〉のリモデルを担当。
藤森陽子/ライター。食を中心に執筆。コーヒー、紅茶、台湾茶、お酒を愛し、お茶に関する海外取材もこなす。「お茶とお酒はすべての文化の源です!」
北条史子/〈ティーウェル〉代表。メンズブランドのPRを経て、今年3月に出会った〈LOVE TEA〉に感激し、輸入会社を設立。劇的に人生が展開中。
(Hanako1145号掲載/photo : Kenya Abe text : Yuko Tanaka illustration : Takeshi Tomoda)