今日は、あの街で一人呑み vol.02 【浅草で発見】女性にも初心者にも優しいひとり呑みスポット FOOD 2024.05.21

よそ行きの私”に少し“”が混ざったような、どっちつかずの自分で楽しむ時間は外呑みならでは。そんな外呑みの醍醐味、たまには “ひとり”で味わいませんか。誰にも気を遣わなくていい。自分と対話をする。いつもじゃない人と出会う。知らない世界に飛び込めるひとり呑み、女性ひとりでも気負いなく楽しめる場所を、お酒業界の広報歴14年の児島麻理子さんが“あの街”で探索します。今回の街は浅草

浅草でひとり呑み

「浅草キッド」で描かれたような芸能の街の面もあり、最近では「鬼滅の刃」の影響でモダンな着物で街歩きする若者や外国人の姿も見かける浅草。時代が移り変わっても、変わらず来る人を魅了するのは、さまざまな文化と人が行きかう懐の深さがあるからこそ。そんな懐の深さを示すように、新しい業態の店舗が続々と誕生しています。今回は浅草で新しいお酒の楽しみ方を発信する2軒をご案内します。

1軒目:ペルー出身の女性店主と楽しむピスコと焼酎〈どんまるてぃん〉

飲み屋が連なる賑やかな六区通りを曲がってすぐのところにある〈どんまるてぃん〉。ほほ笑む紳士のロゴに、焼酎&ピスコ!?入口から気になる点が満載です。謎解きに行くような感覚でまずはお店へ。焼酎とピスコとの関係とは、いかなるものなのか…。
ちなみに、店員さんと会話のきっかけになりそうな特徴があるお店を選ぶのもひとり呑みを楽しむコツです。

20240417_HANAKOWEB_7122 どんまるてぃん 看板

中に入ると明るく出迎えてくれるのは、ペルー出身の女性店主・大城アンドレアさん。ミラーボールが回り、サルサやメレンゲなど南米音楽が流れるここは、ペルーでよくあるホームパーティをイメージしたお店。気分は完全に、南米にあるアンちゃんのお部屋に来た感覚です。

店主の大城アンドレアさん。通称アンちゃん。
店主の大城アンドレアさん。通称アンちゃん。

お酒の場が好きで、みんなが楽しめる場所を作りたい、と思ったのがお店を開いたきっかけです。焼酎には同じ日本で造り手に会えて、そこからストーリーを追っていける面白さがありますよね。そこに自分の出身背景を重ね合わせるように、ペルーの蒸留酒・ピスコを出すことにしたんです」

結果、日本の方にはピスコやペルー料理を、ペルーの方には焼酎を知ってもらう二国の架け橋のような唯一無二のお店となりました。

縁日に来たかのような賑やかなメニュー。
縁日に来たかのような賑やかなメニュー。
遊び道具もたくさん。プラスサイズモデルでもあるアンちゃんの写真も。
遊び道具もたくさん。プラスサイズモデルでもあるアンちゃんの写真も。

お店にはピスコは約17種類、焼酎は約30種類ほどが常備されています。
実は共通点が多いペルーのピスコと焼酎。どちらも単式蒸留機での一回蒸留だったり、樽貯蔵をせずに、素材の味を楽しめるというものだったりします。ブドウの風味が凝縮したようなピスコには、こんな味わいのお酒があるのかとうっとりするようなものも。焼酎も芋や麦という原材料の中でも風味の違いが幅広くあるのが、いまの本格焼酎です。アンちゃんのガイドのもと、ピスコと焼酎をいったりきたりするのが楽しい!

ピスコは「芳香性」と「非芳香性」の2タイプ。「名探偵コナン」の登場人物の名前としてピスコを知って来る人もいるのでは?
ピスコは「芳香性」と「非芳香性」の2タイプ。「名探偵コナン」の登場人物の名前としてピスコを知って来る人もいるのでは?
ペルーの屋台料理「サルチパパ」880円、ピスコモヒート980円。モヒートのミントは知り合いの三浦の農家から直送してもらったもの。
ペルーの屋台料理「サルチパパ」880円、ピスコモヒート980円。モヒートのミントは知り合いの三浦の農家から直送してもらったもの。
宮崎焼酎を使った「どんまるサワー」680円。麦焼酎のソーダ割りに、ペルーの柑橘キーライムを1/2使用。麦焼酎の香ばしさをキーライムの爽やかな酸味が引き締めます。
宮崎焼酎を使った「どんまるサワー」680円。麦焼酎のソーダ割りに、ペルーの柑橘キーライムを1/2使用。麦焼酎の香ばしさをキーライムの爽やかな酸味が引き締めます。

社会人になってからずっと浅草に住んでいるアンドレアさんは、浅草の魅力をほっておいてもらえない心地よさと語ります。一人呑みは周りから話しかけられることも多いものですが、浅草ではとくにそれが顕著。一度足を踏み入れたら、ここもいいよと、店主やお客様に連鎖して誘われていくのが浅草呑みの面白さです

一人呑みでも楽しみやすいカウンター席。
一人呑みでも楽しみやすいカウンター席。
そして答え合わせ。看板のまるてぃんさんはアンドレアさんのお父さんでした。
そして答え合わせ。看板のまるてぃんさんはアンドレアさんのお父さんでした。

浅草はひとり呑みのひとも多いですし、女店主も多いので、じつは女性ひとりでも回りやすい街です。ぜひいろいろと巡ってみてほしいですね」(アンドレアさん)
浅草のお店との繋がりも深いアンドレアさんのお店を起点に、次のお店を紹介してもらうのも手です。アンドレアさんのお酒と笑顔でいい気分になったところで、次のお店へ。

〈どんまるてぃん〉

20240417_HANAKOWEB_6921 どんまるてぃん

場所:東京都台東区浅草1-41-5
営業時間:18:00〜24:00(火~土)、18:00〜22:00(日)
定休日:月曜日
TEL: 03-6802-7708
公式インスタグラム:@donmartin.as

2軒目:ワインショップも併設!有機野菜ビストロ〈Dochaku〉

観光客で賑わう中心部からすこし離れた閑静な西浅草。元自転車屋さんだったという一軒家を改装したのが〈Dochaku〉です。
Dochaku=土着、の名前の通り、地のものを取り扱い、食材は有機野菜、そしてナチュラルワインがセレクトされています。

20240417_HANAKOWEB_7136 Dochaku 外観
店頭では有機野菜の販売も。野菜の使い方をお店の方に尋ねて買ってく方も多いそう。
店頭では有機野菜の販売も。野菜の使い方をお店の方に尋ねて買ってく方も多いそう。

オーナーは浅草で4店舗を展開する佐藤シュンスケさん。建築を学んだ後、街づくりの仕事をしていたところ、縁あって知人と浅草にお店を展開することになり、住まいも浅草に。初のレストラン業態でのナチュラルワインの種類はイタリアを中心にハンガリー、チェコ、南アフリカなど100種類以上。はまり込むと早い佐藤さんの性格がみてとれます。

オーナーであり、ワインのセレクトも行う佐藤シュンスケさん(左)
オーナーであり、ワインのセレクトも行う佐藤シュンスケさん(左)

おすすめは、1階のカウンターで試したワインから好みを伝えて、3階のセラーでお持ち帰りの1本を選んでみること。店頭で販売している野菜などと合わせて、家での楽しみ方も教えてもらえます。ここに通うだけでワイン通にも料理通にもなれそう!
始めて名前を聞くような土着品種や、リンゴ果汁とワインを混ぜた“クラフトワイン”のようなワインも、指南してくれるお店の方がいるから選べるボトルです。

年輪が複数重なった〈Dochaku〉のロゴ。みなで共に育てていくことをイメージ。
年輪が複数重なった〈Dochaku〉のロゴ。みなで共に育てていくことをイメージ。

お店はそれぞれコンセプトが違う三階建て。ひとり呑みに優しい1階をはじめ、カウンターとテーブルがある2階、個室とワインセラーがある3階と、訪れる時のシーンに合わせて使い分けられそうなのも〈Dochaku〉の心地よさです。

シェフが作る料理などを眺めながらゆっくり過ごせる1階。
シェフが作る料理などを眺めながらゆっくり過ごせる1階。

「レストラン業態ですが、カウンターは欠かせないと思いました。自分たちの想いとして“酒場でありたい”というのがあるんです。ひとり呑みのお客様が酒場に行くのは、酒場に晴らしたい想いがあるから。つらい想いや悲しい想いもあるけど、嬉しいことに共感してほしい想いもあるはずで、そこに耳を傾けられるお店でありたいとおもっています」(佐藤さん)

はじめてでも入りやすい雰囲気があるのは、浅草のオープンな人柄の常連さんとスタッフの目配りがあるから。カウンターではスタッフとお客様の会話が飛び交い、常連と新規も混ざり合うよいコミュニティの場となっています。

カウンターとテーブル席があり、落ち着いた色調の2階席。
カウンターとテーブル席があり、落ち着いた色調の2階席。

お店で扱う野菜は千葉の有機農家から。名物のひとつ「産地直送野菜のせいろ蒸し」は、その時期に採れた有機野菜を10種類ほど詰めたもの。黒ニンジンやビーツなど個性あるものもあり、有機ならではの野菜の甘みや苦みが味わえます。また、1階限定メニューとして、鶏レバーのパテ、イカ墨のポテサラ、有機野菜のピクルスなどから選べる「ちょい盛りセット」も。ひとり呑みへの気遣いが有難い!

農家直送!有機野菜のせいろ蒸し990円、ちょい盛りSET(3品)1,100円。本日のナチュラルワインは600円。
農家直送!有機野菜のせいろ蒸し990円、ちょい盛りSET(3品)1,100円。本日のナチュラルワインは600円。
デザートには、キャロットカステラケーキ 600円も。
デザートには、キャロットカステラケーキ 600円も。

佐藤さんたちが浅草に来て7年。自らもこの土地固有でありたいという気持ちがあると語ります。懐深く受け止めてくれる常連さんとスタッフによって、新しく訪れる人もここにきっと浅草に“土着”の感覚を持てるはずです。

〈Dochaku〉

20240417_HANAKOWEB_7150 Dochaku 内観

場所:東京都台東区西浅草2-17-11
営業時間:17:00〜23:00(月・水・木・金)、15:00〜23:00(土)、15:00〜21:00(日)
定休日:火曜日
TEL: 03-6231-6010
公式インスタグラム:@dochaku21711

photo_Hiroyuki Takenouchi text_Mariko Kojima

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