カフェスペース有り。 パン激戦区【代々木上原】へ。パンラボ・池田さんもイチオシの美味しいパン屋さん3軒
名店ひしめくパンの激戦地、代々木上原。自家製酵母の草分け店から、パン屋の最新型まで、古いものと新しいものが徒歩数分の中に隣り合う。都心に隣接する住宅地というロケーションは、隠れ家のような名店を生み出すらしい。パン屋を巡ってこの界隈を歩けば、カフェやパティスリーや古本屋など、楽しい寄り道場所をたくさん見つけられる。パンを買ったら代々木公園へ。広々とした芝生に座ってパンを食べるのは楽しい。
1.〈Boulangerie et Café Main Mano〉
パリの〈オテル・ド・クリヨン〉でブーランジェ・シェフを務めた毛利将人さんが同ホテル時代のレシピで、さまざまなパンを作る。
〈マンマーノ〉でぜひ食べてほしいのは、なんといってもクリームパン。カスタード、というよりクレーム・パティシエールと呼びたい。バニラの芳醇さ、ミルク、卵。フランスのレシピそのままというこのクリームは、溶けるごとに、内側からぷんぷんとさまざまな香りが飛び出てくるのだ。
フランスでの経験は食事パンにもいかんなく発揮される。フランスの水の硬度に合わせ、バゲットはevianで仕込む。カリカリの皮にはいかにもフランス産小麦らしく、バターのようなコクと甘みを含む。後味はミネラリーににじみ、舌をじんじんとさせる。
2.〈ルヴァン 富ヶ谷店〉
東京のパンを語る上ではハズせない一軒。名店〈ルヴァン〉では併設のカフェでゆっくりと焼きたてパンとランチを楽しみたい。その歴史は日本、東京での発酵種(いわゆる天然酵母)パンの歩みとほぼイコール。1984年創業の老舗。
厨房の壁や天井に見えるにじみこそが、この店にすみついた酵母や乳酸菌たち。約30年ものあいだ種をかけ継ぐことで、継ぎ足し続けたウナギのタレのように熟成が進み、パンのまろみや深みを増す。〈ルヴァン〉のパンを食べることは、この店の歴史を食べることだ。
併設のカフェ〈ルシァレ〉。古いテーブルで食べる焼きたてのパンが、なによりおいしい。農家から直送された野菜をはさんだり、ゴマミソペーストを塗ったり。おいしいだけでなく、家に帰ってパンを食べるときのよいお手本になる。
3.〈365日〉
パンシーンの先端を走る杉窪章匡シェフが2013年12月にオープンさせた「食のセレクトショップ」。「食って血となり、肉となり体を作る。もっと楽しんでいいし、大切にしていい」。添加物や農薬の影響を受けない国産素材でパンを作り、野菜や乳製品まで扱う。
店には、ワインソムリエが常駐。パンとワインの最高の組み合わせを訊いてみてほしい。たとえば、ブランド豚をワインで煮込み、7種のスパイスでやさしく味付けしたカレーパンには赤を。タプナードと発酵クリーム、味噌を合わせたペーストに季節の葉野菜をのせたハタケには白を。オーガニックなど吟味された素材を見事に引き出したパンだから、極上の自然派ワインをいっしょにおいしく飲むことができる。
黒オリーブ×グリエール」210円(手前)、白イチジクやひよこ豆などがぎっしり入った「ランドネ」260円(奥)などワインに合うパンがそろう。〈シャトー・ド・ゴール〉のグラス700円に合わせて。
今回、教えてくれたのは…
池田浩明さん
パンライター、パンラボ主宰。最近は「レフェクトワール」西山逸成さんと屋台「空想サンドウィッチュリー」の活動に取り組む。ブログやTwitterでも、日々パンの記録を更新中。
(2017年8月1日ムックHanako Food掲載/photo:Youichiro Kikuchi, Akiko Mizuno text:Taeko Terao, Tomoko Matsumoto)