繊細な和菓子から中国茶アフタヌーンティーまで。 京都旅行で訪れたいカフェ&茶房4軒。美しい庭を愛でながら京都らしいティータイムを。

FOOD 2020.01.20

京都観光といったら庭園巡りがハズせませんが、お茶を嗜みながらもっと身近に楽しんでみませんか?今回は、京都にある美しい庭併設のカフェ・茶房4軒をご紹介します。

1.〈冬夏〉

日本茶の栽培は京都で始まった。ゆえに茶の名産地は各地にあっても、京都の老舗茶舗が営む茶房はもちろん、新進のティールームでも日本茶に向き合う姿勢はとても真摯。

京都 冬夏
京都 冬夏
京都 冬夏

2015年に登場した〈冬夏〉もそんな一軒。扱うのはギャラリーと同じく、店主の奥村文絵さんが時間をかけ、作り手との信頼関係を築いた中で手に入れた茶葉。滋賀の朝宮で育てられる、最澄が唐から持ち帰った茶の木の流れを持つ朝宮茶の中でも、40年以上にわたり無農薬で育てられたものだけを選ぶ。玉露のない昔ながらの在来種や穀物のような甘みを持つあさつゆなどの単一の銘柄に加え、あさつゆ・やぶきた・さえみどりをブレンドした定番のsencha_blend_asamiyaまで。「茶葉の持つ力と、茶を楽しむことの喜びを知ってもらえたら」と奥村さん。お茶を淹れるのには毎朝汲みたての下御霊神社の井戸水を使い、茶器はギャラリーで扱う作家のものをセレクト。お湯を冷ましながら器を温め、茶葉を蒸らして香りを引き出しお湯を注ぐ。淹れたお茶は旨みが凝縮した最後の一滴まで絞りきる。茶葉の生命力を写し取ったようなお茶は、溌剌としつつも旨みを兼ね備えた味わい。

〈冬夏〉では二煎目までをスタッフが、三煎目からは自分で淹れる。寺町〈小松屋〉の玉わらびと、大薮萬司さんのおかきが付く。sencha_blend_asamiya 1,700円(税込)。
〈冬夏〉では二煎目までをスタッフが、三煎目からは自分で淹れる。寺町〈小松屋〉の玉わらびと、大薮萬司さんのおかきが付く。sencha_blend_asamiya 1,700円(税込)。

そこにあるのは一煎、二煎と目の前で丁寧に淹れられる、茶と向き合う静かなひととき。ただ喉の渇きを潤すのではない日本茶の味わいと、茶と共にある時間の大切さを伝えてくれるものになっている。

ティールームでの時間を楽しんだあとは、玄関先でスタッフがお見送りを。相手を思う気持ちが伝わり、心に余韻を残してくれる。
ティールームでの時間を楽しんだあとは、玄関先でスタッフがお見送りを。相手を思う気持ちが伝わり、心に余韻を残してくれる。

〈冬夏〉
機能性と美を兼ね備えた手仕事の日用品を扱うギャラリー〈日日〉に併設。茶葉は販売も。
■京都府京都市上京区信富町298 
■075-254-7533 
■10:00~18:00(17:30LO) 火休

(Hanako1176号掲載/photo : Yoshiko Watanabe, Norio Kidera(P.28) text : Mako Yamato)

2.〈閑是〉

築100年という総2階の京町家の、1階部分。格子戸を開けると玄関があり、靴を脱いで入るスタイルも京都らしい。いちばん奥には小さな坪庭もある。
築100年という総2階の京町家の、1階部分。格子戸を開けると玄関があり、靴を脱いで入るスタイルも京都らしい。いちばん奥には小さな坪庭もある。

懐かしさと、新しさと。そんなこの街ならではの魅力は、古都の昼下がりを彩るアフタヌーンティーにもある。地図を片手に、辿り着いた瞬間からそう感じさせてくれるのが、今年6月にオープンした〈閑是〉。そこは、夷川通と室町通の角にある、看板もない築100年の京町家。北白川で中国茶サロンを営む、中国国家茶芸師の資格を持つ高田小絵子こさんが、「ここでお茶をいただいたら、きっとおいしい」と、物件にひと目惚れして始めた中国茶藝館だ。

ターコイズブルーの食器が人気の東一仁さんは地元・京都で作陶する作家。食器はほぼ彼の作品でそろえた。器が並ぶ箱は〈越前漆芸やまよ〉のもの。
ターコイズブルーの食器が人気の東一仁さんは地元・京都で作陶する作家。食器はほぼ彼の作品でそろえた。器が並ぶ箱は〈越前漆芸やまよ〉のもの。

引き戸を開けると待っているのは、オリエンタルアフタヌーンティーという新しい形。

京都 閑是
グラスに注がれた冷茶にはじまり、野菜の前菜、薬膳スープ、点心類、お粥と続き、最後にティースタンドのお菓子と中国茶。杏仁豆腐やお茶のフィナンシェなど、菓子も自家製。
グラスに注がれた冷茶にはじまり、野菜の前菜、薬膳スープ、点心類、お粥と続き、最後にティースタンドのお菓子と中国茶。杏仁豆腐やお茶のフィナンシェなど、菓子も自家製。

評判の点心から自家製の菓子まで、これまで高田さんが茶会で作ってきたものがアフタヌーンティーのスタイルで、次々と。

お菓子と楽しむ中国茶は、高田さんが直接買い付けている9種の茶葉から、好みのものを。実際に現地に足を運んで手に入れたものもある選りすぐり。
お菓子と楽しむ中国茶は、高田さんが直接買い付けている9種の茶葉から、好みのものを。実際に現地に足を運んで手に入れたものもある選りすぐり。

菓子と楽しむ中国茶も、自身が世界中から買い付けた〝極上〞と胸を張るリストからチョイスできるのだから、連日、予約でいっぱいなわけだ。

食器は、大好きだという京都の東一仁さんの作品が主体。これが落ち着いた景色を作り、中国をテーマにしながらも、町家にしっくりとなじむ。奥には、ドウダンツツジや紅葉を植栽した坪庭。色づくころのお茶の時間が待ち遠しいのも、また京都。

〈閑是〉
完全予約制6,000円。予約はHP(airrsv.net/kanze/calendar)より。
■京都府京都市中京区鏡屋町51夷川通室町北西角 
■11:00~18:00 火水休ほか不定休あり 
■12席/禁煙

(Hanako1176号掲載/photo : Kunihiro Fukumori text : Yuko Saito)

3.〈丸久小山園 西洞院店 茶房 元庵〉

京都 丸久小山園 西洞院店 茶房 元庵

元禄年間の創業以来、茶の栽培から販売までを手がける老舗。

煎茶「翠の院」と和菓子 1,100円(税込)
煎茶「翠の院」と和菓子 1,100円(税込)

茶房で供する煎茶は契約農家で育てられた茶葉を、爽やかで喉越しよく、苦味を抑えて丸みを感じさせる味わいに仕立てた限定ブレンドの翠の院。伊勢神宮へ奉納した証の折敷と、京焼をはじめとする器、〈辻和金網〉の茶こしなど、道具のセレクトからも老舗の想いが伝わってくるようだ。

〈丸久小山園 西洞院店 茶房 元庵〉
■京都府京都市中京区西洞院通御池下ル西側 
■075-223-0909 
■9:30~18:00、茶房10:30~17:00LO 水休(祝営業)
■13席ほか茶室あり/禁煙

(Hanako1176号掲載/photo : Yoshiko Watanabe, Norio Kidera text : Mako Yamato)

4.〈tubara cafe〉

京都 tubara cafe

〈鶴屋?信〉が本店の隣にオープンした〈tubara cafe〉は、伝統の銘菓をアレンジしてコーヒーや紅茶にも合う味わいに。

奥から、かつて本店で販売されていた「巣ごもり」、もちふわ焼皮でマスカルポーネ餡(柚子、抹茶、ラムレーズン)を包んだ「つばらつばら」各250円。
奥から、かつて本店で販売されていた「巣ごもり」、もちふわ焼皮でマスカルポーネ餡(柚子、抹茶、ラムレーズン)を包んだ「つばらつばら」各250円。

オーナーの稲田繭貴さんは語る。「本店のラインナップから消えた銘菓『巣ごもり』。鶴が巣にこもり、大切に子育てした様子から、かつては末永い幸せを願う、優しい気持ちが込められた大切な祝い菓子だった。カフェで復活させて、若い世代にも、和菓子に想いを込めるという伝統を残していけたら」。それぞれの思いは浸透している。

〈tubara cafe〉
1803(享和3)年創業の〈鶴屋?信〉本店隣にオープン。
■京都府京都市上京区西船橋町340-5 
■075-411-0118 
■10:30~17:30 水休

(Hanako1176号掲載/photo : Yoshiki Okamoto, Norio Kidera text : Michiko Watanabe, Ai Kiyabu)

Videos

Pick Up