カルチャー発ソーシャル行 Meet #14/
『あいの里』+『100カメ~余命と 向き合う人~』
映画、小説、音楽、ドキュメンタリー…あらゆるカルチャーにはその時代の空気や変化が反映されています。そんな「社会の写し鏡」ともいえる、秀逸な作品を編集部Sが紹介。
いなたくて、バタくさいけど、人間らしい。『あいのり』チームの逆襲。
日本を代表する「恋愛リアリティショー」といえば、『あいのり』と『テラスハウス』だが、両者にはガラケーとスマホくらいの大きな差がある。過酷な旅の中で素の自分を見せ合ってこそ真実の愛が生まれる、とした前者は剥き出しのアナログで、平成ではあるが昭和的だったし、モデルルームのような洒落のめした空間で映画やPVのようにボーイ・ミーツ・ガールの物語が展開される後者はクリアなデジタルで、平成ではあ
るが令和的だった。『テラスハウス』も終了した今、一世代前の『あいのり』のいなたさ、バタくささは過去のものになっていた…、のだが、令和5年、形を変えてまさかの復活。Netflixシリーズ『あいの里』である。スタッフの多くは『あいのり』出身。男女の参加者は30代〜60代。古民家での共同生活の中で人生最後の愛を探す。これがまあ面白い。中年を迎えた彼らの言葉には自らの経験で獲得した真実味があり、けれど恋となると中学生に戻ったようなぎこちなさや真っすぐさが現れる。
さまざまな経歴を持つ35歳以上の大人の男女が自給自足の共同生活の中で人生最後の愛を探す。スタジオMCは田村淳とベッキー。この二人のかけあいコメントも絶妙。Netflixにて公開中。公式サイト
カメラの前では人間性がすべて出てしまう、というが、NHK『100カメ~余命と向き合う人~』はとかく考えさせられた。ガンで余命を宣告された5人の生活に密着。希望と絶望と雄弁と沈黙。スタジオMCのオードリーの二の「あえて何かを言おうとせず噛み締める」姿勢も真摯で沁みた。
動物園、駄菓子メーカー、大学お笑いなど気になる場所に100台の固定カメラを設置、その生態を観察するシリーズ。過去のエピソードはNHKオンデマンドで放送中。
[今月の担当]編集部S/アジア系アメリカ人男女のささいないざこざがエスカレートする『BEEF』、リアルとユーモアが交じり合う大相撲が舞台の『サンクチュアリ -聖域-』など今月はNetflix三昧。