調理パンは20種以上! 東京・王子で130年以上愛され続けているパン屋〈明治堂〉
愛情も具材もたっぷりの調理パンが自慢の東京・王子にある〈明治堂〉。130余年、街の胃袋を支える店の魅力を紹介します。
明治時代から愛されてきた東京・王子のパンの名店〈明治堂〉
飛鳥山で知られる東京・北区の王子に、文明開化の頃より続く老舗のパン屋がある。それが1889(明治22)年創業の〈明治堂〉。
この店の朝はとても早く、開店時間はなんと6時半。明治の時代から40年ほど前まで、地元にある「国立印刷局」王子工場に、朝食用のパンを納品していたのがきっかけだ。
「当時はコンビニなんてなかった時代ですから、印刷局や近くの短大に調理パンを納めていたんです。どっちみち朝早くから作っているのだから、店も一緒に開けてしまおうと。今もほかのパン屋さんより調理パンの種類が多いのも、そんな昔からの理由なんですよ」と4代目店主の中山和弘さん。
最近では国産小麦の角食パンも予約必須の人気を誇っているが、やはり〈明治堂〉らしさを象徴するのは調理パンの多さ。サンドイッチと合わせればその数、実に20種類以上…! まん丸のバンズに様々な具材をぎっしりと詰めた調理パンがズラリと整列する眺めは壮観だ。
コロッケパンや焼きそばパンなど、ほんのり郷愁を誘うメニューたちは印刷局への配達時代から続くロングセラー。店主の中山さんは現在も具材の調理をこなし、名物の焼きそばパンは朝2時半から麺を炒める。
茹でたジャガイモを粗くマッシュし人参をゴロゴロ入れたポテトサラダをはじめ、フィレオフィッシュや海老カツに添えるタルタルソースも自家製。ピクルスとレモンの酸味を効かせたタルタルソースも店ではおなじみで、こうしたレシピのほとんどを店主の妻である美也さんが担当する。「サンドイッチや調理パンのバリエーションが増えたのは、私が嫁いだ40年ほど前からですね」と美也さん。
具材が引き立つよう考えられた、サクサクと歯切れのいいバンズとの一体感も絶妙で、食べれば〝頬張る喜び〞に満たされる。そして製造長・森永謙一さんのレシピによる、国産小麦のバゲットに厚切りハムを挟んだ「ジャンボンフロマージュ」など、懐かしさだけでなく新作が登場するのも店のいいところ。
「スタッフがアイデアを出し合って季節ごとに発表するので、新作の種類もどんどん増えます。みんなで作っているのが〈明治堂〉らしさかな」と4代目。
早朝からオープンし、これほどの種類を作る店の体力に感嘆する。だからこそ開店直後から客足が絶えないのだろう。明治の時代から変わらない、〝街のパン屋〞たる風景がここにある。
明治堂
住所:東京都北区王子1-14-8
TEL:03-3919-1917
営業時間:6:30~19:00(祝~18:00)、カフェ9:00~17:00LO
定休日:日休(カフェは日月休)
HP:http://www.meijido.tokyo/